sweet!!

仔犬

文字の大きさ
268 / 378
word!!

2

しおりを挟む

「いちにーさん、で右左右にステップ」

「こんなのやってたんだ」

「速過ぎてよく見えないんだよなぁ」


秋が好きなダンサーの動画を見ながら真似したり、難しい踊りを踊る秋を鑑賞したり意外とすぐに時間は過ぎる。柚さんはちゃちゃをいれながらも撮ることをやめなかった。

「よくそんな細かいこと遊びでやれんな!ムリムリ!足がもつれちゃってウガーってなるわ」

「柚さん運動出来なそうですもんね」

「言うねえ!」

唯の言葉も軽快に笑い飛ばす。
体型からは考えられない程パワフルに話し続けるのでスタジオ内でもよく響く。髪の間から目が合うとにっと笑われた。


「そうなんだよなぁ、喧嘩もできない俺をあの人達意外と受け入れてくちゃって、好きに写真も撮ってたら構ってくれるんだからギャップ萌がやばいんだわ」

「先輩、チームの人大好きですよねぇ」

「でもまあ、暮刃さんと瑠衣さんは飄々としてるから正直よくわからない色してる時もあったけど、久しぶりに会ったら随分見やすくなってて驚いたわ。これ、お前らが来てからな」

「見やすい……」

「普通に言うなら、分かりやすい?」


最初から分かりやすかった。
と言う俺たちの意見はやはり一般的じゃないらしい。


「ほら、柚さんがこうですからね」


柚さんと入れ違いで外に出ていた赤羽さんがいつのまにか戻ってきていた。相変わらず気配がない。

「遅かったですね。やっぱり用事あったんじゃ」

「いや、別件です」

それってつまり用事ですよね。そう突っ込む前に爽やかに笑った赤羽さんに何故か柚さんが不満げにカメラを向けた。


「お前の爽やか笑顔は撮ってもつまんねぇんだよなぁ」

「失礼ですね、柚さん」


そう言う割にたいして気にしてもいない様子。
彼は確かに厚い壁があるなと俺も最初は思ったけど、壁と言うより一歩引いて周りを見て、それを楽しんでいる事を最近確信した。


「赤羽さん人間味ありますけどね。いつも楽しんでるし」

唯も秋も賛同らしい。
はいはいと手をあげる。

「今日もさ、カフェ来て赤羽さんコーヒー頼んでくれて飲んだ時ふって優しい顔したよ。春さんの淹れたコーヒー美味しいからね~」

「この前連れ去られた時も焦ってたらしいし?」

「スーグ面白そうな顔するし」

「……マジ?」


思わずまたシャッターを切る柚さんに赤羽さんは変わらぬ笑顔。


「俺も人から生まれましたから」

「お前は色まで隠すんだ。何の色もないしつまんない!」

「鍛えればどうとでもなりますよ」

「俺が見えてるだけのもんどーやって鍛えるんだよこえーよ!」


この2人面白いかもしれない。柚さんゴーイングマイウェイなのに赤羽さんといると真逆になる。何気なく鏡の前に座ったら赤羽さんもしゃがみ込み、白い歯を覗かせて微笑んだ。

「柚さんを出すのは意外でした。もっとこう反抗的な事をするのかと」

「……無謀なことをって思ってます?」

「いや、今1番有効かな。あの人達、反抗したら丸め込もうとしますよ。あの手この手の甘い罠とかで。それはそれで必死さが楽しみですけど」

「今日も楽しそうで何よりです……」


それでも赤羽さんに有効な手段だと言われるなら、もう少し自信を持って良いはずだ。 


「やっぱり……いいな」

先ほどまで騒いでいた柚さんはカメラを覗くとすぐに自分のペースでのめり込んでいた。この人も唯と瑠衣先輩と同じひとりっ子ではと俺は睨んでいる。

カメラのデータを早回しのように見返して、ピタッと1枚で手が止まる。唯が手元を不思議そうに覗き込んだ。

「柚さん?」

「……てかさー個人的にやるのもいいけど、どうせなら大っきく動いた方が良くない?今の人脈改めて見てみろって、チームに気に入られた時点でかなりのもん持ってるぜ?何てったって氷怜さんが元になってる。あの人が人脈に関してどれだけ力入れてるか知ってるだろ」

ものすごく早口でその長文を述べると柚さんはどう?と俺たちに聞いている。つまりそれはと答える前にさらに言葉が続く。


「そんでさー写真に関しては俺もいるしー、紫苑も取られ慣れてるし秋のダーリンに至っては瑠衣さんだからプロがいるじゃん?」

「ダッ……いや、はい、まあ」


秋はダーリン呼びに喉をつまらせたように固まるが話の続きを促すために我慢した。唯が首を傾げて手をあげた。

「それで……?」

「ま、俺がやりたいだけだけど……」


オーバーサイズのフーディパーカーのポケットから取り出したスマホで、取り付く間も無く電話をかけ始めた柚さん。唯が驚いてその腕に手を添えるがにっと笑い返すだけだ。
 

「あ、もしもーし。俺だけど、ちげえよ俺だよ。ウケるわ俺の携帯でなんで他人がかけんだよ。いや、そんな事どーでもいいからさ!前の雑誌の話、そうそれ、モデル俺のお墨付きに決めるから。あーうるさいうるさい!見ればわかるって、じゃーな!」


静かに見守っていた俺たちは電話が切れても何も言わない。赤羽さんが笑みを深くして次の言葉を待っていた。

静かにスマホをしまった柚さんは首に下げていた一眼をまた持ち上げ、パシャリと1枚、最後に悪戯の笑顔で。




「かましてやれ、お墨付きどもよ」





いつも最後まで笑っているのは赤羽さんだけだ。



しおりを挟む
感想 182

あなたにおすすめの小説

とあるΩ達の試練

如月圭
BL
 吉住クレハは私立成城学園に通う中学三年生の男のオメガだった。同じ学園に通う男のオメガの月城真とは、転校して初めてできた同じオメガの友達だった。そんな真には、番のアルファが居て、クレハはうらやましいと思う。しかし、ベータの女子にとある事で目をつけられてしまい……。  この話はフィクションです。更新は、不定期です。

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

百合豚、男子校に入る。

BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。 母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは―― 男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。 この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。 それでも眞辺は決意する。 生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。 立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。 さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。 百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

人気アイドルが義理の兄になりまして

BL
柚木(ゆずき)雪都(ゆきと)はごくごく普通の高校一年生。ある日、人気アイドル『Shiny Boys』のリーダー・碧(あおい)と義理の兄弟となり……?

【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。 名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。 そんな彼には「推し」がいる。 それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。 実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。 終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。 本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。 (番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

処理中です...