撫子の華が咲く

茉莉花 香乃

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恋は苦しいものですか?

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ーーーわたしが幼かった頃、下男や台所の仕事をする下女、女房などは皆優しかった。

姫さまや姉上に相手にしてもらえず、暇を持て余していると嫌な顔をせず相手をしてくれたし、屋敷を好き勝手に動き回っても怒られなかった。

夜、暑くてなかなか寝付けない時に部屋を抜け出した。

いつも優しくしてくれる女房の局へ行くと、部屋からは、
「んっ…あっ…はっん」
「…良いのか?好きだろこうされるの?」

またしても行き合ってしまった。
夜なので仕方ない。旦那さんが来ているのだろう。

女房の部屋は諦めた。

下男の所へ行くと、こちらもだった。二人分の妖しい声が聞こえる。

しかし、わたしは動けなかった。

声の主は、一人はこの部屋の下男でもう一人はわたしとそう年も変わらない牛飼いの童だった。

「ほら、こんなにして」
「あっ…いゃ…」
「自分で入れてみろよ」
「うん……あっ…きつい…はっん…あぁぁっ…はぁっ…入ったっ…」
「ほぉら、動くぞ」
「あっ、あっ、だめぇ…」
「だめじゃないだろ…良いんだろ?」
「あっ…んっ…良いよ…もっと」
「自分で動いてみろよ」
「…んっ…こぅ?……あぁっ…んっ…はぁ…」

ちらりと覗くと、華奢な牛飼いの童は下男の上で向き合う形で座っていて、杭が打ち込まれるところを見てしまった。

愛おしそうに交わる二人の視線。

漏れる吐息の合間に合わさる唇。

次第にぐちゃぐちゃと淫猥な音が聞こえてきて、目を反らすことができなかった。

この日の情事は後宮に上がって暫くしてから夢に見るようになった。

またしても、わたしは傍観者ではない。

わたしは帝の上で喘いでいるのだ…。

夢の中の帝は優しく抱きしめ口付けをくれる。

触れる手はさわさわと撫でるように。

触れる唇はもどかしくも淀みなくわたしの肌を動く。

優しく抱かれたい…他に何も望まない…ただ、愛されたい…。

そう望んではいけないのか?
…騙していたのはわたしだ。

嫌悪の眼差しで睨みつけられても不満など云えない。
ましてや、愛されることなどない。

帝が男のわたしを愛することなど決してないのだから…。


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