撫子の華が咲く

茉莉花 香乃

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初めて恋を知りました

07

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いつの時点でわたしが男だとお気付きになられたかは判らないけれど、今までの穏やかな関係は、嘘をついていたことで壊してしまった。

好きな人に抱かれるのは幸せなことだ。

触れる肌。
掛かる吐息。

しかし、そこに愛はないのだろう。

偽りの姿を愛せるはずもない。

帝は侮蔑の眼差しで睨み、怒りと哀しみが混ざったような声で「なぜわたしを騙したのだ」と仰った。

帝を見ることはできない。

風の音がいつもより大きく聞こえて、ここが後宮である事を忘れてしまいそうだ。
帝と二人、都の外れのひっそりとした屋敷の中にいるような…。



わたしの秘部に何か冷たいものを纏った帝の指が触れた。

「…ひっ…」

そのまま中に入って来た指に、声が漏れないように手で口を押さえる。

長い指がぐるりと回るように動き、初めて体験する違和感に身体が強張る。

「…あっ…んっ…ぁ、やっ…んっ…」

どのくらいそうされていたのか分からないけれど、その間も侮蔑や嫌悪の表情をそこに見るのが怖くて、帝を見ることができなかった。

漸く指が抜かれたと思ったら、帝は自身をわたしの秘部にあてがった。

「あぁぁぁっ…ひゃ…あぁぁっ」

躊躇いなく入ってくるものに、痛さで涙がとめどなく流れる。

「…なでし…こ…」

名を呼ばれたような気がしたけれど、これはわたしの願望が聞かせた幻聴だろうか?

痛い。
痛い。
心が痛い。

でも、嗚咽を堪えて唇を強く噛む。

わたしに泣く権利なんて無いのだから。手は帝にしがみつきたいけれどそんなことはできるはずもないので、敷物を握って堪えた。

わたしの好きな人。

帝を騙した罰だ。

優しさや労りの言葉はない。

この気持ちを悟られてはいけない。ますます嫌悪の表情が深くなるところなんか見たくない。



わたしの中を何度も穿ち痛さがいっそう強く襲って来る。

「…んっ…いっ…た、くっ…やっ…」

帝が動くたび痛みが増す。
歯を食いしばって痛みに耐える。

明日はもうお側にはいられないだろう。

せめて一度でも、
…手を握って欲しかった。
…優しく抱きしめて欲しかった。

最後にもう一度だけ見ておきたいと、涙で潤んだ目でお顔を見ると帝も苦しそうで、やはり見ていられなくて目を閉じた。

閉じる前に一瞬、視線が合った。

少し哀しげなお顔だったけれど、侮蔑や嫌悪の表情がなくて安堵して……、
帝の手がわたしの頬をつぅっとなぞったような気がした…。





…気が付くと、帝はいらっしゃらなかった。

昨夜の嵐は通り過ぎたのか穏やかな朝だった。

桔梗が心配顏で「大丈夫?」と聞いてくれた。
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