撫子の華が咲く

茉莉花 香乃

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番外編ー四 誰の疑問?

02

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わたしは兼道さまの手が良いのだけれど。

「にゃあ~」『兼道さま』
「可愛いね。どこにいたの?」
「兄さま!ぼくに抱っこさせて!」
「ほら、優しく…離すよ」
「うん!」
「にゃ!、にゃあ~」『兼道さま!助けて』
「あっ、おとなしくして…」
「東宮さま、お嫌ではないですか?こちらの殿舎で飼ってもよろしいですか?」
「もちろん。構わないよ」
「まあ、ありがとうございます。早速、かしわでの司に何か食べるものをお願いしましょう」

食べるもの!

「にゃぁにゃ!」『食べたい!』
「お腹が空いているみたいだよ。言葉がわかるのかな?賢い猫だね」

ようやくお腹も満たされて、優しく撫でてくれる幼い手の中でうとうととする。

「なでしこにも見せてあげたい」

撫子とは姫さまのことだろうか?
兼道さまが東宮さまとお親しいのなら、撫子姫は入内されたのかな?御方さまが生きておられたならばさぞ喜ばれたことだろう。

でも、眠い…。

わたしは生まれ落ちてそんなに日が経っていないのだろう。身体は弱々しく体力がないようだ。
このままこの幼い腕の中で休ませてもらおう。

危害が加えられることのない穏やかな雰囲気に、軒下にいた時のピリピリした緊張感は薄まり気がつけば寝てしまっていたようだ。

「寝たよ。可愛いね。しぃ~」






気がつくと先ほどの幼い手ではないけれど、どこか懐かしい腕の中にいた。

「あっ、起きたよ。ね?可愛いでしょ?なでしこは猫、抱っこしたことあった?」

撫子?
では姫さまに抱かれているのか?

眠い目を前足で擦り、顔を上げると…!

「にゃにゃ?」『惟忠?』

ええぇっ!

なぜ男の惟忠が十二単衣を着ているのか?
懐かしい感じとは息子に抱かれているからか?

「ええ、お屋敷に迷い込んだ猫がいたので何度か。ねえ桔梗」
「はい。でもこの猫は小さくて可愛いですね。屋敷にいた猫はもう少し大きかったです」

桔梗もいるの?

今の会話の感じから桔梗は惟忠に仕えているのか?
惟忠は『女御』さまなのだろうか?
…そうなのだろう。宮さまに『撫子』と呼ばれていた。
そうでなければ、惟忠が姉のことを呼び捨てにするなど考えられない。

「女御さま、わたくしにも抱かせて下さいませ」

別の手が伸びてくる。

次々に差し出される手に抱かれているけれど、どの手にも乱暴にされることはなかった。
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