撫子の華が咲く

茉莉花 香乃

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結婚相手が決まりました

04

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「申し訳ありません。父上があまりに『綺麗だ』と騒ぐから、殿上の間で、四の君の話をしてしまったんだ。みんな興味を持って『綺麗な姫に違いない、これは文を贈らなければ』と騒いでいたよ。将来有望な方たちばかりだったから、妹姫には良縁かと思ったんだ。まあ、何人かは遊び人で有名な人もいたから、『妹姫を泣かせないでくれよ』と釘を刺したのだけれどね」

それで、あのように文が贈られてきたのか…。

仕方ない。

「管弦の宴でも催しましょうか」

家令が良い提案をしてくれた。

「そうだね。気分も晴れるかもしれないし、ちょうど桜の時期だ」

その時に女御入内の噂でも流せば求婚してくるものもいなくなるだろう。

大急ぎで宴の準備を始めた。

撫子には自分から伝えたかったので件の女房に伺う旨を伝えさせて、姫の元を訪れた。

顔色は優れないようだが、きっちりと身支度を整えてわたしを待っていてくれて嬉しく思う。

悩ましげに見える風情が実の娘でなければわたしが…といけない感情がふつふつと湧き上がってきて、戸惑う。

これほどまでに心乱されるのは初めてかもしれない。
北の方の時は勿論、あの人も、はたまた別の…こんなにわたしの触手が動くとは…どういうことなのか?
自分の趣味が変わったのか?

まあ、実の娘では致し方ない。思考が変な方へ行くのをなんとか戻して撫子の前へ座る。

「今日は突然すまなかったね。起き上がって大丈夫なのかい?」
「いえ、床に臥してばかりで申し訳なく思います」
「知らない屋敷で気が休まらないのだろう。そんなことは気にしなくて良いんだよ。
それで、気分転換になればいいんだけど、三条邸で管弦の宴を催すことになったので、姫にも楽しんでもらえたらと思ってね」
「まあ、管弦の宴ですか。それは華やかなことでしょうね」

まだ気分が優れないにも関わらず、わたしの話に興味を持ったのかどなたが笛を吹くのかなど楽しみにされている様子に、
『宴を開こうと思いたって良かった。姫も元気を取り戻してくれるだろう』
と嬉しく思った。


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