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1.ドラゴンが見えても可愛いならそれで良い
しおりを挟むオレにはドラゴンが見える。
窓から見える景色には今日もドラゴンが飛んでいた。
それは自由に空を飛んでいたり、広い場所に寝転んでいたりする。そしてよく、覗きにくるのだ。オレの事を。大きな青い目をパッチリと開けて。
皮膚がゴツゴツしていて大きな鱗で覆われている。
顔はオレが全身を使っても隠しきれない程大きく、その全貌は一軒家くらいだが行動はいたって普通の動物と変わらず穏やかである。食事をしているところを見たことはないが、日中は日向で寝てそのあと元気に動き回るから光合成タイプなのかもしれない。
そしてこのドラゴンは常にオレのそばにいる。何かをしてくるわけでもなければ、どこかに行くわけでない。ただ探せば見える範囲にいつでも居るし、こちらをたまに見にくる。その原因は全くもってわからない。ただ、懐かれてはいるようでオレが散歩に出かけお気に入りの公園の木の陰で読書をすれば必ずオレを囲うようにして眠るのだ。
お腹のあたりは柔らかくあったかい、寄っかかるには最高だった。
「今では可愛いと思ってしまっている……」
講義が終わり廊下の窓からドラゴンを見つめる。他の誰もこいつのことは見えていない。他人には今オレは一人で空を見上げて黄昏ているように見えるだろう。
オレもドラゴンが見えるようになったのは去年からだ。誕生日を迎えた朝に新聞を取りに外に出たらこいつはいたのだ。真っ白な大きな物体に取りあえず台所にいた母さんを呼び出した。そして言われた事はこうだ。
「……ツバサあんた病院行く?眼科、いえ精神科……」
と、こいつのせいで精神病を疑われた。
誰にも見えないし音もしない。あいつが飛び立つ時に出る風も自然現象と思われてしまう。ドラゴンについて調べるも所詮は空想上の生き物とされているのだから、情報なんてファンタジー小説に詳しくなったくらいだった。
「なにたそがれてんのー!」
腰に衝撃が走る。幼馴染で幼稚園から大学まで同じのレイガ だ。
「……やっぱ黄昏てるように見える?」
「いやぁ、熱心に雲眺めてたらそう思うでしょ」
まあ、それもわかってて見てるんだけどな。だってやっぱ気になるし、可愛いし。ドラゴンが見えるなんて信じてもらえないだろうから、黄昏るって思われるくらいなら別にいいか。
「つか最近いっつも空見てるよな。去年かな、お前の誕生日あたり?」
「お前って意外とオレの事見てて怖いな」
「ひっど!!」
オレの腰に巻きついたレイガが泣き真似をする。派手な金髪に形のいい唇が笑っているのが見えてデコピンをお見舞い。
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