sweet!!

仔犬

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theory!

3

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「戦い方?唯達にですか?」

「いや戦わせなくていいよ。受け流しとか基本くらいの動き教えてあげて」


暮刃先輩が1番近くにいた紫苑さんと赤羽さんに声をかけると2人は対照的な顔をした。赤羽さんはいいですねと笑顔だが紫苑さんは子供を心配するような顔だ。こちらにも過保護なお兄さん発見。

「なら今回俺は見守りですね。得意分野ではないので」

「うわ、またそういう事言う。まあ良いけどね……」

赤羽さんの言葉に紫苑さんは頭をかいて唸る。少しチャラいけど余裕たっぷり愛嬌たっぷりのお兄さんタイプだけど、戦いに関して彼は少年みたいに熱い想いがあるからそう言うところが瑠衣先輩に惹かれたんだろう。だから赤羽さんのセンスがもったいらしい。

「まあでも、ここの人間は体で覚えるばかりで教えるなんて丁寧な事してこなかったので、幹部の分析にちょうど良い機会かも知れませんね」

歯を見せて笑った赤羽さんに紫苑さんが警戒して一歩距離を取る。

「相変わらず怖いわ……」

「ただの性分ですよ。そもそもみなさんが1番適役なのに、どうして俺たちに?」

「あれ、たしかに」

紫苑さんが首をひねる。そういえば、どうしてだろ。ここで1番身体を上手く使えるのはもちろん先輩達だ。俺も優も唯もクエスチョンマークを飛ばすと氷怜先輩が当たり前のように言う。

「教えるにしちゃ独自性が強いってのもあるけど……無理だろこれは」

氷怜先輩がこれと言ったのはもちろん俺たちの事で大きな手が頭に乗る。撫でられると力が抜けるってのは懐き過ぎた代償かもしれない。

「可愛がって時間が潰れる」

「いやん可愛がられてるう~」

唯がふざけて頰を抑える。
ここは照れるとこじゃ無いわけね、俺ぐっときたんだけど相変わらず唯の照れポイントは謎だ。でもこんな甘やかし場面、自分のボスがしているのを見るの嫌じゃ無いのかって思ったら紫苑さんめっちゃニヤニヤしてるし赤羽さんはほんとにいい笑顔だ。こちらもよくわからない心境だ。

暮刃先輩は変わらない微笑みで優の頬を撫でる。

「時間あるときに見てあげて。一から教えれば筋はいいから悪い動きしないと思う」

何気なく褒められるとにやけてしまう。やる気も出てくれば今からでもやってもらいたいほどだ。だが今日はもう時間が遅い。

「残念だけど、次からね」

見透かされたようににっこり笑われ、暮刃先輩は瑠衣先輩達が繰り出す映画みたいな激闘の方へ歩いていく。首を傾げた俺たちはその姿を見守ると、拳と拳が振りかざされた瞬間にあろう事か暮刃先輩が突っ込んでいく。

「危な……!」

驚いたのも束の間、クロスカウンターを両手でしっかり押さえた暮刃先輩がその場に似合わない微笑で言う。

「瑠衣、帰るよ」

「……今イイトコロだったんだケドー」

「おい……まさかお前ら帰ってもこいつらの相手するわけか?」

「俺はどっちでも構わないけど……瑠衣が乱入しちゃったし、みんなはまだ相手して欲しそうだけど、どうだろう?」


榊さんも瑠衣先輩も暮刃先輩への力を緩めず、心底不満げだ。間で止めている暮刃先輩だけが上品に笑っている。忘れそうになるけど、これが本来のあの人たちだわ。

すると麗央さんの視線が氷怜先輩に向く、相変わらず乙女モードの瞳はこの後の指示を待っていた。氷怜先輩は誰に向けるでもなく口を開く。

「好きにしろ」

「李恩、氷怜さん達が帰るなら俺も帰る。だから終わり」

頷いた麗央さんは氷怜先輩から視線を戻した瞬間、不機嫌さを取り戻す。その言葉に榊さんがようやく拳を下ろし、そこまで息も上がっていなかったのにあからさまに疲れたと腕を伸ばした。

「ありえねぇ、ここまでこき使うか?」

「あーあ、やる気なくしたー。サカリン次はちゃんと本気出してヨ」

「気分によるな」

鼻で笑った彼は脱いでいた上着を肩にかけるとタバコを取り出した。何故かこちらに向かってくると、麗央さんのように優が不機嫌さを丸出しにする。

「お姫さんたちは高みの見物か。良いご身分だな」

「またそう言うからかい方……そんなに元気なら残ったらどうですか」

「雇い主の命令には逆らわないんでね」

榊さんの言葉に話はもう終わりだと、ふいっと視線をずらした優。
なんでわざわざこっちきたんだろ、先輩達もいるし下手に動けないのに。不思議に思った俺の隣で唯がふっと無邪気に笑った。

「榊さん、相手が分かってもバラしたりしないですよ」

なるほど、俺たちの初恋相手探しの進捗を伺いにきたわけか。よく分かったなあ唯。一瞬固まった榊さんの瞳だけが唯を見下ろす。

「……お前、意外といい性格してんな」

「ん?」

唯は首を傾げたけど、俺は納得。他人の心情には鋭いのになんで自分はダメなんだ、と言う疑問は常だ。

「榊、ほらご主人が帰るって。また宜しくね」

後ろで微笑んだ暮刃先輩を一瞥しなにも答えず翻していく榊さん。出口付近で待つ麗央さんはこちらに近づくこともせず頭を下げて出て行った。

「ああ、麗央さん行っちゃった~」

「また今度頑張んな」

代わりに瑠衣先輩と暮刃先輩がドリンク片手にゆらゆらと戻ってくる。

「アッキーアッチー、アッチッチー」

「はいはい、語呂良いから言いたいだけっすね。あ、でも汗かいてないからぜんぜん本気じゃないんだ」

前から覆いかぶさってくると瑠衣先輩のピンクの髪が頰に当たる。体温は高いけど、ウォーミングアップくらいなのかな。あんなに激しかったのにすごい。

「そりゃソウ、誰かさんがちょっと待ったするからー」

「だって本格的に始めたら止まらないだろ。それだと帰る頃には日付変わっちゃうから」

「だいたい他の奴らに相手させなきゃ意味ねぇんだよ、瑠衣」

「イケズー」

不満げな一人っ子の背中をポンポン叩いてあやしてみた。とは言っても特にそこまで不機嫌じゃないからそのうち笑い出して何故かおれにドリンクを持たせる。これはつまり飲ませてと言いたいらしい。

「口でもイイヨ?」

「バカ言わんでくださーい」

飲み口を口に当ててあげれば綺麗な顔でニシシと笑い、口を開け器用に飲み始めた。ひとりっ子コンビは瑠衣先輩のが甘え上手が上かな。そして俺も甘やかしてるからお互い様だ。

「今日シェアハウス行くんで余力残してください。どうせ美味しいホールケーキも待ってるんでしょうし」

「んー?やっと家出っ子が戻ってくるわけね」

「うわ痛いところ突きますね」

「あーじゃあじゃあ、今日はご飯おれ作りますよー先輩達のリクエスト全部聞きます!」


唯が手をあげると氷怜先輩がその頭をくしゃりと撫でる。ご機嫌なのは一目瞭然。
ひさしぶりに会った時は先輩達疲れてそうだっだけど、チームのみなさんには何か迷惑をかけていないだろうか。帰り際、赤羽さんと紫苑さんににこっそり聞いてみた。

「楽しかったですよ」

「それはお前だけだわ……」

赤羽さんは笑ってくれたが紫苑さんは複雑そうな顔をしていた。

「意志強いのは尊敬するけど、あんまりマイペースで振り回しすぎんなよー。あの人達も振り回してはくるだろうけど、お前らほど入れ込んでんの見た事ないからさ」

全くどんな感じだったのかは分からないけど、何かしらで紫苑さんたちにも迷惑をかけてしまった気がする。だって赤羽さんが良い笑顔ということは、つまりそう言うことだ。これはもう絶対。


「あと俺もお前らいた方が飯美味しいし。だからいなくなんなよ」


そう言われて嬉しくない人間はいないだろう。





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