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番外編ー六 それぞれの未来 《桔梗編》
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ほとんど聞かれているのだ。わたしたちはまた同じことをしてしまった。
あの時、帝にも聞かれたし…ついつい声が大きくなる。
「あなた、今日はどなたに桔梗に用意された部屋がここだと聞かれましたか?」
少し言い淀んだ為佐はわたしが確信を持って問いただしているのを感じたのかつっと顔を上げ口を開いた。
「兼房殿です」
「やはり…。桔梗、兄上をここへ」
「いらっしゃるでしょうか?」
「多分…今夜はこちらにいらっしゃるんじゃないかしら」
ちらりと為佐を見れば、かすかに目を泳がせた。
まだまだ修行が足りない。
音も少なく退出するさまはいつもの桔梗で、先ほどの姿が嘘のようだ。
桔梗の退出した後、また二人きりになってしまった。
「桔梗とはどこでお知り合いになられたの?」
「知り合いと云うか…お見かけしたことがございまして。一度女御さまが梨壺にお渡りになられた時にちらりと…わたくしは姉上の手前飛香舎にはなかなか伺うことができないもので…兼房殿に名を伺って…今回こちらにも」
「そうですか…見初められたと云うことでしょうか?」
「はい…」
「内大臣家の子息ならば然るべき姫を北の方にと考えておられるのでしょう?桔梗はほんの遊びと云うこと?」
何も云えずまた床とよりを戻そうと云うのか俯きがちな為佐は益々頭を垂れてゆく。
「云い方を変えましょう。桔梗は今日だけの慰み者なのですか?」
直接的過ぎたか?とも思ったけれど、言葉を濁しても桔梗の為にはならない。
「そのような、決してそのようなつもりは無いです」
がばりと顔を上げ真剣な面持ちに嘘は無さそうだ。
部屋の隅にある灯台だけでは細かな表情は伺えないけれど、漂う雰囲気は雄弁にわたしにこの者の心情を伝える。
わたしに用意された部屋ならばもう少し表情が見えたかもしれないけれど…いや、そもそもこちらに来なければ会いもしなかったのだから。
為佐は桔梗と対面してどうするつもりだったのだろうか?
いや、どうするも何も…初めからそれが目的か?
二人して黙りこんでしまいなんとなく気不味い雰囲気になりそうになった時、『決して違う』と断言して気持ちが上向きになったのか先ほどのわたしと桔梗の会話を思い出したようだ。
女御と二人きりで会っていると云うことはわたしが思う以上に緊張するのか、何度か口を開け言い淀み、やっとその口から漏れるように小さな声が聞こえた。
「女御さまと桔梗さんはどう云ったご関係なのでしょう?乳姉妹とお聞きしておりますが、どうももっと近しい様に思われるのですが?」
わたしがまさか、男だとは思っていない様子だ。わたしは撫子姫ではないが、父上の真の子だから身分としては申し分ないはず。
ありのままの話で男の部分を女に変えれば許されないことながら、まだ騙すことはできるように思う。
しかし、この者が桔梗の元に通うようになり近しい関係になった時、桔梗は嘘を吐き続けなければいかなくなる。
あの時、帝にも聞かれたし…ついつい声が大きくなる。
「あなた、今日はどなたに桔梗に用意された部屋がここだと聞かれましたか?」
少し言い淀んだ為佐はわたしが確信を持って問いただしているのを感じたのかつっと顔を上げ口を開いた。
「兼房殿です」
「やはり…。桔梗、兄上をここへ」
「いらっしゃるでしょうか?」
「多分…今夜はこちらにいらっしゃるんじゃないかしら」
ちらりと為佐を見れば、かすかに目を泳がせた。
まだまだ修行が足りない。
音も少なく退出するさまはいつもの桔梗で、先ほどの姿が嘘のようだ。
桔梗の退出した後、また二人きりになってしまった。
「桔梗とはどこでお知り合いになられたの?」
「知り合いと云うか…お見かけしたことがございまして。一度女御さまが梨壺にお渡りになられた時にちらりと…わたくしは姉上の手前飛香舎にはなかなか伺うことができないもので…兼房殿に名を伺って…今回こちらにも」
「そうですか…見初められたと云うことでしょうか?」
「はい…」
「内大臣家の子息ならば然るべき姫を北の方にと考えておられるのでしょう?桔梗はほんの遊びと云うこと?」
何も云えずまた床とよりを戻そうと云うのか俯きがちな為佐は益々頭を垂れてゆく。
「云い方を変えましょう。桔梗は今日だけの慰み者なのですか?」
直接的過ぎたか?とも思ったけれど、言葉を濁しても桔梗の為にはならない。
「そのような、決してそのようなつもりは無いです」
がばりと顔を上げ真剣な面持ちに嘘は無さそうだ。
部屋の隅にある灯台だけでは細かな表情は伺えないけれど、漂う雰囲気は雄弁にわたしにこの者の心情を伝える。
わたしに用意された部屋ならばもう少し表情が見えたかもしれないけれど…いや、そもそもこちらに来なければ会いもしなかったのだから。
為佐は桔梗と対面してどうするつもりだったのだろうか?
いや、どうするも何も…初めからそれが目的か?
二人して黙りこんでしまいなんとなく気不味い雰囲気になりそうになった時、『決して違う』と断言して気持ちが上向きになったのか先ほどのわたしと桔梗の会話を思い出したようだ。
女御と二人きりで会っていると云うことはわたしが思う以上に緊張するのか、何度か口を開け言い淀み、やっとその口から漏れるように小さな声が聞こえた。
「女御さまと桔梗さんはどう云ったご関係なのでしょう?乳姉妹とお聞きしておりますが、どうももっと近しい様に思われるのですが?」
わたしがまさか、男だとは思っていない様子だ。わたしは撫子姫ではないが、父上の真の子だから身分としては申し分ないはず。
ありのままの話で男の部分を女に変えれば許されないことながら、まだ騙すことはできるように思う。
しかし、この者が桔梗の元に通うようになり近しい関係になった時、桔梗は嘘を吐き続けなければいかなくなる。
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