sweet!!

仔犬

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secret!

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「ダカレテ、ミナイ?」



「うん」

にっこり。
あまりに穏やかに笑うのでおれまでつられてしまったが頭はパニックだった。

理解は出来るのに信じられなくて、頭の中で跳ね返るように言葉が反復する。そうこうしているうちに今度は宝物でも扱うようにふわりと持ち上げられてしまう。

「いいねぇ、可愛いなぁ……正直女装なんてしなくても可愛いから良いのにって思ってたんだけど、いい部分をそのまま残して女の子に変身するんだもん。あまり好きな言い方じゃないけど……キたよ」

「ど…どこに?」

「え、言った方がいい?」

「あああ、やっぱりいいです!」

あ、そうなんですね。
念のために確認してみたけど、そう言うことなんですね。こんな直球で言われるのめちゃ恥ずかしい。

なぜならこう言う話をしてこなかったのだ。男同士で盛り上がるあのネタと言うものをおれは全くしない。経験は少なくないしむしろ多い方だと思うけど、おれの中でわざわざ話し合うものでもなかった。

しかもおれ、ほとんど女の子か秋と優といたし、チームの人もおれが見た限り一度もそんな話をしていない。だから必然的にそうならなかった。

「あ、あの」

おれの焦りを感じたのかきょとんとする胡蝶さん。

「この手の話、もしかして苦手?」

「いや、苦手というか流れがなかったというか」

「俺もしないけど唯には直球が分かりやすいかなって。だから、天国なら保証するよ?その先も、ね」

しかも胡蝶さんくらいのいい男の人に言われると破壊力が違うというか……て言うか親友2人はこの状況をどう見てるわけ。

「秋さん、優さん……?」

首をぐいっと回して親友に助けを求めようとしたらなんと言うことだろう。
秋はあーあって苦笑い。いや、あーあじゃないし。優なんておれのメイク道具を静かに片付け始めこちらも見ずに一言。

「頑張れ」

「なにを?!」

叫んだおれに優様は今日もクールに対応。耳に髪をかけると目だけをゆっくりとこちらに向ける。

「社会勉強。その鈍ちん改善を目指してまずは初級合格するまで俺たちは見守ってあげることにした」

「な、なにそれどうすれば合格なの……」

「自分のお尻は自分で拭くんだよ」

「なに、なに?!拭いてるよ?!」

「お、唯選手パニックで比喩表現すら理解できてません!」

「これは合格には程遠いですね」

「そこ!実況しないでーー!!」

秋も優も悪ノリすらし始める。なに、何なの?こんなに慌てるおれがおかしいの?
おれを見つめる胡蝶さんはご機嫌で、やっと下ろしてくれたと思ったら長い髪の毛をすくってキスされた。前に手の甲にされた時も驚いたけど今度は話しが違ってくる。そう言う目で見られていたのかと思うと固まってしまう。

「ま、どうせ断られると思うから代わりに一緒に写メ撮ってよ唯」

「んん?」

いつのまにか握っていたスマホを顔の前に出すと考える間もなく腰に手を置かれ抱き寄せられ、しかも頰に柔らかい感触が。パシャりと音がして胡蝶さんは満足そうに可愛いのが撮れたよと微笑む。

「え……いま」

「そしてこれを氷怜に送る」

「え?!」

「結果出ました!これはお仕置きコース確定ですね」

「今年も初級合格には至りませんでした。唯選手見事惨敗!」

「だから実況やめてー!」

顔があつい、こんなに度直球に言われたらそりゃもう意味は分かってる。
でもだってさ、こんなに分かりやすくそっち方面で誘われたことないからさ、似たようなこと言われてもふざけてるかそういう意味合いじゃないかのどっちかだったはず。
むしろ新鮮で思わず胡蝶さんに聞いてみた。

「なんで突然、胡蝶さんはそう思ったんですか?」

「……突然って」

何故かがっくりと脱力した胡蝶さん。
秋がすみませんと謝りながらおれを指さした。ダメだよ人に指向けちゃ。

「胡蝶さん、俺ら胡蝶さんを止めたりはしないんですけどこの平和の国の住人に少し警戒心と言うものを教えてあげて下さい~」

「神様にお願い、唯の事祈ればよかったかな?」

「言えてる」

秋と優がなんだか失礼な事を言っている。珍しく苦笑いの胡蝶さんが未だ腰にある腕を背中に回した。何なのか分からずきょとんとすると、さらに困ったように笑う。

「……その鈍さでスルーしてるけど俺と同じようなやつ唯の周りに死ぬほどいるよ。そうだねこの前クラブを見ただけでもかなりの数、もう少し気をつけた方が良い。俺も含めて狼なんてたくさんいるしそう言うのに女子も男子も関係な」

「サクちゃん大変なの、ルルもエリーも薫も星羅もインフルエンザで今日来れないって!!!」

なんだか驚愕の事実を胡蝶さんの口から聞いたのに部屋のドアがものすごい勢いで開いて壁にぶち当たったせいで抜けて行ってしまった。代わりに入ってきた美人さんがおれを見て驚愕する。

「唯、ちゃん……?」

「アゲハさん~」

アゲハさん何故か固まったまま動かない。おれは色々あって、もう何が何だか分からず、とりあえず手を振ってみた。だけどやっぱり反応がない。

「か……」

「か?」

「可愛いいいいいいい!!!!!」


悲鳴のような声が響きプルプルと腕を震わせている。泣きそうなほど嬉しそうに駆け寄ってきたアゲハさん。ああ、やっぱり女の子って癒される。元気な姿見るだけでほわってするもんなぁ、特に混乱した後だと余計に。

おれがのんびり考えている間にもアゲハさんはキラキラとした目で360°おれの周りを動いて鑑賞。
そんな中、こんなに喜んでくれてありがたいけど、実はパーティでサプライズの予定だったなぁとか、のんびり考える。でもパーティ中はお仕事であんまり話せない可能性もあるし、今でよかったのかも。

ものすごい勢いで写メを撮りながらアゲハさんがにこにこと話す。

「可愛い、可愛い~!やっぱり私の見立てに間違いなかったわ!メイクもさすが、可愛いなぁもうっ……あ、靴はこれ履いてねって言うか唯ちゃん美脚!つるすべ~!」

「あはは!くすぐったいですよ」

靴を履かせながらアゲハさんが足を撫でる。ヒールの高さに一瞬バランスをくずしたのにさりげなく身体を支えてくれた胡蝶さんはさすがだ。美脚はダイエットまで研究したおかげだろう。

「っていうかなんであなたが唯ちゃんの腰抱いてる訳……」

「可愛いし、抱きたいから」

「あああーーー!!!」

アゲハさんの前でなんて事を。
恥ずかしさで大声を出すも、胡蝶さんからおれを引き剥がしたアゲハさんはさらにびっくりする事を言い返した。

「可愛いのは当たり前だし、私だって抱きたいんですけど!?」

「アゲハさんなんて男らしい……」

「いや感動するとこじゃないんですよ唯さん」

「ああ神様、唯に警戒心をお与え下さい」

「そこ、神に祈らないで……」

なんだかもうぐったりしてきてソファに座ってみた。壁に激突して跳ね返り中途半端に開いたままのドアが見えたら、アゲハさんが入ってきた時の記憶が蘇る。

相変わらずのパワフルさとあと何か叫んでいたような……。

「ねぇ、アゲハ来てるの?!ルルもエリーも薫も星羅もインフルエンザで今日来れないって!!!」

「それだ!」

またもやドアが壁に激突しそしてサクラ姉さんが駆け込んできた。同じセリフを叫んでおれの姿を見てやはり同じように固まり、そのあとはご存知の通り。



「可愛いいいいいいい!!!!!」






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