sweet!!

仔犬

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「椎名はやっぱり春さんと初詣~?」

「内緒~」

そんなクネクネしながら内緒って言われたところで、言ってるようなものなんだけど母さんよ。でも嬉しそうだし、大人の恋に口出しは禁止だ。

話をしながら最後の仕上げ、鏡を前にワックスを髪につける。ピンクの髪の毛も少し見慣れて、今日はもともとゆる巻きのこの髪を活かしてパーマ風ヘアにしてみた。ウルフでもゆるく巻くと可愛いんだよねぇ。

用意していたコートを羽織れば一瞬であったかくなる。氷怜先輩が買ってくれたやつ着るだけでキュンとするんだけど魔法ですか?
玄関に向かうと椎名もついてきてお見送りしてくれるらしく、視線を背中に感じながらおれの髪を撫でる感触があった。

「綺麗に染まったわねぇ。可愛い可愛い」

「でしょー。母さんは今日なにするの?」

「今日はまったりするわ。あとは両隣にご挨拶できれば行こうかしら」

「いいねいいね」

うんうんと頷きながらブーツを履く。立ち上がるとおれそっくりな目がかち合った。珍しくその瞳に迷いが見えておれは少しだけ待ってみる。


「ねぇ唯斗は本当に……」

「んー?」


珍しく煮え切らない言い方に、なんとなく春さんのことだろうかと頭をよぎる。踵を鳴らして靴を微調整、向き直ったおれは手を後ろにして母さんに話しかける。

「おれは椎名が幸せならなんでも良いよん。だから今年も椎名らしく居てよ。遊園地もさ、行ってきたらいいじゃん春さんと」

「え?」

クリスマスにあげたチケット。
使う人がいないのならおれと、と思ったけど息子からもらった遊園地のチケットって1番都合よく誘えるアイテムなんだよな。我ながらナイスチョイス。

それなのに、椎名はキョトンとしたままおれの名前を口にする。

「唯斗と行くけど」

「あれーここは春さんじゃないのかー」

うーん、まだまだ子離れは難しいのだろうか。悪い気がしないのはおれも椎名に懐きすぎって問題もあるな。親離れするのはおれだろうかと言う前に母さんがものすごい勢いで話し出す。

「だってだって!いつ反抗期が来て誰がくそババアと一緒に出かけるか!!なんて言われたら立ち直れないもの。だから行ってくれるうちに行っておかないと!」

「ちょっとー!おれそんな親不孝には絶対なりませんけど?!」

こちらとしては大ブーイングだ。そんな汚い言葉生まれてこの方使ったことがないというのに。もちろん椎名はそんな事知っている。結局意中の男性の名を口にした。

「それに、春さんは急かしたりしないわ」

「しないだろうねぇ」

絶対に。
そもそも紹介する時点で母さんと合わなそうな人を選ぶはずもない。おれが大好きな春さんだからこそ大歓迎なのだ。そんなおれを知っている母さんが少なからず悩んでいるのは、それほどの大きな事なのだと思う。

すぐに割り切れるはずはない。
でもさ、そんなに難しく考えなくてもいいのにね。

「おれはね、父さんと母さんを幸せにする同盟組んでんの!だからさ、楽しく自由に幸せでいてよ」

母さんの考えは否定しないが、背中を押すくらい許されるだろう。ねえ、父さん。

おれが自信たっぷりに言い終わると、ついに椎名は笑い出す。おれの頭をポンポンと撫でいつもの口ぶりで話し出した。


「うちの息子ったら可愛いだけじゃなくて良い男で最高よねぇ」

「あんまりそう言う事ばっかり言ってると流石に引かれるよ……」

「良いわよ別に。息子を溺愛して何が悪いの、ほら行ってきなさい遅れるわよー!」

「椎名が話し始めたんでしょー」

「ママでしょ!」


ぎゃーぎゃー言いながらドアを開けると北風が髪をなびかせた。寒くてフードをすっぽり被りながら最後に振り返ると、椎名がいってらっしゃいと手を振っている。いつも一言余計な母さんは口元を隠しながらドアの隙間から悪戯に微笑む。


「泊まってきても良いんだからね?」

「そうなったらメールするけど、にやにやしない!」





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