天使のローブ

茉莉花 香乃

文字の大きさ
40 / 173
第四章

08

しおりを挟む
多分、爺さんより俺の方が力が大きかったんだ。年寄りと幼児だったけど、やっぱり二人ともがミネルヴァの生まれ変わりだからかが同じなんだよ。爺さんの残された力が俺に雪崩れ込むように入ってくるんだ。
六、七歳だったけど、何となく理解してた。『ミシェルを探さなきゃ』って思ったんだ。ジュリアンは力抑えてだだろ?だから最初わからなかった。会えばわかるって思ってたからジュリアンは違うなって思ったんだ。
でも、だんだん惹かれていくのに、もう爺さんの事とかミシェルを探すこととかどうでもいいって、俺はジュリアンが好きだって思うようになってさ。正直辛かったな。
ジュリアンがミシェルなら良かったのにって何度も思ったよ。そのジュリアンは大きくなるにつれて漏れ出る力を抑えられなくなったのかあるダンスパーティではっきりわかったんだ。
『探してたのはジュリアンだったんだ』ってわかった時は嬉しかったよ。先代も女性だったから疑いようもなかったしね。ほら、あの時のジュリアンはどこからどう見ても可愛い女の子だったろう?」
「ごめんね、男で…」
「何を言ってるの?
俺はジュリアンが好きなのに。
ジュリアンが男でも女でもジュリアンなら良いんだ。
それに、初代さまの記憶も見えたって言っただろ?だから、初代のミシェルさまが男だとわかってた。だからミシェルが男でも女でもどっちでも関係ないんだ。その時に見たミシェルさまはジュリアンによく似てたけど、それでジュリアンを好きになったわけじゃない」
「うん…ありがとう。嬉しい」
「俺さ、初代さまが爺さんをあの歳まで生かしてたんじゃないかと思うんだ。
同じ家にミネルヴァの生まれ変わりを誕生させたのもそう。だってそうだろ?爺さんに聞かなかったらわからなかったことが多すぎる。
普通はさ、初代さまの記憶を持って生まれてくることはないんだって。どうして爺さんに初代さまの記憶があったのかは聞かなかったけど、俺は爺さんの記憶と一緒に初代さまの記憶が俺の中に入ってきたから知ってる。だから俺が理解できるギリギリまで頑張ったんだな、爺さん。
俺の魔力もさ、爺さんに貰わなかったらジュリアンの力を抑えることはできなかった。初代さまは俺の為って言うかジュリアンの為…ミシェルさまの為に俺に力を与えたかったんだ。
本当なら俺の本来の力が増やせればよかったのに、俺の力を増やすことは出来なくて、爺さんからって思ったんだよ、きっと。
初代さまたちは結ばれることはなかったんだ…愛し合ってたのに。
ジュリアンも二人のお姿を見ただろ?俺も見た。あの記憶が俺たちの年頃でなくて良かったよ。でないとジュリアンによく似たミシェルさまが他の男に抱きしめられてるのなんか見てらんない。
顔もだけど、髪の色も長さは違うけどシルバーで、瞳の色も綺麗な紫でさ…。
凄く大事そうに…大切にしているのがわかるから、その切なさもわかるんだ。その時はもう別れを決意していたんだな。国の為、未来の子どもたちの為。だからさ、いつか生まれ変わった時にはずっと一緒にいられるようにって願ったんだろうな。俺たちは初代さまの分も幸せにならないといけないな」
「そうだね」
「ジュリアンは初代さまの記憶があるの?」
「多分…さっき見えたのがそうだと思う。
入学する前に父上に初めて名を賜ったと聞いた時は、そんなことなかったんだよ。力が溢れ出たと思うけど、父上に魔法を掛けられて、その時の記憶はあやふやなんだ。自分で抑えられない力で疲れたのは思い出したけど、そのことも含めて全てを忘れる魔法を掛けられたんだと思う。
あの時は事実を事実として聞いただけだった。でも、初代さまの記憶でもミネルヴァさまに関するものだけが強く蘇ってる。
さっき、アシュリーに〈ミネルヴァ〉って聞いた時に、お二人の姿が見えた。キスしてたよ…。『愛してる』って…。それ見た時、僕もちょっと複雑な気持ちになっちゃった…。
僕だけど、僕じゃない誰かとアシュリーによく似た人がキスしてるのはあまり見たくない。ミネルヴァさまも綺麗な碧い瞳だったよ。
だから、全てじゃないんだ。だけど、初代さまの記憶はある」
「普通はさ、先代の記憶は無いそうなんだ。勿論初代さまの記憶も無い。俺は初代さまの記憶も、爺さんから直接渡された力によって入ってきたから爺さんの記憶もある」
「僕は先代の記憶は無いよ?女性だったんだよね?先代も男になんて知られたくないよね」
「うん。ジュリアンは知らない方が良い」

突然抱きしめられた。

貪るようなキスをされて、身体の力が抜けてしまう。しばらくアシュリーからのキスを甘受した。

キスするの好き。

愛を確かめ合うキス。
幸せを確かめ合うキス。
お互いを癒すキス。
不安を取り除くキス。
……このキスはきっとこれだ。

髪を梳きながらこめかみにチュとキスをすると、ようやく落ち着いたのか再び向かい合った。

「どうしたの?何かあったの?」
「ジュリアンは俺が守るから必要なら教えるけど、必要でないなら知らない方が良い。信じてほしい」
「わかった。信じてる」
「俺の側にずっと…ずっといてくれる?」
「勿論だよ…」

どこか寂しそうなアシュリーに、そんな不安な顔をして欲しくなくて僕からキスをした。不安なことは僕が全部なくしてあげる。喜びは一緒に感じたい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

ユキ・シオン

那月
BL
人間の姿をした、人間ではないもの。 成長過程で動物から人間に変わってしまう”擬人化種”の白猫青年と、16歳年上のオッサンとのお話。 出会ったのは猫カフェ。白猫従業員としての青年と客としてやってきたオッサン。 次に再会したのは青年が人間として通う大学。オッサンは保健室の先生だった。 青年が金のためにヤバいことをしていて、あるトラブルが起こる。 そこへ見計らったかのようにオッサンが飛び込んで救出したのをきっかけに2人の距離は縮まり…… ※表紙絵は自作。本編は進むにつれてどんどん動物園と化します(笑)

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

ギャップがあり過ぎるけど異世界だからそんなもんだよな、きっと。

一片澪
BL
※異世界人が全く珍しくないその世界で神殿に保護され、魔力相性の良い相手とお見合いすることになった馨は目の前に現れた男を見て一瞬言葉を失った。 衣服は身に着けているが露出している部分は見るからに固そうな鱗に覆われ、目は爬虫類独特の冷たさをたたえており、太く長い尾に鋭い牙と爪。 これはとんでも無い相手が来た……とちょっと恐れ戦いていたのだが、相手の第一声でその印象はアッサリと覆される。

愛と猛毒(仮)

万里
BL
オフィスビルの非常階段。冷え切った踊り場で煙草をくゆらせる水原七瀬(みずはらななせ)は、部下たちのやり取りを静かに見守っていた。 そこでは村上和弥(むらかみかずや)が、長年想い続けてきた和泉に別れを告げられていた。和泉は「ありがとう」と優しく微笑みながらも、決意をもって彼を突き放す。和弥は矜持を守ろうと、営業スマイルを貼り付けて必死に言葉を紡ぐが、その姿は痛々しいほどに惨めだった。 和泉が去った後、七瀬は姿を現し、冷徹な言葉で和弥を追い詰める。 「お前はただの予備だった」「純愛なんて綺麗な言葉で誤魔化してるだけだ」――七瀬の毒舌は、和弥の心を抉り、憎悪を引き出す。和弥は「嫌いだ」と叫び、七瀬を突き放して階段を駆け下りていく。 「……本当、バカだよな。お前も、俺も」 七瀬は独り言を漏らすと、和弥が触れた手首を愛おしそうに、そして自嘲気味に強く握りしめた。 その指先に残る熱は、嫌悪という仮面の下で燃え盛る執着の証だった。 毒を吐き続けることでしか伝えられない――「好きだ」という言葉を、七瀬は永遠に飲み込んだまま、胸の奥で腐らせていた。

血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】

まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター
BL
 ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。 自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。 ――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。  そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように―― 「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」 「無理。邪魔」 「ガーン!」  とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。 「……その子、生きてるっすか?」 「……ああ」 ◆◆◆ 溺愛攻め  × 明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

処理中です...