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christmas!
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しおりを挟む事の始まりは赤羽さんの情報提供から生まれたサプライズだ。
実は、今日先輩達にはバイトだと伝えてある。
とは言ってもおれはもともと腕のせいで休みだったけどさ。
まだ2人だけがバイトの時に遊びに行ったら春さんが3人とも休んでいいよって言ってくれたのだ。
その言葉、ずっと休んでるおれにも向けた気兼ねなく楽しんでおいでなのだから優しさが止まらない。
ちなみに先輩達におれは母さんが1人だからと言う理由を言ってみた。もちろん、あの椎名は息子のクリスマス計画を泊まってきて良いよとのお墨付きで送り出してくれたが。
ちなみにそんな椎名には行きたがっていた遊園地のチケットと花束とケーキとあとアクセサリーと……とにかくたくさんのものを椎名がいない時においてきた。お礼を物で体現すると毎年そんな感じになる。
そんな暖かさを胸に場所は変わって、高級マンションが立ち並ぶ土地へ。その近くの駅周辺が商業施設で栄えているのでプレゼント選びにはもってこいなのだ。大人向けから可愛いものまでとにかく何でもある。
「さて、着きましたよ」
今回共犯者となる赤羽さんはどこか嬉しそうにドアを開けた。
今日も変わらず高級車を乗り回す赤羽さんだけど、珍しく短い黒い髪を今日は下ろして赤のオーバーニットにジーンズと休日のカジュアルな雰囲気になっている。
大きな通りに立ち並ぶ数々のブランド店。そこになんの違和感もない赤羽さんがエスコートするように前を歩く。心なしか背中越しの声も嬉しそうだ。
「それに24日はいつもクラブでパーティが開催されているのであの人達はもちろん、イノさん達もきますしアゲハさん達や、当然サクラさんも居ます」
「おお、じゃあそこもプレゼント買わないと。あ、因みに女性陣へのプレゼントはもう完璧なので」
「どこかの男が言うセリフより安心感がありますね……」
拳を握ったおれに赤羽さんが静かにそう言った。この手に関してはおれも自信あるので、大人しく照れておこう。
そんなことには慣れきった優は持って帰れるかなとため息、秋は静かに呟いた。
「クラブでクリスマスパーティかあ……」
「そうです、かなり広く集客してますしその勢いのまま年越しイベントに持っていきます」
「すご?!」
「ああ、もちろん入れ替わり立ち替わりでね。ニューイヤーまでのカウントダウンイベントです」
おれよりも二倍以上は頭の早い優は、驚くよりも違うところが気になったようだ。
「先輩達ってあんまり他人と接触しないけどよくクラブの表にも顔だしてますよね。その辺あの人達、結構わがままなのによく顔だしてるなって思ってて……」
「あはは!優さんに言われては形無しですね。まあ、あれは宣伝効果で売り上げに繋げてますからね。仕事の一環だ」
「なるほど」
何がなるほどなのかと聞いたら、あそこはそもそも先輩達とサクラ姉さんでがやりくりしてるクラブなのだ。つまり先輩達はそこの看板も背負っているのでビジネスのためでもあると。
「だから先輩達の自由に使えるんだ、あそこ」
「んね、すげえよなあ」
たしかに先輩達目当てで来てる人が、おれと仲良くなった人の中にも居たなと思い出す。そりゃあれほどカッコいい人達に会いたくなるのは当然だ。
人が集客につながるって単純に凄いことだよな。
だが優は少し困った顔をした。
「そうなるとあの人達プレゼント死ぬほどもらうだろうね」
「ああ……」
そもそも、そんな事は当然なのだけどいかんせん近くに居すぎなせいか分からなくなる時がある。
優の言葉におれたちが納得の行くプレゼントを見つけるのに本当に本当にほんとーーーに時間がかかった。
それに他の人達はぽんぽん決まっていったが数が多くてそれはそれで大変だった。いつのまにか増えた交友関係がプレゼントの数が物語っている。
荷物持ちまでしてくれた赤羽さんは時折、誰が何を好きかの情報まで教えてくれる素晴らしさ。さらに赤羽さんオススメのお店を何軒か回ってもらい、それから自分たちで予め決めていた物も買いにあちこち車を出してもらった。
「んーーーー!これだってのがなーーーーー」
「さすがに疲れた……」
それでも先輩達のプレゼントは最後の最後まで決まらなくて、ベンチにぐったりと座った秋と優。
「ほら、飲んでください」
「わーい!」
微塵も疲れていない赤羽さんはにこにこしながらキッチンカーで売っていたタピオカドリンクを買ってくれた。まだ体力が残っていたおれはタピオカを吸い上げながら未入店のお店を目で探していく。
目に移ったのはレンガ調で作られた壁にちいさな赤い旗が斜めに刺さったお店。まだあそこに行ってない。
「唯?」
「ちらっとみてくる」
「おー……」
同じく抹茶のタピオカを飲みながら秋が気を付けてと手を振った。
品の良いシンプルなものが揃ったそのお店に入るといらっしゃいませと一定のトーンで声がかけられる。おれの他には誰も見ている人がいない店内。
その一点に吸い込まれるように足が動いた。
遠くからでもおれの目には輝いて見えたのだ。
思わずダッシュで3人の元に戻り、まとめて引っ張ってお店の中へ。何度見てもお上品に笑う店員のお姉さんがお帰りなさいと微笑む。
条件反射で微笑み返しながらそのケースを指差した。
「これ、ねえこれ……どう?」
「……いい、けど」
「俺たちがあげて良いの……?」
眺めるガラスケースの中に見つけたそれは、おれたち3人の好みも一致。恐らくセンス的には先輩達も頷いてくれる。はず。でもこれは……と心配になったところで赤羽さんがにこやかに言う。
「そこで渋るような男は握りつぶしますから」
どこをとは聞けなかったけどなんだか笑えてきて不安は無くなった。実はちょくちょく先輩達にはいろんなものをあげていたけど、こうしてちゃんとプレゼントするのは初めてだ。
どんなに大切に扱われていても、結局おれたちだって男。
「これと、これと、これでお願いします」
「はい、少々お待ちください」
お姉さんがにこやかに微笑む。プレゼント用に包まれていくのを見ていたら珍しく赤羽さんが自分のことを話し始めた。
「俺が何故あの人達のそばにいるか分かりますか?」
きょとんとするおれたちは一瞬目を合わせてそれぞれ答えを出した。
「生き方がかっこいい!」
「見えない世界を見せてくれる?」
手を挙げたおれと首を傾げた秋にうんうんと頷く赤羽さん。
優だけが迷うように答えた。
「…………同じものを感じたから?」
多分、その答えが合ってたのかもしれない。一瞬だけ笑顔の目が動いた。動揺ではなく、反応したと言う方が近い。
「半分正解です。同じなのに、全く違うから」
細かいことは分からないけど、初めて赤羽さんの心と表情が一致して見えた。きっとそれが1番の核なんだな。
「まあ、要約するとあの人達は崇高なんですよ」
「それはもう重々承知ですって」
冗談半分を混ぜながら、いつもの爽やかさに戻った赤羽さんが完成したプレゼントを受け取ってくれる。
外に出ると一段と寒さも強くなっていた。暗くなる前には先輩達に会いに行くと決めていたにもかかわらず、すっかり日が暮れている。
ようやくクラブについた頃には体力が半分以上は削れていた。到着して赤羽さんが車のドアを開くと大量のお買い物品に追いやられシートの端に座るおれたちを見て楽しそうに笑った。
「改めて見ると……買いましたねえ」
「今日会う予定の全員分買いましたから」
「軍資金はおれたち3人分とかなり潤沢でした」
バイトばっかりというかバイトしかしてこなかったおれたち、趣味にお金はかけるが正直貯金の方が多かった。今年は終盤になってからというものかなりの人と出会ってお世話になったのでそのお礼も兼ねて。
「そう言えばあの兄弟から貰ったお金はどうしたんですか?」
軍資金で思い出したのか、元は榊からあの兄弟に支払われた報酬金の話だ。2人から渡されたもののおれたちは困って、結局1番納得いく方法で使用した。
「この前、保護犬活動をボランティアでやっている団体の募金箱に丸っと」
「うーん……らしいですねぇ」
俺なら自分のために使いますけど、赤羽さんはそう言いながら笑ってさあどうぞとおれたちを外に出した。
あの榊さんはまだ認められないけど、せこいことを言うような人間には見えなかったし使っても良かったのかもしれない。でもプレゼントは自分のお金の方が気分がいい。
「あ、春さんとバイトメンバーに……」
「カフェには裏から入ってこっそり置いてこうよ」
「それいいな」
さらに予定を入れるおれたちに赤羽さんがストっプをかけた。珍しく神妙な顔で。
「だったらカフェに人を出すので……少しは自分たちの時間を使った方がいい」
キラリ光る白い歯でそう言うが優しさだけではない事は流石のおれたちも理解している。
「赤羽さん……早くサンタするところ見たいんですね」
「あ、バレましたね」
ははは!と笑った赤羽さんのドアを閉めようとする腕に秋がすかさずそれを付けた。珍しく驚いた赤羽さんが言葉を発する前に秋の声が響く。
「そんな赤羽さんへ一足先に」
「サンタからのプレゼントです」
リボンがついたそれはブレスレットだ。今回チームの人にはブレスレットを買ってみた。って言ってもみんなバラバラのデザインにブランドなので統一感はない。赤羽さんには飾りはないけど二重に重なる細めのシルバーブレス。骨ばった形のいい腕に思った通りよく似合う。
驚いた表情の赤羽さんが見れたのでおれ達は得意げだ。
「いつのまに……」
「それ、昨日おれが優に言われて買いに行ったんですよ。だからそれは優セレクト」
「今日赤羽さんの目を盗んで買うのは厳しそうだったんで唯に頼みました」
ブレスレットに直接巻かれたリボンを解くと、ゆっくりと腕につけて眺めポツリと呟いた。
「……サンタは存在を知った日にその正体を突き止めたんですが」
「うわ、赤羽さんらしい」
「こう真正面からくるサンタも良いものですね」
嬉しそうに笑った赤羽さんが少し幼く見えた。
「ありがとうございます」
「どういたしまして!」
「俺からは皆さんの家に送っておいたのでお楽しみに」
そう言って軽やかにリボンに口付けた赤羽さん。そこまで予想してなかったおれたちは驚愕だ。赤羽さんがリボンにキス。どこから出したのか今までの爽やかを隠した色気。
呆然とするおれたちをよそに次のステップへと進む爽やかな笑顔がいつもより眩しい。
ほんと、侮れない人だなぁ。
「皆さんお待ちかねですよ」
「行きますか」
サンタの仕事はこれからだ。
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