267 / 378
word!!
1
しおりを挟む「それで俺様が呼び出された訳かー」
「神様仏様柚様~!」
唯が策を思いついた、と言うのでバイトを終えてダンススタジオに行ってみたら柚さんがいた。先輩のクラブの専属のカメラマンであるこの人とはわりと最近出会ったばかりだ。
「今よりも注目度をあげたい、ね」
いつも上がっている口角。
黒髪は目が隠れるくらい長いけど、さすがあのクラブの人間、やっぱり整った顔だ。しかも羨ましくなる細さで密かに目指してると言ったら暮刃先輩が心底やめて欲しそうな顔をして必死にもう十分細いから、ね?と諭すのが俺的にツボだった。
そこまで考えると今このギクシャクした状況を余計に感じてしまい、すぐにその思い出は仕舞い込む。今はとにかく目の前のことを。
「もちろん俺たちも被写体全力でやりますが、今回は柚さんの力を借りてしまうどころか全面的にその腕を使ってしまうと言うか……」
「俺興味ある人間しか撮らないから別に今までと変わんなくね?むしろラッキー!」
そう言いながら既に写真を撮り始めている柚さんはいつでもどこでもカメラを持っていて、その写真にはものすごい魅力が詰まる。今アカウントのフォロワーが伸びているのも紫苑さんとこの人のおかげだ。
今回、柚さんの力を借りて今までよりもアカウントに力を入れる。そしてちょっと有名な人、ではなく完全に顔を覚えてもらい、下手に周りもちょっかいが出せなくなると言う唯らしい考えだ。
「おれよく、人が沢山いる場所にいるからいつも話しかけられなくて……って言われるからさぁそういう人は自分からこんにちはってしにいくけど、逆手にとれば危ない人達も注目度が高いから大っぴらに手が出せなくなるでしょ?」
「人気が定着すれば少し安心なとこに行けるかもな」
秋は同意して何もしないより何かした方が良いと賛成だ。俺も賛成ではあるけどいかにも目立つ事に些かのハードルがある。服だけは目立ってもいいけど私生活そんなに目立ちたい欲は無くて。唯がいるとちょうど隠れてたような気もするけど、今回顔もしっかり載せていく。
「今まで横顔とか、首から下が多かったからなぁ」
「でも雑誌の時は顔乗ってたよ?」
「趣味って思ってたから、今回の心持ちの問題」
またこう言うとこで少し悩むのが俺だな。やる事は決めてるけど、後は自分で背中を押すだけだ。
「俺としてはマジで本気で被写体してくれんならサイコーだわ!いいんじゃ無いの?あの人達もそんな感じなんだから同じ場所で物事見れんじゃん、少なからず変わることもあるでしょ。てかさー」
嵐のように話すと床に座った彼はニヤリと笑う。
「暮刃さんと喧嘩とか、やるねぇ」
「楽しそうな顔……」
「だってぜっーーーたいそんな面倒な事しないからあの人」
「まあ俺もこんなに他人とギクシャクしたの久しぶりですよ……はあ」
同じようにしゃがんで膝の上で項垂れたらそんな姿すらカメラに収めていくので、横目で見ながら聞いてみた。
「……踊ってもないのにいい写真撮れます?」
「いい色してる奴は何しても良いよ」
シャッターの音に加えてダンスミュージックが流れ始めた。スピーカーの前で秋と唯が選曲を始める。
「これ、最近のお気に入り」
「秋は縦ノリ好きだよねぇ!あ、柚さーん踊ってていいんですか?」
「お好きにどーぞ?」
2人はストレッチを兼ねた軽いステップでけらけら踊り出す。柚さんは自然体でいいと言うので、秋も唯もふざけて変なポーズを合間で取ったり本当にいつも通り遊んでいるだけだ。
その光景を見つめる俺に柚さんにしてはおとなしい声がする。
「良いじゃん。ぶつかってその作用でイイモンができる。それが綺麗な色になるからさ」
ファインダーを覗く横顔は真っ直ぐその世界を見つめている。
彼の世界は色で構成されて見え、それが1番光る瞬間をカメラに収めることでいい写真が撮れるらしい。
俺にはわからない感性だけど、カメラに入り込む柚さんを見てると納得するほど、細い指がシャッターを切るタイミングは外れないのだから。
「柚さん、喧嘩した事あります?」
「ない!喧嘩すんなら撮る!」
やっぱり。
カメラから視線を外すと途端に子供のような笑顔になるこの人は写真以外に興味ないからまず喧嘩にならなそう。明快で心地がいい人だ。この人を少しばかり見習うべきなのかもしれない。
今回のは俺が勝手に悩み始めた現状では解決しない問題。だったら解決するように持っていくしか無い、あんまり目立つのは得意じゃ無いけど唯と秋が親友の時点で穏やかな日々なんてつまらないとさえ感じてしまうはず。
パンッと両手を頰を叩くと少し目が覚めた。
「どしたの、優」
俺にしては珍しい気合の入れ方に親友が呆気に取られている。それがちょっと面白くて笑ってしまった。
「気合入ったから、宜しく」
23
あなたにおすすめの小説
とあるΩ達の試練
如月圭
BL
吉住クレハは私立成城学園に通う中学三年生の男のオメガだった。同じ学園に通う男のオメガの月城真とは、転校して初めてできた同じオメガの友達だった。そんな真には、番のアルファが居て、クレハはうらやましいと思う。しかし、ベータの女子にとある事で目をつけられてしまい……。
この話はフィクションです。更新は、不定期です。
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
百合豚、男子校に入る。
揺
BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。
母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは――
男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。
この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。
それでも眞辺は決意する。
生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。
立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。
さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。
百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる