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恋の駆け引きなんて知りません
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☆★☆ ★☆★ ☆★☆
このところ、基良の機嫌が悪い…様に思う。それはわたしの前でだけのようだ。
今日も飛香舎(藤壺)に一緒に行ったのだけれど、基良は一緒に行くのを嫌がっているようだった。
明日香はいつも通り笑顔を振りまいている。飛香舎の女房ともすっかり打ち解けて楽しそうだ。
基良はいつもの様に撫子に請われるままわたしと合奏したりするのに『ふっ』とよこす視線が睨んでいる…様な気がして、落ち着かない。
撫子の様子も気になる。
柔らかく微笑む姿が何故か哀しげで、心からの笑顔が減ったと思う。
飛香舎の菊がもう直ぐ盛りだから、一緒に見るのを楽しみにしているけれど、撫子は元気を取り戻してくれるだろうか?
藤が咲く時も一緒に見たいと思っている。さぞ美しいだろう。
飛香舎を後にして清涼殿へ戻っていると後ろから「東宮さま!」と女房の慌てたような声が聞こえた。振り向くと基良と讃岐がこちらに向かっている。上臈女房の讃岐や藤式部が慌てているのをあまり見た事もなかったので驚いた。
基良は、「とうさま、撫子にもっと優しくしてあげてよね!」とそれだけ云うと明日香を迎えに行くのか飛香舎へ戻って行った。讃岐が深々と頭を下げてから基良の後を追いかけた。
やはり、基良の機嫌が悪いのは気のせいではなかった。撫子の前で喧嘩の様なやり取りをしたくなかったのだろう。わざわざ追いかけてまで、どうしても云っておきたかったのか?
何があったのか藤式部を呼び聞くと「恐れながら…」と話始めるもなかなか続けて言葉が出てこない。
「良いよ。何でも云ってくれて構わない」
「それでは…主上の藤壺の女御さまに対する仕打ちは見るに耐えません」
「うっ」
言い返せない…。
いや…わたしは基良のことを聞いていたのだけど…。
「東宮さまは二の宮さまがお昼寝の時などに女御さまに会いにいらっしってお二人で過ごされる時がございます。あの様な笑顔を見せて下さるようになったのは女御さまのお陰なのです」
「それはわたしも感謝しているよ」
「ある日、いつもの様に飛香舎をお訪ねになられた時に女御さまとお付きの女房との話を聞かれたのです」
「何と云っていたんだ」
「わたくしは直接聞いたのではないのですが、『里下がりを許す…』とか云われていたと…」
「えっ…」
「やはり主上はご存知ではなかったのですね…」
「知らない…」
このところ、基良の機嫌が悪い…様に思う。それはわたしの前でだけのようだ。
今日も飛香舎(藤壺)に一緒に行ったのだけれど、基良は一緒に行くのを嫌がっているようだった。
明日香はいつも通り笑顔を振りまいている。飛香舎の女房ともすっかり打ち解けて楽しそうだ。
基良はいつもの様に撫子に請われるままわたしと合奏したりするのに『ふっ』とよこす視線が睨んでいる…様な気がして、落ち着かない。
撫子の様子も気になる。
柔らかく微笑む姿が何故か哀しげで、心からの笑顔が減ったと思う。
飛香舎の菊がもう直ぐ盛りだから、一緒に見るのを楽しみにしているけれど、撫子は元気を取り戻してくれるだろうか?
藤が咲く時も一緒に見たいと思っている。さぞ美しいだろう。
飛香舎を後にして清涼殿へ戻っていると後ろから「東宮さま!」と女房の慌てたような声が聞こえた。振り向くと基良と讃岐がこちらに向かっている。上臈女房の讃岐や藤式部が慌てているのをあまり見た事もなかったので驚いた。
基良は、「とうさま、撫子にもっと優しくしてあげてよね!」とそれだけ云うと明日香を迎えに行くのか飛香舎へ戻って行った。讃岐が深々と頭を下げてから基良の後を追いかけた。
やはり、基良の機嫌が悪いのは気のせいではなかった。撫子の前で喧嘩の様なやり取りをしたくなかったのだろう。わざわざ追いかけてまで、どうしても云っておきたかったのか?
何があったのか藤式部を呼び聞くと「恐れながら…」と話始めるもなかなか続けて言葉が出てこない。
「良いよ。何でも云ってくれて構わない」
「それでは…主上の藤壺の女御さまに対する仕打ちは見るに耐えません」
「うっ」
言い返せない…。
いや…わたしは基良のことを聞いていたのだけど…。
「東宮さまは二の宮さまがお昼寝の時などに女御さまに会いにいらっしってお二人で過ごされる時がございます。あの様な笑顔を見せて下さるようになったのは女御さまのお陰なのです」
「それはわたしも感謝しているよ」
「ある日、いつもの様に飛香舎をお訪ねになられた時に女御さまとお付きの女房との話を聞かれたのです」
「何と云っていたんだ」
「わたくしは直接聞いたのではないのですが、『里下がりを許す…』とか云われていたと…」
「えっ…」
「やはり主上はご存知ではなかったのですね…」
「知らない…」
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