sweet!!

仔犬

文字の大きさ
107 / 378
Peace!

3

しおりを挟む




数分歩いて、大通りに出たところで声をかけられた。


「あ、いたいた。皆さん乗って下さい」


いやにでっかい黒い車が横付けされたと思ったら見知った爽やかな笑顔。

「赤羽さん!」

「氷怜さんに後ろ姿を見つけたら連れ去れって伝言が」
 

氷怜先輩、セリフが誘拐犯です。
今日の予定は拉致監禁なのか?

窓から顔を出した赤羽さんにこれはちょうどいい頭の高さとばかりに数秒でリュックから取り出したカチューシャをぐさっと頭につける。

「……これは」

「おお可愛い。お土産です!」


すぐに写真に収めて満足していたら桃花と式が青い顔をしていた。

「おま、なんて恐ろしい事を……」

「これは!驚かしがいがありそうです!」

「え?」


やっぱり赤羽さんは喜んでくれると思ったよ。ピンシャーカチューシャをつけたままさわやかに笑う赤羽さんと拳を合わせた。カチューシャは取る気がないのかさあ乗ってと再度促す。
高級車に犬のカチューシャつけたイケメン運転手。カオスだ。

「さすが唯……もう赤羽さんと仲良くなってる」

「才能だからあれは」

秋と優が見慣れた様子で話す。

歩こうと決めたばかりだが目の前にまできてもらっては乗るしかない。桃花がドアを開けてくれて中に入り込めば当たり前のようにあったかくて広くて、座り心地バツグンのシートは今日も最高。


「まーた、甘やかされてる~」

「このシートは力が抜けるよなぁ」

「相変わらず飲み物完備……」


すでにとろけ始めたおれたちに桃花は笑い、式はいつものごとく眉間にシワ。

「俺たちまで……」

「式もなんだかんだ気に入られてるんだよ」

「そうかぁ?」

2人の会話に、おれもそうだと思った。チームの人間にも優しいあの人たちがおれも好きなのだから。

嬉しいのか恥ずかしいのか式はふんっと鼻を鳴らす。

「お前らは重役出勤までしてくるしな」

「あう、それは本当にすみません」

遅刻したおれたちにいち早く説教したのは式だった。優しい事に3人一緒で遅刻とかいくらお前達でも目付けられるぞという注意だったけど。

「いやーすっかり幸せに浸ってたら時間ってすぐすぎるんだよねぇ」

隣の秋に寄りかかれば意地悪そうに秋が笑った。

「唯が氷怜先輩にでれでれしてるから」

「秋が瑠衣先輩と朝食ずっと食べてるから」

ふざけるおれたちに優は自分を棚に上げる。

「俺は起きたし1番早くに食べたよ」

「優は暮刃先輩と優雅に食後のティータイムしてたじゃん」


言い合いを始める俺らに式がハイハイと窓の外に視線を向けてしまう。
桃花が綺麗な笑顔で笑った。

「楽しそうだ」

「桃花も遊びに行こうね」

「はい!」


話しているうちに居心地のよさに思わず眠りそうになりながらもついたクラブ。

相変わらず裏から入ると幹部の人が頭を下げる。
顔を上げた瞬間に赤羽さんのカチューシャにギョッとしていた。赤羽さんの肩が震えているのをおれは見逃さなかった。楽しんでくれて何より。

驚きながらも幹部の人がおれたちにも手を振ってくれたので手を振り返すと赤羽さんになにかを報告していた。

その目が少しだけ見開く。

「珍しい」

「どうしたんですか?」

「部屋、覗いてみてください」


さわやかな笑顔の裏になんだか含みのある目。みんなで目を合わせながらも変わらずの豪華なVIPルームに足を運んだ。
少し慣れてしまった自分がいて、それもそれで不思議な日常だ。
それよりもこのVIPルーム、天幕付きの大きなベッド付きなのだが。

「こ、これは……」

「さっきまで連絡してたんでそのあと寝ちゃったみたいですね」


大きなベッドは氷怜先輩の身長でも余裕で余っている。暮刃先輩が掛け布団をかけて綺麗に仰向けで寝ている横で氷怜先輩が横向きで眠っている。さらにそのお腹あたりで瑠衣先輩が丸くなって同じく眠っているのだ。

この頭を見せるのは後でになりそうですね、と残念そうな顔で用があるので下にいますと言う赤羽さんを見送った。

すぐさま忍び足でベッドに向かうと声のトーンを落として秋がつついてきた。

「唯真顔で写メ撮らない」

「かわいぃぃ」

「暮刃先輩まで……」


暮刃先輩の横から顔を覗いた優が仕方なさそうに笑った。その横で式が驚いたような顔をした。

「先輩達がこんなに寝てるの初めて……」

「え、そうなの?」

泊まった時はいつのまにか寝てたから気にしていなかった。桃花がふむと考えて小さく話す。

「もしかして……寝れてなかったんじゃないですか唯斗さん達といたから」

「いや、氷怜さん達に限ってそんな……」

桃花の言葉に反応した式の視線がおれたち3人に移るとあからさまに呆れ顔になった。

「やっぱお前らのせいだわ……」

「え、唯だけでしょ」

「ちげえよお前ら唯のせいにしがちだけど、毒されてんだから秋も優も。そりゃ感染源の唯は飛び抜けてやばいけどな」

「式……ちゃんとおれだけ線びくところさすがだね」

はあと、ため息をついて桃花を引っ張りVIPルームを出ようとする式。ならばおれたちも出て行って先輩達を静かに寝かせようと一緒に立ち上がった。



「お前らはこれからアニマルセラピー」



ぴっと人差し指を立てて振り返った式はそう言い放ってドアを閉めた。しかも外から鍵を閉めた音がする。

秋と優は呆然としていたが、おれはピンときた。




「ああ、おれらがワンダラに行って学んできた癒しを使えってことか!」

「絶対違うから」

手を合わせたおれに優がぴしゃりと突っ込む。





しおりを挟む
感想 182

あなたにおすすめの小説

とあるΩ達の試練

如月圭
BL
 吉住クレハは私立成城学園に通う中学三年生の男のオメガだった。同じ学園に通う男のオメガの月城真とは、転校して初めてできた同じオメガの友達だった。そんな真には、番のアルファが居て、クレハはうらやましいと思う。しかし、ベータの女子にとある事で目をつけられてしまい……。  この話はフィクションです。更新は、不定期です。

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

百合豚、男子校に入る。

BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。 母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは―― 男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。 この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。 それでも眞辺は決意する。 生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。 立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。 さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。 百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

人気アイドルが義理の兄になりまして

BL
柚木(ゆずき)雪都(ゆきと)はごくごく普通の高校一年生。ある日、人気アイドル『Shiny Boys』のリーダー・碧(あおい)と義理の兄弟となり……?

【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。 名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。 そんな彼には「推し」がいる。 それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。 実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。 終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。 本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。 (番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

処理中です...