撫子の華が咲く

茉莉花 香乃

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華綻ぶは撫子

08

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☆★☆  ★☆★  ☆★☆


「兼道、今度はこれだよ」

東宮が父上を相手に漢詩を覚えている。『後見する』と云ってくれたけれど、どこまでしてくれるか心配だった。
けれど、「まずは女御さまの近くで一緒に過ごすところから」と、東宮が|飛香舎(藤壺)にいらっしゃる時に来てくれるようになった。

帝と心が通っても、父上が皇子を待ち望んでいることも、東宮の危ういお立場も変わらない。なんとか出来ないかと帝と相談して父上に本当のことを明かして協力して貰うのが一番の良案だと思ったけれど、…こんなにうまくいくとは思ってなかった。

まあ、弱みも握っていたんだけどね。

小さな頃よりあまり好い印象はなかったけれどやっと父上を認めることが出来る。
父上は楽器の演奏より和歌や漢詩が好きで、二人で和歌を詠みあったり話の端々に漢詩を云ったり、仲良さ気な様子は本当の孫とお爺ちゃんだ。

「東宮さま、今度は蹴鞠など如何ですか?」
「うん」
「それでは、蹴鞠の得意なものに集まる様に云っておきます」
「兼道はしないの?」
「わたくしですか?わたくしなどもう脚が動きません。お側で見せて頂きますよ」
「良かった」
「如何されました?」
「うん、兼道は来ないのかと思ったから」
「勿体無いお言葉です」

帝が「わたしより仲良いね」と少し寂しそうだ。
わたしが男だと知らない者たちは、急に東宮と親しくなった右大臣を不思議そうに見ていた。

「藤壺の女御さまに皇子が生まれたらどうする気なのか?」

もっぱら噂の種である。

勿論だが、そんな噂は知らん顔で日に日に仲良くなっていく東宮と右大臣を貴族たちは驚きと焦りを持って見ていた。



わたしが内裏を抜け出したいと相談した時、桔梗と日向は保憲さまに文を出したのかと思っていたけれど、最初に相談したのは衛門だったそうだ。

二人にはわたしの気持ちは伝えてあったし、噂は色々あったものの帝の気持ちもわたしに向いていると感じていた二人は衛門の助言を受けて、わたしをどうにか止めたかった様だ。

小百合の名を出したのも、帝と離れて小百合と一緒にいることを、わたしがどちらと一緒に居たいのかを考えて欲しかったと桔梗が云っていた。

確かにあの時、小百合のことは桔梗が口にしなければ思い出しもしなかったし、帝と離れて小百合とと思うと胸が痛かったのは確かだ。

「あっ…主上。そこは…っんん…」

言葉通り帝が夜に飛香舎に来て下さるようになった。

日向や桔梗が嫌な顔をするのではと心配したけれど意外に好意的で、帝が好きだと打ち明けてから変わらず応援してくれている。

「撫子…力抜いて」
「あっ…だめです…」
「そんなこと云って……愛してるよ」
「わたしも、あ、愛してます。主上だ、け…んっ…」

わたしの首筋に、耳に、帝の舌が動き、秘部には深く帝の指がうごめく。

こうなってはどこを触られても感じてしまうわたしの身体を帝の舌と手が滑る。
帝の指はわたしの中で感じる場所を覚えておられて的確にぐりぐりと擦られた。

「…んっ…はっ……ああっ…」

高い声が漏れて恥ずかしい。

「可愛い。もっと声、聞かせて」

手で口を塞ごうとすると、その手を掴まれて帝の口に当てられた。
帝の舌が指を舐めていく。
指さえ感じて更に声が出てしまう。

「愛してるよ」
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