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ハルと言えば一、カズと言えば春

03

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指を絡めるようにして身体を寄せるとふふっと微笑む穏やかな秋の日。少し早いけどお弁当を広げ食べ始めた。

「はるちゃんには言ってなかったけど、今日母さんからもデートのお誘いがあった」
「えっ?そうなの?行きたかったな」
「やっぱりな…そう言うと思ったんだ」
「やっ、あの!おばさんと出掛けるってことはかずくんも一緒ってことだから、だから、えっと、かずくんとこうしてここに来るのも嬉しくて、あの…二人きりの方がホントは良くって…すごく楽しみにしてて、」

俺が機嫌を損ねたと思ったのか必死になってるはるちゃんは可愛い。

「わかってるよ。でも…ちょっと母さんに嫉妬する…かな。母さんの誘いは一も二もなくって感じだし」
「僕だって!」
「ん?」
「かずくんがお母さんの事、緑さんって呼ぶの……ちょっと、…嫌」

俯いて俺の膝にそっと手を添える。

「そっか…でも今さらおばさんとか呼んだら怒られそうだしな」
「うっ、…うん、そうだね」
「やめよっか?母親に嫉妬するの」
「うん。恥ずかし…」
「俺もだから」

これ、完全にバカップルだ……。

でも、二人なら良いか……。

お弁当を食べ終わり、まったりする。

今日のはるちゃんの服装は遠目で見ればボーイッシュな女の子。いや、近くで見てもものすごく可愛い。俺からしたら服なんか関係なく可愛いのだけれど…。

「この服、菜月さんの?」
「えっ、あ、うん。変かな?なっちゃんとは胸以外そんなに体型変わらないから……」
「もしかしてさ…こうしてても不自然じゃないように?」

はるちゃんの顔に陰を作り頬にキスをする。

「う、うん。やっぱり男同士だとくっ付いてたら変だから」
「嬉しいよ。でも、……女の子になって欲しいとか思ってないからね。小さい時みたいにスカート履いて欲しいとか全然思わないけど、今日のはるちゃんはとっても可愛い」
「かずくん…」
「可愛いって言われるの嫌?」
「かずくんになら嫌じゃない。他の誰かなら絶対に嫌だよ?でも、かずくんに可愛いって言われると…凄く嬉しい」

やっぱりバカップルだな……。

はるちゃんはこの公園に来たのは初めてだ。どこに行っても、何を見ても喜んでくれる。今日は別の目的があるから予定にないアスレチックも興味津々で、次はジーンズで来て、絶対に挑戦すると意気込んでいた。
そして、花壇に咲いている花を見ても綺麗だねと笑顔を見せる。

ここの遊園地は小さい子ども向けなので高校生が遊んで楽しい場所じゃない。でも、はるちゃんに誘われるまま観覧車に乗り込んだ。有名なテーマパークにあるような大きな物じゃないけれど、周りの遊具に比べたらそれなりに大きい。一周十分ちょっとの空中散歩。

はるちゃんは俺の手を取り、離さないまま箱の中に二人きり。

「かずくん…」
「ここ、座って」
「うん」

腕を引いて膝に乗せた。並んでいる人が少なかったからか、係りの人は箱に一つおきに誘導した。前後の箱には人はいない。もしかしたら俺たちがデートだと思い気を使ってくれたのか?まさか男同士だとは思ってないだろうな。

勝手に勘違いしてくれて俺としては嬉しいけど、はるちゃんはどうなんだろう?

いや、それを狙ってのこの服か?

はるちゃんが嫌じゃなきゃ、俺はどんな服でも、制服でも体操服でも構わないけど。

ギュッと抱きしめ首に顔を埋めた。はぁ、はるちゃんの匂い、落ち着く。
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