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第四章
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俺の初恋は随分遅かった。拓真だ。きっとそれまでも、恋心は芽生えてたとは思う。でも、明らかに周りとは違ったから、それまでは気づかないふりをしてた。
好きになるのは、良いなと思うのは、全部男だった。
俺から誘ったことも、しつこく言い寄られたこともある。
郁己は…そのどちらでもない。お互いが惹かれた。
そうだよな?
俺だけが思ってることなのか?
郁己は…、まだ確かめることは怖くてできない。求められてる…そう思ってていいよな?自分の存在意義を確かなものにしたがっているのだ…俺は。
必要と思ってくれてるだろ?
なあ、郁己。
二人でソファーに座る。もっと大きなソファーが良かったけど、部屋が狭くなるからこれにした。郁己と二人なら小さなソファーでも構わない。郁己は今、俺の膝の上だ。
ふと、左の手首が気になった。
「郁己、これはどうしたんだ?火傷じゃないのか?さっき聞いた時は傷だって…」
「えっ、あっ…」
途端に暗い顔をする。抱きしめキスをした。
「聞きたい。言って?」
何かあるんだ。俺には言いたくない何か。でも、聞きたい。郁己の全部を受け止めたい。
「火傷は母さんがなくなる前に、熱湯が掛かったんだ。遊んでてさ…どうしてかなんて覚えてないけど…。母さん、直ぐに水を掛けて冷やすなんて知らなくって…焦って俺の手首をギュゥって掴んだんだ。そしたら癒着して…」
お母さんがなくなる前なら十年以上前の話だ。絆創膏の周りから見える痕がそうだろう。今も隠さないとならないくらいに酷い痕なのか?
「俊一さん…嫌いにならないで」
「大丈夫だ。郁己、言ってごらん?」
「……父さんが死んで、ばあさんが母さんの悪口を言い始めた頃…ばあさんは俺にも…」
「うん」
抱きしめて背中を撫でた。
「俺…、リスト…」
「もういい…わかった。もう言わなくていいから」
苦しかっただろう。
辛かっただろう。
「見せて?」
「えっ…」
「大丈夫だ」
恐る恐る絆創膏を剥がす。
お風呂に入り、ふやけて剥がれかけていたのかペロンと取れた。
火傷の痕と線のような傷が幾つか見えた。最近の傷ではなくもう目立たなくなってる。
「今は?」
「今は、してないよ。
…中学の時、周りはみんな父さんが死んだこと知ってた。勿論母さんがいないのも知ってる。近所の奴らはばあさんの事も…。ばあさんがどんな人間かも知ってる。
心配してくれたさ。それは嬉しかったよ。けど…ひねくれてたんだな。同情されてるような気がしてた。だから、辛くない、悲しくなんかない…って強がってた。
でも、ダメだった。ばあさんがお前なんかなんで生まれてきたんだって言う度、どうしていいかわからなくなったんだ…」
「辛かったな…」
腕の中でゆっくり話す郁己の背中を優しく撫でる。
「この火傷は母さんとの思い出なんだ。この楕円の痕が母さんの親指の形。俺の事を後ろから抱きしめて手首を持ったんだ。そこに傷を付ける。それはさ、何で俺を残して死んだんだよって、母さんに文句言ってたんだな。
でもさ、高校行くようになると、中学の同級生もいたけど、ほとんどが知らない奴らだろ。なんか憑き物が落ちたみたいに…何であんなことしてたのかなって。
でもさ、痕は見られたくないからずっと絆創膏貼ってる。バイトの時は包帯も。火傷の痕があるから隠したいって言ったら大抵納得してくれる。端の方ちょっと見せたらさ」
「自分で包帯巻いてるのか?しにくくない?」
「最初にテープで留めれば簡単。もう痛くないからさ」
全部話してすっきりしたのか、話し始めの不安そうな顔じゃなく、落ち着いた様子に安心した。
好きになるのは、良いなと思うのは、全部男だった。
俺から誘ったことも、しつこく言い寄られたこともある。
郁己は…そのどちらでもない。お互いが惹かれた。
そうだよな?
俺だけが思ってることなのか?
郁己は…、まだ確かめることは怖くてできない。求められてる…そう思ってていいよな?自分の存在意義を確かなものにしたがっているのだ…俺は。
必要と思ってくれてるだろ?
なあ、郁己。
二人でソファーに座る。もっと大きなソファーが良かったけど、部屋が狭くなるからこれにした。郁己と二人なら小さなソファーでも構わない。郁己は今、俺の膝の上だ。
ふと、左の手首が気になった。
「郁己、これはどうしたんだ?火傷じゃないのか?さっき聞いた時は傷だって…」
「えっ、あっ…」
途端に暗い顔をする。抱きしめキスをした。
「聞きたい。言って?」
何かあるんだ。俺には言いたくない何か。でも、聞きたい。郁己の全部を受け止めたい。
「火傷は母さんがなくなる前に、熱湯が掛かったんだ。遊んでてさ…どうしてかなんて覚えてないけど…。母さん、直ぐに水を掛けて冷やすなんて知らなくって…焦って俺の手首をギュゥって掴んだんだ。そしたら癒着して…」
お母さんがなくなる前なら十年以上前の話だ。絆創膏の周りから見える痕がそうだろう。今も隠さないとならないくらいに酷い痕なのか?
「俊一さん…嫌いにならないで」
「大丈夫だ。郁己、言ってごらん?」
「……父さんが死んで、ばあさんが母さんの悪口を言い始めた頃…ばあさんは俺にも…」
「うん」
抱きしめて背中を撫でた。
「俺…、リスト…」
「もういい…わかった。もう言わなくていいから」
苦しかっただろう。
辛かっただろう。
「見せて?」
「えっ…」
「大丈夫だ」
恐る恐る絆創膏を剥がす。
お風呂に入り、ふやけて剥がれかけていたのかペロンと取れた。
火傷の痕と線のような傷が幾つか見えた。最近の傷ではなくもう目立たなくなってる。
「今は?」
「今は、してないよ。
…中学の時、周りはみんな父さんが死んだこと知ってた。勿論母さんがいないのも知ってる。近所の奴らはばあさんの事も…。ばあさんがどんな人間かも知ってる。
心配してくれたさ。それは嬉しかったよ。けど…ひねくれてたんだな。同情されてるような気がしてた。だから、辛くない、悲しくなんかない…って強がってた。
でも、ダメだった。ばあさんがお前なんかなんで生まれてきたんだって言う度、どうしていいかわからなくなったんだ…」
「辛かったな…」
腕の中でゆっくり話す郁己の背中を優しく撫でる。
「この火傷は母さんとの思い出なんだ。この楕円の痕が母さんの親指の形。俺の事を後ろから抱きしめて手首を持ったんだ。そこに傷を付ける。それはさ、何で俺を残して死んだんだよって、母さんに文句言ってたんだな。
でもさ、高校行くようになると、中学の同級生もいたけど、ほとんどが知らない奴らだろ。なんか憑き物が落ちたみたいに…何であんなことしてたのかなって。
でもさ、痕は見られたくないからずっと絆創膏貼ってる。バイトの時は包帯も。火傷の痕があるから隠したいって言ったら大抵納得してくれる。端の方ちょっと見せたらさ」
「自分で包帯巻いてるのか?しにくくない?」
「最初にテープで留めれば簡単。もう痛くないからさ」
全部話してすっきりしたのか、話し始めの不安そうな顔じゃなく、落ち着いた様子に安心した。
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