5 / 9
05
しおりを挟む
「伊月?」
「……、行こうか。一応、一年生も捕まえないとね」
「大丈夫か?」
「な、何が?ほら、教室から行く?」
「いや、体育館裏に行こうか」
「そんなとこに、一年生居るかな?」
「どこに居るかは、わからないだろ?」
「まっ、そうだね」
隣に並び歩き出す。田丸はまだ僕の事を睨んでいるのだろうか?気になるが、もし、睨まれていたら泣いてしまいそうなので前だけを見た。それでも、僕の事を見て欲しいと思う、矛盾した気持ちを持て余す。
「あのさ…」
「ん?」
「ちょっと、聞きたいことがあって…」
「何?昨日の数学?文世は熱心だね」
「違うよ。伊月はさ…朗と、なんかあった?」
「えっ…、朗…と?」
久しぶりに口にした田丸の名前。僕の名前を呼ばせない代わりに、呼ぶのをやめた愛しい名前。そうか、池住を遠ざけたのは、僕に聞きたいことがあったのか?
「どうして、そんなこと聞くの?」
「いや、朗がさ…」
「…うん」
「朗が、伊月の事、聞いてきたから。俺、去年はクラスが違っただろ?だから、二人の事、わからないけどさ…」
「何て、言ってたの?」
「俺と、その…付き合ってるのかって」
「えっ……」
「あっ、伊月は迷惑だよな。俺なんかと勘違いされて」
森山は何故か焦ってまくし立てる。
「いや、ほら…さっきも、朗が伊月の事、見てただろ?だから…朗は伊月の事が好きなのかなって…」
「それはないよ」
「でも、朗はずっと伊月の事を見てた。伊月も教室から…朗が通る度に、チラチラ見てたから…」
やっぱり僕の事、睨んでたんだ…。そして、僕は森山に見られてた?
「こちらこそ、ごめんね。文世は僕なんかと噂されたら嫌だよね。田丸は何考えてるんだろうね…」
「別に嫌じゃなよ。付き合ってないって言ったけど、朗は信じてない感じだった」
「えっ?」
「ほら、この頃勉強見てもらってるだろ?それ、知ってるみたいだった。あまり意地になって否定すると逆効果かなって思ったけど、ちゃんと違うって言っといたから。もしかしたら、告白されるかもな」
「そんなことない!きっと、そんな理由じゃないよ」
「どうした?やっぱ、朗と何かあったんだろ?喧嘩した?中学の時は仲良かったもんな」
「う、うん。そんな感じ…かな」
「そっか…俺でよかったら、仲直りの仲介してやるからさ」
「うん、ありがと。……でも、無理かもね。!…あっ、別にそんなに深刻な感じじゃなくて!」
「しぃー、伊月」
突然人差し指を唇の前で立て、音量を落とし、視線は僕の後ろに向かっている。
「何?」
森山に倣い小さな声で聞くと、僕の後ろを指差す。
「あれ、一年だ。二人いる。ほら、青いシールが見える」
まだ捕まっていない一年生の胸には青いシールが貼ってある。僕たち二、三年生は赤いシールを十枚持っている。僕が有効にこのシールを使えることはないと思っていたけど、どうやら一枚くらいは使えそうだ。
結果から言うと、体育館裏で休んでいた二人を捕まえただけだった。
そこに居た一年生の二人は校舎で追いかけられ、散々走って巻いた後だったらしく大人しくシールの交換をした。そんな事情がなければ、僕では捕まえることはできなかっただろう。きっと、森山がいなければそんな状態の彼らでも僕一人では太刀打ちできなかったに違いない。ただ、写真を撮る時に、どちらと一緒に撮るかで一年生の二人が揉めた。二人ともが何故か僕とがいいと言うのだ。わけがわからない。新手の嫌がらせだろうか?「それじゃ、四人で、どう?」と提案すると何とか納得してくれた。でも、四人で同時に写るとなると、誰かに撮ってもらわないとならない。
「おい!何をしてる!」
大きな声でああでもない、こうでもないと言い合っていたからだろう。見回りの生徒会役員が声をかけてきた。
「えっと、写真を撮るの、どうしようかって。…あの、撮ってくれますか?」
「なんだよ!驚かさないでくれよ」
三年生の生徒会役員の後ろから、田丸がこちらを見ていた。
「よお!朗は手伝いか?」
森山の問いかけに、僕をチラリと見てから答えた。
「あ、ああ。碧空に頼まれたんだ」
去年までのクラスメイトの大沢碧空は生徒会役員で、今回、この歓迎会での見回りをクラスの半数に頼んでいたみたいだ。
「文世は頼まれなかったのか?」
「俺?俺はB組だからな」
「そんなのは関係ないだろ?」
もう一度僕を見て、森山に視線を戻す。やはり僕とこの優しい森山が付き合っていると疑っているのだろう。いっそ、フリでもしてしまおうか?
「……、行こうか。一応、一年生も捕まえないとね」
「大丈夫か?」
「な、何が?ほら、教室から行く?」
「いや、体育館裏に行こうか」
「そんなとこに、一年生居るかな?」
「どこに居るかは、わからないだろ?」
「まっ、そうだね」
隣に並び歩き出す。田丸はまだ僕の事を睨んでいるのだろうか?気になるが、もし、睨まれていたら泣いてしまいそうなので前だけを見た。それでも、僕の事を見て欲しいと思う、矛盾した気持ちを持て余す。
「あのさ…」
「ん?」
「ちょっと、聞きたいことがあって…」
「何?昨日の数学?文世は熱心だね」
「違うよ。伊月はさ…朗と、なんかあった?」
「えっ…、朗…と?」
久しぶりに口にした田丸の名前。僕の名前を呼ばせない代わりに、呼ぶのをやめた愛しい名前。そうか、池住を遠ざけたのは、僕に聞きたいことがあったのか?
「どうして、そんなこと聞くの?」
「いや、朗がさ…」
「…うん」
「朗が、伊月の事、聞いてきたから。俺、去年はクラスが違っただろ?だから、二人の事、わからないけどさ…」
「何て、言ってたの?」
「俺と、その…付き合ってるのかって」
「えっ……」
「あっ、伊月は迷惑だよな。俺なんかと勘違いされて」
森山は何故か焦ってまくし立てる。
「いや、ほら…さっきも、朗が伊月の事、見てただろ?だから…朗は伊月の事が好きなのかなって…」
「それはないよ」
「でも、朗はずっと伊月の事を見てた。伊月も教室から…朗が通る度に、チラチラ見てたから…」
やっぱり僕の事、睨んでたんだ…。そして、僕は森山に見られてた?
「こちらこそ、ごめんね。文世は僕なんかと噂されたら嫌だよね。田丸は何考えてるんだろうね…」
「別に嫌じゃなよ。付き合ってないって言ったけど、朗は信じてない感じだった」
「えっ?」
「ほら、この頃勉強見てもらってるだろ?それ、知ってるみたいだった。あまり意地になって否定すると逆効果かなって思ったけど、ちゃんと違うって言っといたから。もしかしたら、告白されるかもな」
「そんなことない!きっと、そんな理由じゃないよ」
「どうした?やっぱ、朗と何かあったんだろ?喧嘩した?中学の時は仲良かったもんな」
「う、うん。そんな感じ…かな」
「そっか…俺でよかったら、仲直りの仲介してやるからさ」
「うん、ありがと。……でも、無理かもね。!…あっ、別にそんなに深刻な感じじゃなくて!」
「しぃー、伊月」
突然人差し指を唇の前で立て、音量を落とし、視線は僕の後ろに向かっている。
「何?」
森山に倣い小さな声で聞くと、僕の後ろを指差す。
「あれ、一年だ。二人いる。ほら、青いシールが見える」
まだ捕まっていない一年生の胸には青いシールが貼ってある。僕たち二、三年生は赤いシールを十枚持っている。僕が有効にこのシールを使えることはないと思っていたけど、どうやら一枚くらいは使えそうだ。
結果から言うと、体育館裏で休んでいた二人を捕まえただけだった。
そこに居た一年生の二人は校舎で追いかけられ、散々走って巻いた後だったらしく大人しくシールの交換をした。そんな事情がなければ、僕では捕まえることはできなかっただろう。きっと、森山がいなければそんな状態の彼らでも僕一人では太刀打ちできなかったに違いない。ただ、写真を撮る時に、どちらと一緒に撮るかで一年生の二人が揉めた。二人ともが何故か僕とがいいと言うのだ。わけがわからない。新手の嫌がらせだろうか?「それじゃ、四人で、どう?」と提案すると何とか納得してくれた。でも、四人で同時に写るとなると、誰かに撮ってもらわないとならない。
「おい!何をしてる!」
大きな声でああでもない、こうでもないと言い合っていたからだろう。見回りの生徒会役員が声をかけてきた。
「えっと、写真を撮るの、どうしようかって。…あの、撮ってくれますか?」
「なんだよ!驚かさないでくれよ」
三年生の生徒会役員の後ろから、田丸がこちらを見ていた。
「よお!朗は手伝いか?」
森山の問いかけに、僕をチラリと見てから答えた。
「あ、ああ。碧空に頼まれたんだ」
去年までのクラスメイトの大沢碧空は生徒会役員で、今回、この歓迎会での見回りをクラスの半数に頼んでいたみたいだ。
「文世は頼まれなかったのか?」
「俺?俺はB組だからな」
「そんなのは関係ないだろ?」
もう一度僕を見て、森山に視線を戻す。やはり僕とこの優しい森山が付き合っていると疑っているのだろう。いっそ、フリでもしてしまおうか?
33
あなたにおすすめの小説
入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?
monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。
そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。
主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。
※今回の表紙はAI生成です
※小説家になろうにも公開してます
魔法学校の城に囚われている想い人♡を救い出して結婚したい天才有能美形魔術師(強火執着)の話
ぱふぇ
BL
名門魔法学校を首席で卒業し、若くして国家機関のエースに上り詰めた天才魔術師パドリグ・ウインズロー(26歳)。顔よし、頭脳よし、キャリアよし! さぞかしおモテになるんでしょう? ええ、モテますとも。でも問題がある。十年越しの想い人に、いまだに振り向いてもらえないのだ。そんな片思い相手は学生時代の恩師・ハウベオル先生(48歳屈強男性)。無愛想で不器用、そしてある事情から、魔法学校の城から一歩も出られない身の上。先生を外の世界に連れ出すまで、全力求婚は止まらない!
26歳魔術師(元生徒)×48歳魔術師(元教師)
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
彼の想いはちょっと重い
なかあたま
BL
幼少期、心矢に「結婚してほしい」と告げられた優希は「お前が高校生になっても好きな人がいなかったら、考えてやらなくもない」と返事をした。
数年後、高校生になった心矢は優希へ結婚してほしいと申し出る。しかし、約束をすっかり忘れていた優希は二ヶ月だけ猶予をくれ、と告げる。
健全BL
年下×年上
表紙はhttps://www.pixiv.net/artworks/140379292様からお借りしました。
政略結婚制度に怒っています
河野彰
BL
「政略結婚法」が施行されて十余年。政治家や俳優、高額納税者などの著名人は三十歳までに結婚をしなければならないという法律だ。
主人公末永遥(すえながはるか)はごく一般家庭に育った地味なサラリーマンだったが、ある日一通の通知が政府から届く。それは、高額納税者である久堂清継(くどうきよつぐ)との婚姻が成立したという決定通知だった。
男同士で結婚!? と驚く遥。間違いかと思い、すぐに異議申し立てをしに市役所へ行ったが、そこで事実だと告げられてしまう。トボトボと帰路につく遥の前に清継が現れて……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる