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secret!
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しおりを挟む先輩達はどうしているだろうか、そしてこれは唯だけでなく俺も秋もお仕置きコースかもしれない。
胡蝶さんが唯を気に入っているのは分かりやすかったし、驚くことはなかった。
いやあんなに直接的な言い回しをする予想はつかないけど、あり得ないことでは無いよね。胡蝶さん、頭も良ければ勘も良さそうだし、唯に1番効果的な意識のさせ方だし。
気付かなかったら、期待する人は永遠に期待させてしまうような存在だからな唯って。
それは置いといて、一難さってまた一難。
「サクちゃんどうしよう……!今日のスケジュールは完全にプランニングしてるし、1人でもかけたら……」
ようやく唯への熱が落ち着き、すぐに大事な事を思い出したアゲハさんが青ざめる。今日のパーティのメンバーが4人とも出勤できないのだ。
サクラ姉さんはそんな彼女を見て上司としてふさわしい態度に戻っていた。
「やるしかないわ、話をすれば納得してくれる方もいるでしょう」
「もちろん、だけどどうしても空いた時間が……」
「あの」
こうなるともう、手伝わずにはいられない。いち早く手をあげた唯は微笑んで大丈夫ですよと青ざめるアゲハさんの手を優しく包む。
「お手伝いならいくらでもしますので」
あーあ、もうやる気だ。
呆れたのは唯にだけじゃなくて自分にも。自分の手の届く範囲で出来ることがあるならやる、その精神は秋も同じだ。
「アゲハさん、初めまして。こっちは野島秋裕と、俺坂下優夜です。俺たちも出来ることがあれば何でも言ってください」
「これでも体力とバイトで培った接客の経験はありますよ!」
俺と拳を握った秋に目を止めたアゲハさんは自分がほとんど初対面で取り乱してしまっている事に気付き眉を下げた。
「いきなり情けないところを見せてしまってごめんね……改めてアゲハよ。よろしく」
長い髪にシースルーバングの彼女はタイトなジーンズスタイルにピンヒール。フェイクファーのコートを見事に着こなして女優のように綺麗な人だった。垂れ目で優しげな目元。でもその目には強い意志を取り戻し始めていた。
「そしてありがとう、心強い。秋ちゃん、優ちゃん」
これが唯が尊敬して止まない女性の強さなわけだ。納得しちゃうよね。それにそんな素敵な女性の一大イベントの生誕祭なのだから尚更成功させてあげたい。
「私、お客様に連絡してくる。事前にお話しして調整して友達にも声をかけてみるわ」
「全員話せたら教えて頂戴。プランニング考え直すわ」
「サクちゃんありがとう!」
物凄い速さで連絡をしていくアゲハさん。
「でもこれじゃお手伝い出来ないので着替えてしまいますね、また今度希望があればいつでも着ますので」
「唯ちゃんありがとうね本当。ああ、せっかくこんな可愛いドレスを着てくれたのに…………待って、そうよドレスならあるわ」
「ん?」
唯が笑顔のまま首をかしげる。
その唯をがしっと掴み、そのまま今度は俺たちに視線を向けた。
「そして、ここに4人いる!」
「え?」
「あれ、手伝いってあの、裏方とか……」
「可愛くてお話が出来る子なんて簡単に捕まえられないのよ……一生のお願いよ。唯ちゃん、優ちゃん、秋ちゃん……」
強い眼差しに俺たちは微笑んだまま数秒だけ固まった。結局、女性の頼みを頷く事になるのは言われた瞬間に決まっていた。
ちなみにアゲハさんがちゃん付けをするのは、
決まってドレスを着せたい人につけるのだと知るのはまた別の話だ。
「待って!さりげなく4人って……アゲハ、まさかと思うけど俺も入ってるのかな?」
そんなことあり得ないと言いたげに胡蝶さんが手をあげた。そんな彼にアゲハさんは首を振る。
「やめてよ、たしかに胡蝶の顔は綺麗だけど、私可愛い子にしかドレス着せたくないから」
「ああ、良かった。俺だって自分のドレス姿はごめんだよ」
「あなたはノウハウが分かってるからこの子達を手助けしてあげて?」
「OK」
あからさまに安心した顔で胡蝶さんが言う。
あれ、でも胡蝶さんほど美人で、プロの人間で、しかも男性だって魅了できる人はこの場に置いて他にいないのではないか。
サポーターはより近くに、ボーイよりは同じ席につける人間が欲しいはず。俺は思わず唯の肩に手を置いた。
「唯の魔法は胡蝶さんにも有効だよね」
こう言うとき意外と顔に出てしまうのだ。
秋がお兄ちゃんのような顔で俺に向けて「けしかけたな」と目で訴えるから思わず口角が上がってしまう。でも確実に胡蝶さんは戦力になるのは本当だし。
それに俺は少し予想外な事が好きで、唯はいい笑顔で共犯者になってくれるのだから。
「おれ胡蝶さんを女の子に出来ますよ」
「え?」
「自信しかないです」
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