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care!!!
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しおりを挟む所詮おれの挑発なんて小動物の噛みつきなんだろうな。
この男にしては珍しく数秒間が空いたものの、真顔のまま小さく口が動き見据えるように話し出した。
「…………その余裕、大方さっきの2人は隙みて戻ってくるんだろう。しかも、この俺の情報を聞き出そうってか」
「あ、すごーい!バレバレー!」
ちなみに今のはクラスにいるギャル系美人、エリナちゃんの真似である。エリナちゃんは小麦肌に細身のすらっとしたモデル体型で煌びやかなメイクがよく似合う可愛い女の子だ。明るく活発で人気者の彼女はきっと今日も爪の先まで完璧だろう。
「唯、トリップすんな」
「あれ飛んでた?」
「……今ので力抜けた」
秋の言葉にハッとしたおれに優が呆れ混じりのため息。おれも思わず出た言葉には自分でびっくりだ。こんな状況でそこまでばれてしまっては虚勢をはる必要もなくなった。
「あーあ、名前くらい聞き出せないかなって思ったんだけど」
「うまくいかないよなぁ」
「まあでもさすが唯って感じ」
秋と優も吹っ切れたようでいつもの様子を取り戻した。
おれたちの後ろでは捕らえられた数人が未だビクビクと震えている。あの人たちだけでも逃がしてくれないかな、この人おれたちに用があるみたいだし。
「えーと、あのー、あの人達だけでも逃がしてあげてくれませんか?エサっておれたちだけでは足りない感じですかね」
「…………いいぜ」
「え!」
ダメ元で話したつもりだったのに案外あっさりと返事をもらえてしまう。本当に用済みなのだろうか。
「え、なに。突然優しいよ?!」
ぐるんっと思わず横を向くと秋がにやけたような力の抜けたような顔でノリだした。
「じゃあついでに名前も教えてくれちゃったり」
「流石にそれは……」
優がいやいやそんな甘くないでしょとおれと秋を交互に見たがその答えもまた早いものだった。
「榊李恩」
「あ、これはどうも」
思わずお礼を言ってしまうほどすんなりと情報が手に入ってしまった。どうしよう、どこまで聞いてもいいのか。もう殴られてもどこかに連れていかれたとしてもしょうがない、そんな風に腹をくくって、もういつも通り。
「はい!なぜおれたちは捕まっているのでしょうか!」
「さあな」
「くうう突然の突き放し!」
「ぶは!あははは!」
秋が大笑いで優は眉を下げて変な顔をした。
後ろの人たちはこの状況について行けず、逃げていいのか息を殺すべきなのか迷っているようだ。深入りは突き放されたとしても男に二言はないだろう。
「じゃあせめてあの人たち早く解放してくださいよ」
不満げなおれをじっと見つめると、おれたちの横を通り過ぎて男の人たちの縄をどこからだしたのかナイフで切り出した。一瞬傷つけるのではと怖かったが慣れた手つきにより杞憂で終わる。この人、約束は守るらしい。
「おら、行けよ」
「は、はい!」
顎でドアを示した男に捕まった人たちは一斉に駆け出していく。ああそんなに走ったらこけちゃうよスウェットのお兄さん。いつのまにか起きていたらしい。
振り向いた榊李恩はなんの感情なのかも分からない顔でこう言った。
「これで満足か」
「うん、ありがとう」
お礼を言ったおれを見定めるように顎に手を当て眺める。続いて優、秋とその視線が流れていく。そう言えば最初から何かを探るように見る人だった。
「…………お前たちがねぇ、多少目は引くがそうでもないな」
「え、なんかすごい失礼。てゆかそもそも目を引くの?」
「唯だけじゃない?」
「唯だけだろ」
「ハイハイいつものですねハイハイ」
軽口を叩き会うおれたちを榊さんはじっと見つめている。視線も外さなければ、感情も読めない。優がそれに気づくと首を傾げた。
「おれたちを探してたんですか?」
「探してねぇよ別に、当たりがあれば良いなとは思ってたけどな」
「当たり…………先輩達引きずり出す?」
秋が静かに確信に迫る。
「どうだろうな」
話に応じるようにはなったがどこまでも掴めない。赤羽さんとはまた違う含み笑いは目が動かない口元だけの笑みだ。
「まあ、もちろん。噂は聞いてるさ」
薄暗い中で榊さんはゆっくり歩き出した。
「あの獅之宮、天音舵に豹原までが揃ってお気に入りを連れてるってな……気まぐれなあいつらが大々的に見せびらかしてるのがこんな抜けた奴らだとは思わなかった。あいつらのことだ、遊ばれてんだろお前ら」
馬鹿にしたような、嘲笑うような。
お気に入りと言う言葉に含んだ棘は、この人にとっては暴力のようなものだろうか。
でも、おれたちには刺さらない。秋がしっかりと目を見つめて声を出した。
「誰の物かってさっき聞いてたけど、やっぱり俺らは俺らの物ですよ。誰のものでもない」
「そうかよ……その程度の間な訳だ」
どうせとつきそうな言葉に引っかかるものがある。
何をこの人は望んでいるんだろう。
おれたちは、おれの気持ちは秋と優と同じだ。おれはおれの物。誰のものでもない。
同じように優が続く、今度は彼も笑ってみせた。
「そう、自分の物は自分の物。その上で全部あげたいかな」
「矛盾してるな……」
「だって全部渡したらあの人そのものになってしまうから。あの人を……暮刃先輩を見るのは俺は俺という意識をしっかり持った俺じゃなきゃ嫌だ」
優の言葉が響く、部屋にも頭にも全部。
身体に馴染むように全てが頷ける。
だから。
「自分の全てを肯定して存在させて、その上で共にいたい。おれにとって氷怜先輩はそんな人だし、そうありたい関係だよ」
今日何度そう思った事か。
ああ、氷怜先輩に会いたいな。
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