sweet!!

仔犬

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theory!

6

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片付けまでしてしまうと夜も更けて流石に寝ないといけない時間になってきた。
立ち上がった氷怜先輩。

「先風呂入ってくる」

「あ、氷怜先輩おれも入ります!」

唯の言葉に俺と優が固まった。
これ、意外と気にしてたわけです。氷怜先輩が俺たちとお風呂入るの見たことない。瑠衣先輩はふざけて飛び込んできたりするし、暮刃先輩はあんまり浸からないらしくてさらっと一緒に入ってすぐ出てく、なんてのはあったけど氷怜先輩だけ全くないのだ。

「俺の着替え持ってきてくれるか」

「はいはい!」

あれ、良いの?!って驚いて隣を見たら優も同じ顔してた。
氷怜先輩は先にお風呂に向かって、着替えを取りに唯は二階へ上がっていく。

「て、てっきり断るかと」

俺の呟きに暮刃先輩が面白がるような声音で答える。

「流石に唯が入るって言ったら断らないよ。あいつだって入りたくないなんて微塵も思ってないし」

「ひーは念のために避けてんじゃないー?あんなにひーが振り回されてるのはナカナカ無いし、唯ちんのスイッチ謎で最強ダカラ~」

2人が意地悪に笑うが唯に関しては頷くしかない。俺たちでさえ唯のスイッチの入り方には驚くし、氷怜先輩にはなんだか申し訳ない気すらしてしまう。唯のスイッチの100か0しかない融通のきかなさは大人なんだか子供なんだかわからない。それが魅力といえば良いのだが、据え膳という意味ではキツイのではないか。


「まあ、今日はあの感じだと大丈夫じゃない?」

暮刃先輩がそう言う通りお風呂からは唯の歌声だったり2人の笑い声だったり穏やかなものが聞こえてきた。どっちかが煽らなければあの2人って俺たちの中ではかなり安定してるのではないだろうか。それに多分大きな喧嘩はしない。

何故なら氷怜先輩と唯の共通点を挙げるなら「人の事をよく見ている」だ。まあ氷怜先輩に限っては一定以上の人間のみに対してだろうけど、それでも2人は他人に柔軟に対応する。だからお互いの事もなんとなくでもコミュニケーションを円滑に回している。唯が変に無自覚で氷怜先輩が少し注意したとしてもちゃんと対話が出来るから喧嘩には発展しないのだ。

「あの2人拗れるとかあんまり無さそうですよね」

頷くと突然俺の身体が宙に浮いた。

「つまんないから邪魔しに行こー!」

「うおお?」

よっこいせーとゆるい言葉にもかかわらず俺の身体は俵のように肩に乗せられている。相変わらずのパワーだが、あの2人を邪魔するのはかわいそうだ。主に氷怜先輩が。

「ええーーせっかくなんだし2人っきりで楽しんでもらいましょーよ瑠衣先輩!」

「多分だけどー、これ以上2人にさせる方がひーにはツライと思うけど?」


う、それは無きにしも非ず。
論破されてしまえば暴れるわけにもいかず諦めた。そんなおれたちにまだソファの優と暮刃先輩がいってらっしゃいと緩く手を振った。

「2人は?」

「もう少しゆっくりしていくよ」

暮刃先輩の言葉に優も頷いた。そこで気がつく。
2人にした方がいいのはこっちの2人なのかも知れないと。
あっと思った時にはずんずんお風呂へ進んでいく瑠衣先輩。

「アッキー服のまま入るのとオレに脱がされんのどっちがいー?」

「……瑠衣先輩が空気読めるのたまに忘れるんだよなぁ」

「なーに言ってんの、当たり前でしょー天才ダカラー」


それなのになんで敢えてこの人は変な遊び方をするんだろうか、いやまあそういう質なのは分かってるけどやっぱり不思議だ。でもそこも魅力なのだろう。

上半身が瑠衣先輩の背中側にあるから顔が見えなくてポスポス叩くと洗面台横のカウンターに座らされた。

ここは2、3人分くらいの大きな鏡と洗面台、それに座ってドライヤーとか身支度できるカウンタースペースがあるから凄く広い。まあ家のどこも広いけど洗面所は大理石と白で統一された空間でお風呂は黒の大きなタイルでシックに雰囲気をガラリと変える。その豪華さとハイセンスはまだまだ身の丈に似合う気がしない。

お風呂から水の音と2人の話声。
このお風呂実はガラス張りで丸見えなんだけど電気つけると曇るようになってるとか、そんなハイテク俺はここに来るまで知らなかった。

それにしても、お風呂の楽しげな声は俺も嬉しくて、そうなるとピンクの頭を撫でたくなってしまう。台に乗ってるから俺の方が目線が高くて目の前に顔があるから余計に。

「なーに、変な顔ー」

「失礼っす」

ケラケラ笑われるが俺もこの人とこうやってのんびり過ごすのは久しぶりだから、楽しいってのは良くわかる。

「別に脱がせてくれてもいーですけど?」

たまには俺も煽ってみようかなって思って、さっきの唯と氷怜先輩を思い出す。首に手をかけて首筋に顔を埋めてみた。

「……アッキーがそんな趣味だったなんて」

「は?」

不穏な空気に思わず顔をあげる。

「だって着替え無いからお風呂出たらフルチンで取りに行くんでしょーいやーんアッキーえっちー!」

「え、いや!取りに行ってもらいま……」

言い切る前に口を塞がれる。甘い匂いと柔らかい感触にあれやり過ぎたかなとぼんやり思う。でもその頃にはまた身体が宙に浮きお風呂のドアが開いて、ものすごい勢いであろう事か湯船に向かって投げ込まれた。

視界がスローモーションになって驚いたまん丸目の唯を捕らえる。頭にヒヨコ乗せてんなよ、似合うけど。そして、流石に死ぬ……と思ったら氷怜先輩がナイスキャッチ。その引き締まった身体は顔が見えなくてもわかりますとも。

「あー死ぬかと思った……」

激しい水しぶきが静かになって最後にはぽちゃぽちゃ水滴が垂れる音、そして瑠衣先輩の笑い声。

「瑠衣テメエ、また投げやがったなぁおい……?」

ゆっくりお風呂のふちに降ろされ、氷怜先輩が低い声で怒りをあらわにした。怒んないでーとか言いながらも服を脱ごうとする瑠衣先輩。

「入ろうとしてんじゃねえ反省しろ」

「絶対キャッチできる速度にしたしー」

「万が一があんだろ、ああ?」

なんかあの試合の日の再来だ。まあ、あの時投げられたのは俺じゃないし、今の何倍もの高さに投げ飛ばされた優と唯の気持ちは計り知れない。

それにしてもまた怒られる事なんてわかってただろうに何やってんだか。俺は服が気持ち悪くて脱いで言い合う2人をよそに寒いので密かにお湯に浸かる。アヒルを持った唯がヒソヒソ声で苦笑気味に言ってきた。

「秋、なんかした?瑠衣先輩の目がギラギラしてるよ」

だからなんでこういう時は察しがいいんだお前は。
まあでもすみません瑠衣先輩。したかったからするって、俺たち全員のポリシーみたいなもんだし許してください。

「あてられたかなぁ」

「えー何々!」

とか言いながら何故かヒヨコを頭に乗せられた。あ、なんかこれ落ち着くな。

そのあとは結局4人でお風呂入って瑠衣先輩が泡風呂を始め、遊び過ぎた俺と唯はのぼせてしまい先輩達がベッドまで運んでくれた。

優様に冷たい目で見られてしまうが、それでもさらに冷たい飲み物運んでくれる優様に抱きついてまた騒いでいるうちに寝てしまった。

夜中に目が覚めるとあったかいものに包まれている感覚。穏やかな寝息の綺麗な顔が目の前に。首を動かすと全員揃って寝ているようだ。

「相変わらず6人で余裕のベッドって意味わかんねぇ……」

でもそのおかげでこうしてみんなで寝れる。思わず笑ってまた腕の中に潜り込んだ。

きっとこう言う日を最高って呼ぶんだろう。






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