sweet!!

仔犬

文字の大きさ
53 / 378
everyday!

9

しおりを挟む




「ずいぶんと馴染んだなぁ」

「みんなが優しいんですよ~」



どんどん力の抜けたおれは体制が低くなって頭がちょうど先輩の顎置きになる。両手がまたお腹に戻ったのでその手を触りながら手相を見てしまった。

「氷怜先輩……やば、覇王線ありますよ!」

「は?」

「これ!」

ホウキのように広がったその線をなぞる。

「これめちゃくちゃ珍しい奴ですよ、成功者とか億万長者になれるって」

「……へぇ、そんなもんまで知ってんのか」

「おれの知識は女性のファッション雑誌にだけ特化してるんですけどね。メイクとかファッションとかダイエットとか美容とか……そうやって見てるうちにどれだけの努力をしていてどれだけ輝いているんだって思ったんです。女性は本当にすごい」

「お前のそれは……」

くぐもって途切れた声に、話していなかった事がたくさんあることに気づく。話すも間も無く試合が来て友達がいっぱいできてたからなぁ。

「優夜に直接聞けって言われたが」

「あれ、そうなんですか?別にすごい話とかではないんですけど……よいしょっと」


顔を見て話したくなって、靴を脱ぎ身体を横に向けた。1人用のソファだが横向きに小さくなればすっぽり収まった。今度は先輩の腕が背中とお腹に回された。


「そういうのを調べ始めたのって母さんのためだったんですよ。そのきっかけは小学生の頃に父さんが死んだ時ですかね」

「……」

腕に力が入った。氷怜先輩は何も言わずに次の言葉を待っている。

「父さん穏やかで優しくておれも大好きでした。1番記憶に残ってるのは父さんも母さんもいつまでたっても恋人みたいに仲良しで、それを見てるのがすごい好きだったんです」


静かに小さく相槌を入れてくれる氷怜先輩が愛おしくて頭を胸に傾けた。心音が聞こえる。


「でも父さん身体が弱くて……それで」


曖昧に笑ったおれのこめかみに口づけが落とされた。甘く、穏やかな感触が硬い気持ちを溶かす。


「……もちろん悲しいことだったし今でも胸は痛くなりますけど、悲しい事を悲しいままにする家でもなかったんで母さんは働きに出たしおれは家事に立候補!」

「ああ、じゃあ料理出来んのか?」

「結構評判ですよ、今度作りますね?」

「楽しみだ」

時間はかかるけど美味しいはず。
頰を撫でられて目を閉じた。

「でも今まで母さん専業主婦だったんで最初は大変だったみたいで……オシャレとかも大好きだったんですけど時間がなくてどんどん遠のいちゃって。そこで思い出したのが父さんがいつも母さんに服とかメイクとかよくプレゼントしてたんですよ。買いに行く時間が無いなら今度はおれが代わりにそれをしたい!って思ってプレゼントし始めて……」

昔は料理も覚束なかったけど、健康や美容に良いものとかおしゃれなカフェに行った気分になれるものとか、そういうの考えたら楽しかったな。

「あとは父さんはまだまだ母さんに綺麗だとか可愛いって伝えたかったはずだから。代わりにおれがたくさん伝えて母さんの息子でもあり彼氏でもあり、みたいになれたら良いなって……」



しおりを挟む
感想 182

あなたにおすすめの小説

とあるΩ達の試練

如月圭
BL
 吉住クレハは私立成城学園に通う中学三年生の男のオメガだった。同じ学園に通う男のオメガの月城真とは、転校して初めてできた同じオメガの友達だった。そんな真には、番のアルファが居て、クレハはうらやましいと思う。しかし、ベータの女子にとある事で目をつけられてしまい……。  この話はフィクションです。更新は、不定期です。

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

百合豚、男子校に入る。

BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。 母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは―― 男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。 この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。 それでも眞辺は決意する。 生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。 立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。 さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。 百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。

人気アイドルが義理の兄になりまして

BL
柚木(ゆずき)雪都(ゆきと)はごくごく普通の高校一年生。ある日、人気アイドル『Shiny Boys』のリーダー・碧(あおい)と義理の兄弟となり……?

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜

星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; ) ――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ―― “隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け” 音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。 イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――

処理中です...