波紋

茉莉花 香乃

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第五章

03

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誰かとクリスマスを過ごした経験がない。いつもと同じ、ただの一日。母さんの記憶はほとんどなかった。

プレゼントもケーキも友だちの話の中かテレビの中の話。父さんは俺を喜ばせることに興味がないのか、クリスマスもプレゼントも父さんの口から聞いたことがなかった。
だから、俺にはおじいちゃんが内緒でくれる小さなプレゼントだけだった。

俊一さんにプレゼントを選んだ。月並みだけど、ネクタイ。

『お父様にプレゼントですか?』

店員に言われて焦ったよ。

『いえ…』

俊一さんは勿論父親じゃない。兄でもない。友だちでもない。恋人…なのか?セフレ…。

『兄です』

例え本物の恋人でもそれは言えないな…。

「はい。これ」

気に入ってくれると嬉しいな。

「くれるのか?」
「うん」
「嬉しいよ。俺も郁己に」
「開けていい?」
「ああ」

少し大きな包みに入っていたのはワンショルダーのバックパックだった。

「嬉しい。ありがとう」
「これ、郁己が選んでくれたのか?」
「うん。売り場のお姉さんに手伝って貰ったんだけどね。お父様にですか?って聞かれて焦ったよ」
「なんて答えたんだ?」
「んっ?兄ですって言ったけど?」
「そうか」

何か考え込んでる。
失敗した。こんな話するんじゃなかった。

俺がこの関係をはっきりとした名のあるものにしたがってるって思われちゃうよ。ダメだ。負担になっちゃダメなんだ。

「俊一さん…キスして?」
「どうした?」

どうしたと言いながらもキスをくれる。誤魔化すことができただろうか?
なかなか自分からキスができない。でも、こうして強請ると喜んでくれるみたいだからいいのかな。

「あっ…んっ」

誤魔化すためにキスをせがんだけど、だんだん体温が上がってくる。俊一さんの手が裾から入り俺の身体をくすぐるように動く。

今日、バイトは休みを貰った。少し前から店長にお願いしておいた。

「…風呂行こ?」

こうして何度一緒に風呂に入り、何度抱かれたか。側に行くと抱きしめてくれるし、キスもくれる。言葉で好きだと愛してると言ってくれる。

でも、やっぱり俺はこの関係の名前を知りたいのか?身代わり?セフレ?恋人?そんな訳ないだろ。

俺の周りでは、お付き合いは『付き合って下さい』から始まる。身体優先の関係はやっぱりセフレ?
でも、鍵を渡してくれた。それは初めて抱かれる前。じゃあ、同情?俊一さんは優しい。その優しさに付け込んで利用しようとしているのか…俺は。

「郁己、何考えてる?こっち見ろよ」
「うん、俊一さん…大好き」

高校生の俺は愛してるって言葉は照れ臭くて言えない。でも、最上級が愛してるなら躊躇いなく言うだろう。

今、俺の中の最上級は『大好き』。その気持ちを込めて告げる。嬉しそうな顔が更に綻んで頭を撫でてくれた。
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