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しおりを挟む「……瑠衣先輩?」
車の中、ライトも点けずに瑠衣先輩が居た。
ジャケットも脱いでネクタイをほどき首にかけたまま、静かにタバコを吸っていた。いつものおちゃらけた雰囲気も無ければ音も何も無い。
シートに足を伸ばして乗っけていたので少し離れた所に座ると足の間が空いた。間に座れと言っているらしい。靴を脱いでのそりと近づいていくと腕がお腹に通され一気に引き寄せられる。
背中が瑠衣先輩のお腹にくっつくと顎が肩に乗っかり、お腹に回る手がタバコを持ちながら重なった。
無言のまま時間が過ぎるとタバコの灰が増えて、今にも落ちそうだった。ひょいと取り上げて灰皿に移動させてもなんの反応も帰ってこない。
「どうしたんですか」
聞いても返事はない。
唯はひたすら怒られると思っていたけれど、先輩達が俺たちに怒る事などほとんどないなんてもうここまで来たら分かりきっていた。
そんな自信は側から見れば恥ずかしい思い上がりに見えるのかもしれないけど、それほど先輩達との関係は自分でも驚くほど濃いものだと思っている。特別なことがあってもなくても、だいぶ先輩達の人となりが見えてきたいまではこれほどの居場所は無い。
「瑠衣先輩、ありがとうございます。お陰で怪我も大したことないですよ」
「……うん」
やっと返事が来たがまだまだ声に抑揚がない。本来この人はこういう面があるのだと思っていたから驚くことはなかった。
「だから、瑠衣先輩がそんな風にならなくても大丈夫ですよ」
「……怒って無いよ」
「ん?誰も怒ってるなんて言ってませんけど?」
「なまいき……」
小さく鼻でやっと笑ってくれた。
お腹に回った手を崩して自分の手を重ねると全てを掴むように握り返された。行き場のない感情を無理やり型にするような、そんな行動に妹と弟を思い出した。
「俺前も言った気がしますけどお兄ちゃんなんです。妹と弟の」
これの返答は無かったが、おそらく聞いている。
「何か失敗して怒られると思った時に隠したりはしないんですけど、それ以上に目が話してるんです。なんて話そうかとかそれよりも痛かったとかそんな感じのぐちゃぐちゃな想いが全部眼に映る」
肩口に潜るように瑠衣先輩が動くのがくすぐったくて笑いながら話し続ける。
「それがすごい可愛いんですよお兄ちゃん欲が出るというか。血が繋がってなくても唯とか弟みたいで妹みたいで退屈しなくて、優もしっかりしてるけど可愛い部分もあるしそういうの見てるとお兄ちゃんやりたくなるんです」
「……何、オレもそうだって言いたいのー?」
ようやく調子を取り戻してきたらしい。
いつもの話し方に近づいてきた。
「そうです」
「そう……じゃあまだまだダネ」
何をとは聞かなかった。隠す気もないその言葉遊びには付き合わないと決めた。それにまだ俺の話は終わってないから。
「俺瑠衣先輩のわざとわがまま言うところも空気読めるのに読まないところも、いつも楽しいことを探してるところも含めてなんだかほっとけなかったです」
「それは、どうもアリガトウ」
むくれているような返事に見事俺の誘導に引っかかってくれたと心の中でガッツポーズ。上げるのはここからだ。
「でももう今は、そうだった。そうでした、に変わりました。ちょっと前からそれが変わって来てて、今日は完全に過去形になったんですよ」
「…………え?」
だんだん俺の話の流れが読めてきたのか瑠衣先輩が顔を上げた。今きっとめずらしい真顔だろうと思ったらにやけてきた。
「だから俺瑠衣先輩の事が」
「ハーイ、ストップーー!!」
ガバッとお腹の手が俺の口に蓋をした。もう俺はおかしくて笑うのを我慢することもできない。
声を立てて笑い出した俺に瑠衣先輩がため息をつくが見なくてもその顔が笑っているのが分かるんだ。
「まさか、からかわれるトハネ……」
「話の順序でからかってはいますけど、話の内容はからかってませんよ」
「ネエー、男を立てるべきでしょソコは」
「俺も男なんですよこれが」
ふざけ出した俺達はなんだかよくわからない笑いがこみ上げて来て肩を震わせて笑い始める。
ようやく笑い疲れてぐったりと身体を預けてきた瑠衣先輩が耳元で囁く。どんなお菓子よりも甘い声で。
「こうやってオレの中にいてよ。一生」
「いいですよ」
「ええ、その返事可愛くないー」
「可愛いは唯に求めてください」
顔も見えないのに全部本心なのが分かって、照れ臭くて。いっそのことと思い、体を回転させて瑠衣先輩と向き合った。きょとんとしたのも一瞬、賢い獣みたいな顔で綺麗な顔が笑った。
「本当にいいの?食べられるよ」
「ちゃんとほしいが言えるまであげませんよ。それまではお兄ちゃんをやめません」
「ふーん……じゃあ」
突然肩に手が伸び俺のジャケットを脱がすとシャツのボタンに手をかけた。あまりにも速いその動作に目をチカチカさせると突然首に痛みが走る。
「いっ」
「美味しいから、チョウダイ?」
「……味見済みってずるくないですか」
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