撫子の華が咲く

茉莉花 香乃

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恋の駆け引きなんて知りません

01

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☆★☆  ★☆★  ☆★☆


帝は何を考えておられるのか?

何故藤壺の女御さまだけ清涼殿に召されないのだ。

最初は身体の弱い女御には無理だと思っておいでになるとばかり思っていた。その時はどちらの女御さまも清涼殿には渡っておられなかったので、わたしも強くは云えなかった。

せっかく飛香舎ひぎょうしゃ(藤壺)を賜ったのに…。

ーーー飛香舎は清涼殿に近い。

昼間にはよく飛香舎にお出ましになられて楽しく過ごされている。
わたしもご一緒したことがあるけれど、たくさんの女房が来ていて東宮たちとそれは華やかなひと時だった。

後宮に来てからわたしには御簾や几帳の陰から姿も見せてくれなかったのに、今まで見たこともない笑顔に驚いた。

六条大納言などは昼間に自分の娘の麗景殿れいけいでんの女御の所に寄り付きもしない帝に、なんとか麗景殿に足を運んで貰おうと躍起になっている。
若い者も競って飛香舎へ来ているようだ。これもまた六条大納言には腹立たしいらしい。

内大臣も式部卿の宮も同様だ。
(内大臣の娘は弘徽殿こきでんの女御で、式部卿の宮の娘は常寧殿じょうねいでんの 女御だ)

後宮で今一番華やかなのは飛香舎だろう。

しかし、しかしである。

昼は良い。
華やかなのに越したことはない。

問題は夜だ。

「昼間にいくら足繁く通っても、あんなに女房が大勢いてはすることもできないね。御子は生まれてはこないよ。まさか、見られてするのが好きなのか?わたしも見物に行きたいものだ。
ほほっ」

六条大納言は嫌味を云ってくる。

六条大納言は野心家だ。
北の方は降嫁された内親王だが、北の方にするのに裏で手を回したと噂が流れた。

麗景殿の女御入内の折も、六条の北の方が従兄弟である先帝に頼み込んで、女御としての入内が決まった。

『わたくしの娘を更衣などではなく女御として入内させて下さい』
と泣き付かれた、と先帝が仰っていた。

ーーー更衣は女御に次ぐ地位である。

入内の支度も贅を凝らしたもので、女房の衣装に至るまでとことんこだわっていると殿上人の間で、話題に上った。
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