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黎明
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式神が二体が戯れながら走ってゆく。説明はなかったが、何を聞いても理解できるかわからないので、考えないことにする。
もう一体、式神が現れた。
「あっ」
(サファイアくんだ。この子も綺麗な蒼い蝶を連れてるんだ…)
「どうした?」
「えっ?何でもない」
「そう?じゃあ、朱の側に」
「わかった」
(朱はルビーくん。ダメだ。どうしてもルビーくんって呼んでしまいそうになる。初対面の僕に、馴れ馴れしくされるのはきっと嫌なはず。我慢…我慢)
やはり、肩に乗る蝶が気になるのだ。この式神の蝶は見たこともない鮮やかな朱色。何か術を使うのだろうと素直に従う。朱の隣に立ち、リュックの肩紐をギュと握った。ぶわりと空間が歪み、次の瞬間どこかの屋敷の門の側に立っていた。どうやら内側で、既に屋敷に入っている状態だ。
「あの…ここは?」
「俺の屋敷だよ」
「あっ、じゃあご両親とか、挨拶しないと…やっ、時間が遅いよね。えっと…」
どうしたら良いかわからず、親彬を仰ぎ見る。
「ここは俺と使用人しかいない」
「そうなの?へぇ、凄い。こんな大きなお屋敷を親が持ってるなんて」
「取り敢えず、今日は疲れただろ?部屋に案内するから。ゆっくり休んで。明日も、ゆっくりしたら良い。動き出すのは明後日から。良いね?」
「うん。ありがと…」
正直、疲れてはいない。でも、それは身体のこと。心はだいぶダメージを受けている。当たり前だが見るもの全てが尊の暮らしていた現代とは違う。この時代の人が現代にタイムトリップするのに比べたら、予備知識があるだけ衝撃が少ないかもしれないけれど、やはり怖い。何もかもが違う。ここが貴族のお屋敷だからか、一つ一つが重厚なのだ。門もしっかりしている。
部屋に案内されて、ドラマのセットかとキョロキョロしてしまう。寝具を囲うように屏風や几帳があった。
(おお、これは凄い!螺鈿細工が綺麗!明日、明るくなるのが楽しみだ)
しかし、寒い。
森の中のあの場所にいる間は寒さを感じなかったのに、ここに着いたら急にだ。火桶に縋り付く。笑われてしまったが、親彬だって寒いはず。
「じゃあ、明日の朝起こしにくるよ。一人で勝手に動くなよ?」
「わかった。ありがとう、親」
「ああ」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
(寒いよー!ダウン着てきて良かった。羽毛布団も持って来れば良かった)
尊はリュックの中からまずリンを出した。
「リン、平安時代に来たよ」
「そうだね。大丈夫?」
「うん…、まあ、平気」
そして、枕を出して、寝具に置く。既に置いてあった硬い枕を横にやり、尊はパジャマにに着替えた。
もう一体、式神が現れた。
「あっ」
(サファイアくんだ。この子も綺麗な蒼い蝶を連れてるんだ…)
「どうした?」
「えっ?何でもない」
「そう?じゃあ、朱の側に」
「わかった」
(朱はルビーくん。ダメだ。どうしてもルビーくんって呼んでしまいそうになる。初対面の僕に、馴れ馴れしくされるのはきっと嫌なはず。我慢…我慢)
やはり、肩に乗る蝶が気になるのだ。この式神の蝶は見たこともない鮮やかな朱色。何か術を使うのだろうと素直に従う。朱の隣に立ち、リュックの肩紐をギュと握った。ぶわりと空間が歪み、次の瞬間どこかの屋敷の門の側に立っていた。どうやら内側で、既に屋敷に入っている状態だ。
「あの…ここは?」
「俺の屋敷だよ」
「あっ、じゃあご両親とか、挨拶しないと…やっ、時間が遅いよね。えっと…」
どうしたら良いかわからず、親彬を仰ぎ見る。
「ここは俺と使用人しかいない」
「そうなの?へぇ、凄い。こんな大きなお屋敷を親が持ってるなんて」
「取り敢えず、今日は疲れただろ?部屋に案内するから。ゆっくり休んで。明日も、ゆっくりしたら良い。動き出すのは明後日から。良いね?」
「うん。ありがと…」
正直、疲れてはいない。でも、それは身体のこと。心はだいぶダメージを受けている。当たり前だが見るもの全てが尊の暮らしていた現代とは違う。この時代の人が現代にタイムトリップするのに比べたら、予備知識があるだけ衝撃が少ないかもしれないけれど、やはり怖い。何もかもが違う。ここが貴族のお屋敷だからか、一つ一つが重厚なのだ。門もしっかりしている。
部屋に案内されて、ドラマのセットかとキョロキョロしてしまう。寝具を囲うように屏風や几帳があった。
(おお、これは凄い!螺鈿細工が綺麗!明日、明るくなるのが楽しみだ)
しかし、寒い。
森の中のあの場所にいる間は寒さを感じなかったのに、ここに着いたら急にだ。火桶に縋り付く。笑われてしまったが、親彬だって寒いはず。
「じゃあ、明日の朝起こしにくるよ。一人で勝手に動くなよ?」
「わかった。ありがとう、親」
「ああ」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
(寒いよー!ダウン着てきて良かった。羽毛布団も持って来れば良かった)
尊はリュックの中からまずリンを出した。
「リン、平安時代に来たよ」
「そうだね。大丈夫?」
「うん…、まあ、平気」
そして、枕を出して、寝具に置く。既に置いてあった硬い枕を横にやり、尊はパジャマにに着替えた。
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