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secret!!
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しおりを挟む自分でも驚くほど、情けないというか子犬のような声が出て驚いた。でも完全にわんこだったな、犬を愛してやまないおれとしても高得点の泣き声。
だけどやっぱり沈黙は変わらないし、氷怜先輩は目も合わせてくれないし、秋は固まってるし瑠衣先輩は震えてるし……待った、どうして震えてるの。
「……ぶふっ」
突然噴きだした瑠衣先輩、堪えきれなくなったようにお腹を抑えて爆笑し始めた。秋は驚いて呆然とし、氷怜先輩に視線を戻したら口を押さえて震えている。
「氷怜先輩……?」
これはもしやと期待を込めて覗き込んだ。
「……くくっ」
「笑ってる!」
もうバンザイしてこの喜びを伝えたい。唯犬、飼い主から反応貰いました!しかも笑いを取るなんて出来た愛犬だと自分で自分を持ち上げる。
「唯ちんっ……可愛すぎ……アハハハハ!!!」
「唯……お前……」
秋が何故かうるうるした目で見つめてくる。口だけ動かして、助かったって?どういたしまして。よく分からないけど、瑠衣先輩ギャップ効果も相まって凄かったもんね。
「唯斗……ははっ」
「くうんって!!どっから声出したのーーアハハハ!」
「唯~お前が犬でよかったぁぁ」
秋くん大丈夫ですか、いくら完璧な泣き声でもおれ犬じゃないけど。だけど頭に大きな手がのってくしゃりと撫でられると気持ち良くてわんこみたいに目を閉じてしまう。
「ずるいわお前、ちゃんと反省してんのかよ」
「ひーの負けだね~」
「うるせえ」
「あーー良かったーー」
いつも通りの2人のやりとりに秋と一緒にもう脱力。こんなに緊張する事があっただろうか。犬検定1級くらいは合格したような気がする。
項垂れた秋が緊張の糸が切れたようでやっと瑠衣先輩に話し出す。
「瑠衣先輩まじで怖いし泣くかと思ったあ」
「だってーオレムカついてるもん」
瑠衣先輩が秋のスリットに手を入れてその太ももに噛み付いた。
「いっ……反省してます」
「ユルサナーイ」
「ええ……そんなぁ」
なんでこう言う時に秋は照れないのかいつも不思議なんだけど。おれは見てるだけなのに恥ずかしくて氷怜先輩の手で自分の目を隠したら小突かれた。
「ま、アッキーがあのモードに弱いってわかったからイイか~」
「うわ!あれワザとか!やっぱりモデルモードなんですか?心臓に悪いんですよぉぉ」
泣きついた秋に瑠衣先輩が一瞬考えるそぶりを見せると瞬時に雰囲気を変えた。秋がピシッと固まって結局覗いていたおれまで固まった。
あの瑠衣先輩が微笑んだ。
暮刃先輩とはまた違う微笑みは、目の縁まで顔の輪郭までなぞりたくなるそんな笑顔。この人がどれだけ綺麗か証明されているようだ。
「だって、堕とすつもりでやってるから」
秋が怖がっていたのはきっとこれだ。
見つめたら見つめるほど抜け出せなくなりそうで全部さらけ出してしまいそうになる。その瞳におれすら恥ずかしくなるなら向けられた秋はどうなる。
「瑠衣、まだ子犬には早えよ」
「ありゃりゃ固まっちった」
そりゃそうだ、そんな色気に耐えるスキルまだありません!おれは思わず氷怜先輩に隠れると喉で笑いながら頬を撫でてくれた。優しい瞳に吸い込まれそうで、腕を伸ばす。
その時、ガンっと開いたドアに思わず身体がびくついたが、そのドアに立っている暮刃先輩と抱きしめられているぐったりとした親友を見てすぐに駆け寄った。
「優?」
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