撫子の華が咲く

茉莉花 香乃

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結婚相手が決まりました

05

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『管弦の宴』…わたしには憧れの響きだ。

幼い頃より笛に琴、琵琶といろんな楽器を嗜んだ。
舞も披露されるそうで興味深い。

役所に付いて行ったわたしに我先にと教えてくれた誰かが演奏するのかと「誰が…」と右大臣さまに聞いてしまった。

でも、勿論こんな姿で挨拶も出来ないし、顔も覚えられていないかとヒヤヒヤである。

わたしが皆の前に出ることはないけれど、ふと見られやしないかと宴の話を聞いてからまた臥せってしまった。
今までこんなに床に臥すことなどなかったのに「姫さまの身代わりになって血の道(女性の病氣)までもらったのですか?」と姉上から嫌味を云われた。

右大臣さまが管弦の宴の話をして帰る間際に「そう云えば…」と話を続けた。

「兼房が目通りをと云っていたんだけど、気分が優れないと断っておこうか?」

断りたいけれど挨拶くらいはしておいた方が良いかと了承した。

北の方さまを始め、三人の姫さまには挨拶はしていたけれど、兼房さまには会っていなかった。

北の方さまは最初、幾分ぶっきらぼうな態度であったけれど、挨拶を済ませ顔を上げると「まあ、可愛らしい」と途端に笑顔になられて「わたくしを母と思って、困ったことがあれば何なりとおしゃってね」と何故か歓迎ムードに変わった。

姫さまたちも同じで「お父さまは気が利かないところがあるから、わたくしたちがきちんとしてあげるからね」とやけに優しくもてなされて、時には「一緒に清水へ行かない?」や「貝合わせをしましょう」と声を掛けて頂いた。


兼房さまは御簾越しに見れば凛々しく、唐織物の桜萌黄さくらもえぎ狩衣かりぎぬに紅の衣に同色の単のこざっぱりした姿は今まで会った事がある男の人の中では一番かっこいいのではないだろうか?

幼い頃に訪れた役所にいた公達よりもはるかに男前である。
そう云えば、右大臣さまもお年の割にスラリとして、年を重ねた色気のようなものもある。
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