sweet!!

仔犬

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misunderstanding!!

4

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「……あれ、君」


バイクの音にマキオは掴んでいた敵の頭を無意識に手放した。落とされた者に意識は殆ど無いが地面に落ちた衝撃でグエっと声が漏れ出る。出来上がった屍の山とも呼べる上からマキオは暮刃を見つけたのだ。


「え、く、暮刃さん?!」


踏むたびに嗚咽や悲鳴が聞こえながらも暮刃に駆け寄ったマキオは緊張した様子で頭を下げる。2人きりで会うなど初めてなのだ。


「お疲れ様です!あ、自分マキオと言います!!」

「ああ、やっぱり。さっきちょうど君の話が出たよ」

「え、あ、あの、申し訳ありませんでした!俺が早とちりな報告をしたせいで……」

「良いよ。そう見えるようにあの子がしてたんだから……それにしても、本当に良い腕してるんだね」

「ひぇ?!」


思いがけず褒められたマキオは顔を真っ赤にした。尊敬する人間どころか神に近いトップの1人である暮刃に褒められるなんて思ってもみなかったのだ。

「じ、自分はまだまだです!亜蘭さんにも一度も勝てことが……」

「亜蘭にあの子の迎えを任せてもらったんだろ。それなり以上じゃないと亜蘭だって頼まないから」

これ以上無いほどの褒め言葉に胸が詰まるほど喜んだマキオだがすぐに申し訳ないと謝りはじめる。
今、その亜蘭に任されている優の近くに居れられていないのだ。暮刃もこの状況で察しはついていた、報告されたことよりも面倒な者だったのだろう。

「……李恩の勘は侮れないかな」

「え?」

「いや……それで状況は?」

「は、はい!カフェで優夜さんが暮刃さんに電話した後店を出る雰囲気だったので一足先に出て状況確認しようと思ったんです。ストーカーのやつ店には入ってこなかったので。そしたらこいつらに囲まれて……暴れてでも優夜さんについて行くべきだったんですが、こいつらを野放しにも出来ず……」

「それは何分前?」

「10分くらい前です」


たかが10分でこの人数を相手したのならやはり見込みがある。亜蘭の下と那加の下を兼任させた方がさらに伸びる気もする。まあそこは追々でも良いか。
それにその程度しか経っていないならいまは逃げている途中だろうか。あの子は頭を使うから下手なことはしていない、筈だ。あの綺麗な顔で男気を出さなければ。

同時に色々なことを思案しながら暮刃はバイクのエンジンを入れ直した。マキオは慌てて言葉を付け足す。

「あ、あの!もちろんいくら囲まれたとは言え優夜さんお1人では無いです。男の友人2人と、それから美嘉綺さんが偶然通りかかって」

「美嘉綺が?」

そう言えば用事があると言っていた彼はいつのまにか居なくなっていた。

「すぐに状況が分かったのかこっちは頼んだと行って優夜さんの後を追って行きました。俺も今から向かおうと……」

「そう……」


ブゥンンと低い音を立てたバイクが振動する。もう一つのヘルメットを掴むとマキオに投げれば驚きながらも両手に収めた。


「乗ってよ、案内して欲しい」

「りょ、了解です!」

「ああでもその前に」


そう言って暮刃がポケットから優雅な動きで白いハンカチを取り出した。

「血を拭いて、あの子が見たら驚く」

「あ、え?!すみません!あと拭くものはそんな綺麗なもの俺になんか使えません!!えーと……」

自分は怪我をしていないので倒れている誰かのものだ。
マキオは自分のポケットから慌ててハンカチを取り出した。暴れたおかげでくしゃくしゃだったが拭く分には問題ない。暮刃が少し驚いた様子で自分のハンカチをしまう。

「……また珍しいね、若いのにハンカチまで持って。瑠衣でも持ってないよ」

「瑠……あ、いや俺は、緊張し易いのと早とちりするので備えと言うか……」

話しながらどんどん萎縮してしまうマキオに暮刃は目を細めた。

「プロの実力って聞いたよ、ボクシング」

「え!?い、いえ!俺は公式ではなく父がプロなんですが、父や父の知り合いのプロに勝てただけで……」

マキオの苗字を思い出した暮刃はその名前のプロボクサーを瞬時に呼び起こした。かなり有名な選手だ。
身体はまだ唯斗達よりも年下という事もあり、小さめだ。それでもその若さで後ろにたった10分足らずで屍の山ができるほどの力と速さがある。動きに迷いもなさそうだ。
それにプロに勝てたのならば、おそらく緊張するのは戦い以外なのかもしれない。
亜蘭にしては面白い子を下に入れたな。

「じゃあ行こうか」

ズボッとヘルメットを被りマキオはバイクに飛び乗った。暮刃がバイクの後ろに誰かを乗せるとしたら氷怜か瑠衣しか見たことがない。それもごくたまにだ。優達ならあり得るのかもしれないが、そんなところに自分が乗るのはおこがましい。マキオは座りきれず腰を一センチだけ浮かした。

神聖なシートを汚してはならないと生真面目な彼なりの配慮だった。こう言う気の遣い方が彼の緊張し易さの原因でもあるのだがそれに気がつくのはもう少し大人になってからだ。
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