sweet!!

仔犬

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care!!!

8

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ああ、でももう怖く無い。
一回サクラ姉さんのことでブチ切れたからだろうか。それにあの時の銃はもう無いからか。

同じ気持ちなのか秋が呆れた声を出して優がそれに続く。

「なんでお前らこんな事してんだよ」

「そうだよ、改心したんじゃないの?あんだけ先輩達にやられたんだから反省しなよ」

「相変わらず派手な頭だなぁ」

「そっちは相変わらず目につくムカつくやろうだなお前らはぁ……その頭に一生花刺していきてんだろ、バカみてえに呑気に生きてろよ」

頭にお花咲かせられるなら咲かしたいけどなおれ。
平和じゃんね。

勝手に話しているうちにだんだんイライラゲージが溜まってきたのか、ドア近くのゴミ箱のような箱をヒカルが蹴り上げた。スウェットさんにクリーンヒットしてしまい、そのままぐったりと倒れてしまう。


「ちょ!ひどい!」

「黙れ!だいたいこっちはお前らのせいで好き勝手出来なくなるし、親父達は人が変わったみてえに腑抜けてるしよお!!」

それはつまりサクラ姉さんの成果、という事だろうか。流石ですサクラ姉さん。この3人の環境は確実に変わったということになる。

それでも怒りに任せてガンっと蹴られた壁がもろくなっていたのかバリンと崩れ落ちた。スウェットさんはもう反応しなかったので完全に気を失っている。

あとで一緒に助けてあげるからね。
少し寝てた方が気が楽かもしれないし。


相変わらずの短気さはきっと前より自由が効かなくなって余計に酷くなったのだろう。いまだこんな大きい態度を取っていたのかと思うと性格がいかに治る事が難しいか思い知る。

不機嫌だと思っていればすぐに馬鹿にしたように笑い出す情緒不安定さもお墨付き。


「にしてもいい気味だな、お前ら捕まえて金が出るなんてよお」

「お金って困ってなくない?」


だってマのつくお仕事のお父さんなんだから困ったりしてないはずだ。制服は相変わらずボロボロだけど、前に身につけているアクセやバックがブランドものだったのを覚えている。

おれの言葉は癇に障ったらしいギャンギャンと吠え出した。

「お前らのせいで小遣いも、カードまで止められたわ!償って捕まってろ!」

「はあ?」

お小遣い?カード?
つまりお父さん方が、改心して息子を甘やかしすぎていることに気づいたのだろう。そんなの、解決策は出ている。

「働けばいいのに」


オレンジにヒカルくんが片眉を上げるコイツ何言ってんだとでもいいだけだが。こちらの台詞である。

「はあ?オレらを誰だと思ってんだ。一般市民のようにセコセコ働くわけねぇだろうがよお?!」

「……セコセコ人捕まえるよりいいんじゃん」

あと誰かはよくわかんない。
優の言葉におれはブンブン頷いたのに、それでも彼らはことの愚かさに気付かない。

「うるせえそんなだせえ事誰がするか!俺らあと何人か捕まえてくるから、コイツら見張っとけよ、堂本!!!楽しい野球が出来なくなっても知らねえぞ」


マサトの言葉に続いて最後にリュウジが不気味に笑った。


「お前ら兄弟のためだ」


不穏な空気をそのままに出て行こうとする3人に声をかける。


「ねえ、待って今回おれらを捕まえたい人の事知ってる?」

「はあ?しらねぇよ俺らは金もらえりゃなんでもいい。随分羽振りがいいっことは確かだしな!」

なるほど、今回はあまり関係ない立ち位置なのか。

げらげら笑いながら何でそんなことを聞くのか不機嫌そうに眉を上げたが、すぐに興味を失ってあーだこーだ言い合いながら出て行った。
またもや乱暴に閉められたドアの向こうから、あの3人の笑い声と階段を降りていくような音がする。



残されたおれと秋と優は数秒だけ黙って、堂本兄弟を見た。なんてわかりやすい顔、これは怒りだ。

「何が俺らのためだよ……」

静かな空間に響いた言葉は誰かが拾うよりも早く地面に染み込むように重く感じた。


「野球のお金、とられたんだ」

「…………冬にある合宿の金。兄ちゃん部長だから」

「まじ?凄いじゃん!」

ああなるほど、それでバット持ってたんだ。
しかも野球部って坊主じゃないところもあるんだね?


「集金して振込まで俺の仕事だった……その途中で奪われてあっという間に」


使われたんだ。

 
「でも何で一緒に?」

「すぐに金集める方法を知ってるって……」


それでわざわざお小遣い稼ぎに手を組ませたと。
嫌なやつう。


「ま、お金は大丈夫だから」

「その大丈夫ってのは……」


大丈夫なものは大丈夫なのでにっと笑えば紅は押し黙った。


「ありがとう……」


兄弟の声が被る。
感情がぶれた時だけ似る兄弟の目が遠慮がちに動いた。


「なんでここまで俺らに強力すんだよ……」

「んーー、人を見る目は自信があるから?」

「勘って大事だし?」

「気に入ったし?」


人を信じるって直感だ。
いいと思ったらやりたいし、助けたいと思ったらそうする。



「…………バカじゃねぇの」

「……全くだな」



ぶっきらぼうな物言いの兄弟はなんだか可愛く見えてきた。この2人態度がツンケンなだけでかなり話しやすい。優とはまた違うツンデレ兄弟。おそらくツン度合いは弟の方が強めだ。


「あ、でもみーちゃんには今度謝ってよね!」

「み、みーちゃん?」

「そう!カラオケの可愛い女の子!!」



数秒止まって、あ、と呟いたのは紅だった。
すぐに眉が下げる。


「悪かった」

「おれじゃななくてさ」

「……ああ、そうかそうだよな……分かった」



もう一度謝りそうになりながらも、それを堪えて紅は頷いた。
うんうん。いい子いい子。


「それにみーちゃん達に突っかかってきたのって制服の所為じゃないの?先輩達のチームが俺たちの高校に多いのは周知の事実だし。そのうちチームの人に当たりそうだし」

「ああ、そうだ……悪い」

「いや、もう俺らは大丈夫だし!な?」


優も秋もすっかりこの兄弟には打ち解け、ニッと笑う。



その時、機械音がなった。連続的になるその音は紅のポッケから通話を告げていた。

「はい……はい……分かりました」


すぐに通話を終えると紅が凛とした表情でおれを見る。


「先にお前らの番だってよ」


愁がポッケから見覚えのあるスマホを取り出す。
優の携帯のロックの番号は兄弟に教えた。


「やばくなったら開いてすぐの電話番号にかけてね」

「ああ」


その電話は最後の手段。
今回はおれたちだけで帰って、先輩達の手を借りないのが目標なのである。
先輩達にもあそこまで言ったのだから失敗する訳には行かない。いつもお世話になってるのだから。



「じゃあ、手筈通りに」

「おう」

「なんか、ドキドキしてきたね」


くすくす笑って最後はニヤリと。

さあ、男を見せる時だ。







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