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しおりを挟む「喧嘩あ?」
「優……」
不機嫌そうに眉を釣り上げた式と心配そうに眉を下げる桃花。対象的な友人2人に思わず笑ってしまった。
ダンススタジオから訳も分からないままその日は家に返されて数日。
その数日の暮刃先輩の雰囲気と俺たちがクラブに顔を見せていないどころか昼休みに会いに行きもしない事を不思議がった式と桃花が放課後に詰め寄ったのだ。バイトの日ですら夕方会えないからといつも昼休みに会いに行っていたくらいだから気になるのも当然。
「珍しいな優がそんな事……いや、優だからか?」
「大丈夫……?」
桃花が心配そうに綺麗な顔を歪めた。
自分が始めた喧嘩だと言うのにこんな顔をさせてはダメだな。うんと大きく頷くと少し安心したように微笑んでくれた。
先輩達とは連絡は取りあうものの直接会ったりはしていなかった。バイトですれ違いになってしまったのもあるが、俺はまだ今の段階で顔を合わせてもみんなに気を使わせてしまうから少し離れているのだ。
「でも2人まで俺に付き合う必要はないのに……」
「んーん、俺らも好き勝手します!って出てきたからさ。もう少しアカウントが動いて行けばなぁ。胸張って行けるんだけど」
「柚さん今までの写真も送ってくれたし、フォローしてくれてた人もみんな広めてくれて順調順調!」
「末恐ろしい奴ら……」
計画を聞いた式は負に落ちない顔だけどやめろとは言わなかった。たしかに有名になる事は諸刃の剣になるかも知れないけど、今の状況が変わらなければ納得が行かないのは性格上仕方がない。決めたのだからやり切りたいんだ俺も。
唯がそれとね、と首をこてんと傾げた。
「それに氷怜先輩ちょっと忙しそうだった」
「あ、瑠衣先輩もそんな感じ」
ねと2人で頷く、前の話し合いや試合の事が少し大事だったと言うのは赤羽さんから聞いていたけどそのせいだろうか。心配したところで今聞くのはさらに問題を増やしている俺としては話題にしづらい。
それに赤羽さんから俺たちがやろうとしている事は筒抜けなのかも知れないけど特に何も言われなかった。それはつまり好きにしていいと言う意味なのだろう。
式は何か言いたげな顔だったけどそれでも飲み込むとコートを羽織り俺の頭にぽすっと手を乗せた。
「まあ送り迎え、俺らがつくわ。勝手にだけど」
「だからそれも大丈夫なの!」
唯がピシッと指を立てるが桃花がさらりと言う。
「友達と一緒に登下校しちゃダメなのかな」
「こんな時だけタメ口使うううううう」
最近桃花は唯に対して狡猾さを覚えた気がする。もともとなのかも知れないけど頼もしい限り、悔しがる唯にくすくす笑いながらもコートを渡しマフラーを巻いてあげる師弟の微笑ましさは変わらない。
校舎の外に出れば相変わらず冷たい風、こんな時期のしかも夜にドレスで寝てたんだから馬鹿な事をしたもんだと改めて思ってしまう。秋が寒さに体を縮こませながら話し出した。
「でも結局柚さんは何だったんだろう」
「あれから連絡ないしね」
何か勝手に話が進んだようだったけど何も話されずに解散してしまったし、そろそろ何かあってもいいのに。前を歩く唯の横で式が足を止めた。
「いや……」
目線の先、柚さんが校門に立っている。
ファーのオーバーコートにカメラを下げた柚さんが見覚えのある車に寄りかかり手をあげた。
「はいはい、行くぞー!」
「え?!」
「なに」
「ちょっ」
式も桃花も車に詰め込まれバタンとドアが閉まって流れるように発進。皮張りの人をダメにするシートから見える運転席で赤羽さんが爽やかに笑った。
「拉致しやすくて助かります」
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