波紋

茉莉花 香乃

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第六章

04

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俺の動揺が伝わったのか慌てて訂正する。

「違いますよ。おじいさんが亡くなってそれでも普通に過ごせたのは貴方のお陰だと、感謝してると言ってました」
「それなら、何故?…」
「泣いてしまうからって…。学校では泣いたことなんてないですよ。でも、貴方の前だときっと泣いて困らせてしまうからって。
…二学期入って…いつぐらいからかな…片島の雰囲気が変わったんです。問い詰めたら、好きな人がいるって」
「それは…」
「そうです。貴方の事です」

男が好きだと友だちに言ったのか?

「最初はびっくりしましたよ?でも、真剣な顔で言うし、片島凄く明るくなった。俊一さんがどうしたとか、俊一さんとどこに行ったとか、一緒に何作ったとか毎日惚気てました」

言葉が出なかった。
近所のお兄さんではなかったんだ。ちゃんと恋人だと思ってくれてたのか?

「おじいさんが亡くなって、少ししてから片島の家に叔父さんって人が来て『父が会いたがっている』と言われたそうです」

大野くんの話はこうだった。

その人が言う『父』とは郁己の母方のおじいさんで、資産家らしい。

郁己の母は愛人の子だったそうだ。なかなか子どもができなかった本妻に子どもが生まれ、虐めが始まった。

多分、愛人がいると確信していた本妻は愛人がどこに住んでいて、子どもが生まれていたことも知っていた。自分の子どもが生まれてからは人を使って酷いことをしたらしい。居た堪れなくなり、郁己のおばあさんは黙って姿を消したそうだ。

その本妻が一年前に亡くなり、郁己のおじいさんは愛した人とその子ども…郁己の母親を探し始めた。

そして、十年以上前に死んだこと、孫がいることを調べたそうだ。

そう言えば、会えなくなる前日に探偵って何調べるのとか聞いてたな。このことだったのか?

「それで、郁己は?」
「そのおじいさんが体調崩してて、余命があまりないって医者から言われてるとかでそのまま着替え持っておじいさんに会いに行ったみたいです」
「どうして着替えがいる?遠いのか?」

大野くんに突っかかっても仕方ないとはわかっていても気持ちは焦る。

「僕もどこかは知らないんです。片島、おじいさんの事とても大事にしてたから、その会ったことないおじいさんの事も気になったんじゃないかな。で、気になってそのまま転校までしてしまった」
「転校!?」
「そうです。びっくりですよ。いくら心配だからって、今までほったらかしにしてた人でしょう?片島がどれだけ辛い目にあってたか!知りもしない人のために転校までしなくてもいいじゃん…」

大野くんは郁己の事を心配して、転校したことを悲しんでくれてる。きっとリストカットをしなくなったのは大野くんや他の友だちのお陰なんだろう。

こんなふうに怒って、心配してくれる友だちがちゃんといたんだな…。

「それで、転校手続きの時に一度教室に来て、これ貴方に渡してって言って…」

そう言って、手紙を渡してくれた。
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