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escape!
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しおりを挟むあーもう息が苦しい。
でも、今ここで捕まってみろ。
おれの財布には寂しい思いをさせてお金あげたにも関わらずサンドバックで決まりでしょ。
あーあ、最初のページくらいかっこよくいきたかったんだけどなぁ。
強面の金髪の不良さんに追われながら、ぼんやり考える。端から見れば平凡男子が不良に叫びながら全力疾走で追われていろ危機的状況なんだろうけど。
こういう時焦っても仕方ない、日々のバイトで培った行動力が物を言う時。走って走ってそしたらいつか飽きてくれるだろう。
それでもだんだん呼吸が荒くなって喉乾いて頭がぼんやりして
原因の記憶が緩やかに再生されてきた。
ぶつかったのは確かに悪かったけど、あれは理不尽だ。
ヒュウッと音を立てて突き刺さるような冷たい風が強く吹いた。閑静な住宅街はコンクリートの壁に囲まれていてそれが余計に寒く感じる。マフラーで口元まで隠して背中を丸めた。
「…………さっ、さみぃい!」
少し前でブルブルと震える身体を丸くしながらながら歩く秋。本当の名前は野島秋裕だけど秋裕は長いからおれ達は秋と省略して呼んでる。
「寒いって言ったら余計寒くなるだろ」
おれの隣で冷静に言う彼の名前は坂下優夜。同じ理由で優と呼んでる。クールな彼も鼻先が少し赤くなるほど気温は低い。
「…………あつーい……ひっさむっ!」
じゃあ、暑いと言えばいいのか。みたいな顔してあついと秋が言えばちょうど吹く冷たい風。思わずのけ反る秋にちょっと笑ってしまった。
そんなおれ、高瀬唯斗。もう流れで分かるだろうか、唯って呼ばれてます。
「ふふっ、秋寒がり過ぎ」
「しかたねぇだろ!さみいよ!」
「唯は寒くないの?」
「さっむい!」
「……って一緒じゃねぇか!!」
いや、だって寒いじゃんね。
こういう馬鹿なやり取りが楽しくて堪らない。乗ってくれる2人が好きだよ。
角を曲がると見えてきたいつもコンビニに買いたいものあったなと思い出す。
「コンビニ寄ってもいい?」
「いいよ」
「あー俺も買うのある、肉まん!」
食い物かい。それ今コンビニを見て食べたいって思ったやつじゃんと秋にツッコミ出来ないのが悔しい。おれも同類なもんで。変わりにツッコミしてくれた優は何も買わないらしくおれを見た。
「唯はなに買うの?」
「食パン」
「食パンって!」
明日の朝ご飯です。
爆笑し始める秋は制服姿で店に並ぶ食パンの袋を掴むおれの姿でも想像したのだろう。確かに高校生が学校の帰りに食パンなんてあんま買わないのかも。
「明日はパンって決めてたからね」
「スーパーで買えばいいじゃん」
「スーパー行くと他の買いたくなっちゃうの。今おれんちの冷蔵庫には材料は十分なんで、節約!」
「よっ、主夫の鏡!」
「へへんっ」
いやはや、もう主夫と言われたら嬉しいレベルで家事が好きなおれ。母さんに感謝してるし、お返しと言ったらこれくらいしか出来ないもんね。
「優も肉まん買えば?暖まる!」
「うーん、なら買うかな」
「え、2人とも?じゃあおれも買おー」
「唯、節約は?」
くっ、優め、鋭い。だってみんなが目の前で食べてんの見て我慢出来ないのは目に見えてるじゃないか。コンビニを目の前にすると、とうとう秋が声を上げて小さく走り出した。肉まん、そんなに食べたかったのね。
「さみーー、肉まーん」
背中を丸めマフラーで口をすっぽり隠したままレジに直行した秋に店員さんが小さく笑うのが見えた。ちょっと面白いよね。冷たい空気がようやく遮断されてあったかい空気に包まれてほっこり。
レジ横のガラスケースに入った肉まんを覗き込み秋が店員さんを呼ぶ。
「肉まん下さーい」
「おひとつですか?」
「俺と優と唯も食べるって言ってたから3個だな!」
「……ぷっ、少々お待ち下さい」
あほの子みたいな秋の説明に思わず吹き出した店員さん。秋くんって普段もっとちゃんとしてるんだけど寒すぎるのと肉まん欲しさでキャラが崩壊している。
「うちのあほがすみません」
びしりと三本の指を出した秋の横で真顔で謝る優にとうとう店員さん声を立てて笑ってしまった。この場合店員さんは悪くないね。あの二人の最早コントみたいなやつは仕方ない。面白いもん。てかだいたいはおれを筆頭にやってるかも。
しかし、店員さんが異様にイケメンだなぁ。いままで見たイケメンを軽く上行く。爽やか笑顔に輝く白い歯、高身長黒髪短髪。もしこれで野球とか陸上してたら女の子がもうそれはそれは応援するだろう。
おれはレジからちょっと離れたとこでイケメン店員を横目に食パンを掴む。おお、やった。10パーセントオフだって。
「唯、肉まん買ってあげる」
「きゃー優様大好き!!あ、これもお願いします」
レジの台に食パンを置いて食パンのお金を払う。すぐに食パンを袋に入れて差し出したイケメン店員が「ありがとうございました」と言って笑えば爽やかに風が吹き抜け思わずガン見。
「お兄さん、イケメンですね。コンビニに働いてるのが奇跡ですよ、本当」
「え……はは!ありがとう嬉しいよ」
すんげー爽やかに笑うなこの人。ここまでイケメンだと笑われても嫌じゃない。これイケメンの特権。
女の子はきっとこの笑顔でイチコロで、胸を痛めてダイエットに励んだり、メイクしたり、たくさん笑ってきらきらして、勇気を出して告白。こうしてイケメンは女の子に貢献していくのかもしれない。そして女の子も尊いし最高だな。
「でも確かにお兄さん超カッコイイですよね」
優が妄想を膨らせたおれを見てジトリと睨むがイケメンには同意してくれた。おれらの横ですでに肉まんを食い始めてる秋も話を聞いてモグモグしながら叫んだ。
口にものを入れて喋らない、と優に頭を軽く小突かれ急いで飲み込む。
「俺も思った。今までのイケメンの中じゃあ比べらんねぇ」
「「それ、俺も思った」」
見事にハモった優とおれ。
きょとんとしたイケメン店員はすぐに吹き出した。いやー爽やか爽やか。
「お兄さん、それではー」
「肉まんおいしかったです!まだ全部食べてないけど!」
「……これから頂きます、ありがとうございました」
おれらのやり取りにまた笑いながら手を振るイケメン店員。あのコンビニはオアシスだな。女の子が喜ぶね。そのうちイケメン店員のいるコンビニとして噂が回りそう。
「おもしろい子達見つけた……」
店を出た後そんなことをお兄さんが怪しげに呟いていたなんておれらは知らない。
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