sweet!!

仔犬

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misunderstanding!!

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それにしても自分が目的ならまだしも先輩達が目的だと言われてしまうと踏み込んでしまいたくなる。でも相手のヤバさは丸わかりだし下手な事しない方が良さそう。時間稼ぎだよ俺と言い聞かせながらとりあえず持っていた買った洋服達を地面に下ろす。出来れば置きたくないけど最悪置いて行ってもスマホとかよりは困らない。


「……目的はとりあえず俺を捕らえる、ってことね 」

「できれば手荒な事はしないようにするよ」

「捕らえるって時点で手荒でしょう」


俺が荷物を置いて臨戦態勢に入ったのがお気に召したのか相手は口の端をあげる。やっぱりこの人はちょっとあれだ。

男の人は横に流していた前髪に雑に手を入れるとガシガシと崩して行く。ああやっぱり、全然違う。ファッションは俺にとって相手のイメージの具現化だ。

下に来ていたシャツも出しボタンも開ける。髪の毛を後ろに流して綺麗めからカジュアルに変わっていくころには違和感があっという間に無くなった。

こうなると話し方だけが落ち着いていることが逆に怖さを増す。この人の威圧感は李恩とはまた違っていて、いまだにムカつく所もあるが唯のおかげでだいぶ性格を知れたのも大きい。それに麗央のことをよく見ていて尚且つ周りのこともしっかりと見た上で行動するから、認めたくないけどある意味自分に近いものがあるのだ。
考えてみれば李恩は直接的に俺達を傷つけるなんて事をしてこなかった、他の人には知らないけど何はともあれ麗央が信頼しているんだから、そういう事だ。やっぱりまだちょっどムカつく時もあるけど。

でもこの人がやばそう、と思うのは話し方が落ち着いていようが倫理からは外れているのではないかと頭をよぎる雰囲気があるのだ。

「ただ棒立ちで簡単に捕まるつまらないミッションかなって思ってたところでさ、そんなの下の奴らにやらせればいいのにあいつが重要だからって……で嫌々俺が来たけど意外と良い動きするお姫様でよかったよ」

「あいつって誰です」

「気にする所そこ……?お喋りが過ぎたかな」


はいはい、言わないのね。
この男の人が好きに使える人間がいる所に身を置いてるって事ならやっぱりチームの人だろうか。それとももっと上の大人の人も絡んでいるのだろうか。正直、相手の年齢が分からない、先輩達と変わらないように見えるし紫苑さん達に近いような気もする。若く見られる動きと、達観した捻くれた大人のような口調のせいで見た目と雰囲気だけでは年齢を捉えるのが難しい。

そもそも先輩達を狙うチームの人っていまさらいるのだろうか、あんなにも有名で、強いチームに太刀打ちできる人がいるとは思えない。

ああでも神さん才さんたちでこの前出かけた時は他のチームの人が襲ってきたって事は有り得るのか。それでも大きな規模ではないって言ってたし……。

「考え事?余裕だね」

「……いや、警戒してるだけです」

また踏み込んだ事を口出しそうになって唇を噛んで我慢する。せめて自分の身が安全になったら踏み込むべきだよ俺。
ああ、何もしないってもどかしい。
せめて見た目、話し方、クセ、とにかく覚えられるものは覚えておこう。首にホクロ、手首の内側に何かの刺青が見える。


「で?どうするのお姫様は」

「5分……あなたから逃げようかと」

「すごい、意外とやる気だね」


褒めるなら声色も褒める用のものに変えて欲しい。


「何で5分?」

「俺があなたに対抗出来そうな時間、尚且つ、誰かが俺を迎えにくる予想時間です」

「…………へえ」


目が、三日月が真横になったように目尻が下がった。ゾッとするような笑顔に思わず一歩下がる。顔は男の人にしては可愛い。整っていて、二重で唇も小さめで、でも怖い、この人は怖い。

「いや、いやいや。良いね。よっぽど可愛がってもらってるんだね君たち」

笑いを噛み殺したような笑顔でそう言われては流石に口が出てしまう。

「どういう意味ですか」

「だって5分も君だけじゃ正直無理でしょう。5秒の間違いかと、そんな回答するくらい甘やかされてるんだって思うと面白かった。まあ、そうだな。迎えの予想時間は合ってるかも知れない。君は本当に愛されているらしいし」

眉間に皺が入りそうなくらいムカつくを事を言われているが視線をずらす事で一旦深呼吸ができた。もうこういう人なのだろうと受け入れよう。

「……5分は、何も力技で逃げる時間だけを組んでいるわけじゃないので」

「と言うと?」


最初の黙秘は影も形もないくらい相手が喋るので、作戦変更。
やばいのは分かったし、むやみやたらに抵抗しては相手をご機嫌にするだけのようだし、相手の強さゲージなんて見えないけど自分の実力では遊ばれるだけだろう。でも逆に言えば遊んでくれればなんでも好都合。


「ゲーム、しましょう?」


いつかも親友が笑ったように、こういう時は微笑むものだ。
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