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平凡男子のおれがアレを授かりまして
2-1-春休みデート
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「コレとか似合うんじゃないか?」
春休みシーズンで大賑わいの駅ビル、滅多に立ち寄らないセレクトショップにて。
「コッチも良さそうだ」
柚木は比良に春向けのアウターを次から次に試着させられていた。
……この店って高いんだよね。
……大学生活に向けて何着か買う予定ではあったけど、ココだと一着しか買えないんでない?
「比良くん、いろいろ選んでもらってありがたいんだけど、そろそろ移動しない?」
「待ってくれ、アレも気になる」
値札を見ては逐一ゴクリと息を呑み、馴染み深いファストファッションの店舗へ行きたがる柚木を平然とスルーした比良。
「あそこにかかってある服、試着してみてもいいですか」
店頭のディスプレイとしてかかっていた服を店員に持ってくるよう頼んだ。
うわぁ、おれにはできない……。
たとえイイと思っても店員さんに頼めなくてすんなり諦める……。
「やっぱり。一番似合う」
比良は自ら店員の代わりになり、何にでも合わせやすそうなベージュのスプリングコートを後ろから柚木に着せてやった。
着心地がよく、チェック柄の裏地も凝っていて、割と華奢な体型にも合うサイズだ。
馴染みのないショップでぎくしゃくしていた柚木はちょっと顔を綻ばせたが。
スタンドミラー越しに比良と目が合って、やたら優しげな眼差しを目の当たりにして、逆にぎくしゃく度が増した。
「あー、わぁ、いーかも、コレ、思い切って買ってみよーかな、っ、にま……ッ!?」
「ニマ?」
二万円台というよりほぼ三万円するお値段に柚木は絶句した。
……この値段ならいつものトコだと服どころか靴からバッグまで全身一式揃う。
「す、すみません、せっかく持ってきてもらって何ですけど、すみません」
店員にへこへこ謝る柚木に比良は首を傾げる。
「気に入らなかったか?」
「比良くん……おれにはちょっと……」
「似合ってたのに」
「だから高いのっ、むりっ、おれもう行くからっ」
顔を赤くした柚木は客の行き交うフロアへ小走りになって飛び出し、店員が再び店頭のディスプレイとしてスプリングコートを飾っているのを比良は横目で見送り、同級生の後を長い足で悠然と追った。
卒業旅行からまだ一週間も経過していなかった。
柚木の体は依然としてあのままだ。
いつか自然とポロッと剥がれ落ちる(?)のではないかと、柚木自身は淡い望みを抱いている……。
「パスタ、定食、お好み焼き、回転寿司、カレー、ラーメン、柚木はどれが食べたい?」
ランチの混雑ピークがやや落ち着き始めた昼の二時。
それでもいつもより客数の多いレストランフロアをぐるりと回り、比良は柚木に尋ねた。
『柚木、今、大丈夫か?』
まだベッドでむにゃむにゃしていた午前中、柚木のスマホに比良から電話がかかってきた。
卒業旅行の帰りがけに初めて連絡先を交換した、メールアプリにも友達追加した、それなのにどうしていきなりわざわざ電話なんか、寝起き柚木はベッドで正座して次の言葉を待ち構えた。
『昼から俺の買い物に付き合ってくれないか?』
そのときは拍子抜けした。
別にいいけど、と返事をし、待ち合わせ場所と時間を決めて電話を切った。
しかし支度している内にどんどん緊張感が増していった。
ちょっと待って?
比良くんと買い物とか初じゃん?
そもそも二人でお出かけ自体が初なんでない?
『柚木のことは俺が面倒見る』
会うのは怒涛の卒業旅行ぶり。
他愛ないメールよりも先に電話が来るなんて。
しかもお出かけのお誘い。
『俺がきちんと管理してあげる……』
ほ、ほんとにおれのこと管理するつもりなのかな。
『いずれコッチの処女も俺に奪わせて……』
いや、それはほんと困る、いくら比良くんだからって、そこまで奪われる筋合いない……。
「柚木?」
「えっ?」
不埒な回想に意識を乗っ取られかけていた柚木は慌てて頭上を見上げた。
「なに食べたい?」
……うわぁ、やっぱり男前……。
春休みシーズンで大賑わいの駅ビル、滅多に立ち寄らないセレクトショップにて。
「コッチも良さそうだ」
柚木は比良に春向けのアウターを次から次に試着させられていた。
……この店って高いんだよね。
……大学生活に向けて何着か買う予定ではあったけど、ココだと一着しか買えないんでない?
「比良くん、いろいろ選んでもらってありがたいんだけど、そろそろ移動しない?」
「待ってくれ、アレも気になる」
値札を見ては逐一ゴクリと息を呑み、馴染み深いファストファッションの店舗へ行きたがる柚木を平然とスルーした比良。
「あそこにかかってある服、試着してみてもいいですか」
店頭のディスプレイとしてかかっていた服を店員に持ってくるよう頼んだ。
うわぁ、おれにはできない……。
たとえイイと思っても店員さんに頼めなくてすんなり諦める……。
「やっぱり。一番似合う」
比良は自ら店員の代わりになり、何にでも合わせやすそうなベージュのスプリングコートを後ろから柚木に着せてやった。
着心地がよく、チェック柄の裏地も凝っていて、割と華奢な体型にも合うサイズだ。
馴染みのないショップでぎくしゃくしていた柚木はちょっと顔を綻ばせたが。
スタンドミラー越しに比良と目が合って、やたら優しげな眼差しを目の当たりにして、逆にぎくしゃく度が増した。
「あー、わぁ、いーかも、コレ、思い切って買ってみよーかな、っ、にま……ッ!?」
「ニマ?」
二万円台というよりほぼ三万円するお値段に柚木は絶句した。
……この値段ならいつものトコだと服どころか靴からバッグまで全身一式揃う。
「す、すみません、せっかく持ってきてもらって何ですけど、すみません」
店員にへこへこ謝る柚木に比良は首を傾げる。
「気に入らなかったか?」
「比良くん……おれにはちょっと……」
「似合ってたのに」
「だから高いのっ、むりっ、おれもう行くからっ」
顔を赤くした柚木は客の行き交うフロアへ小走りになって飛び出し、店員が再び店頭のディスプレイとしてスプリングコートを飾っているのを比良は横目で見送り、同級生の後を長い足で悠然と追った。
卒業旅行からまだ一週間も経過していなかった。
柚木の体は依然としてあのままだ。
いつか自然とポロッと剥がれ落ちる(?)のではないかと、柚木自身は淡い望みを抱いている……。
「パスタ、定食、お好み焼き、回転寿司、カレー、ラーメン、柚木はどれが食べたい?」
ランチの混雑ピークがやや落ち着き始めた昼の二時。
それでもいつもより客数の多いレストランフロアをぐるりと回り、比良は柚木に尋ねた。
『柚木、今、大丈夫か?』
まだベッドでむにゃむにゃしていた午前中、柚木のスマホに比良から電話がかかってきた。
卒業旅行の帰りがけに初めて連絡先を交換した、メールアプリにも友達追加した、それなのにどうしていきなりわざわざ電話なんか、寝起き柚木はベッドで正座して次の言葉を待ち構えた。
『昼から俺の買い物に付き合ってくれないか?』
そのときは拍子抜けした。
別にいいけど、と返事をし、待ち合わせ場所と時間を決めて電話を切った。
しかし支度している内にどんどん緊張感が増していった。
ちょっと待って?
比良くんと買い物とか初じゃん?
そもそも二人でお出かけ自体が初なんでない?
『柚木のことは俺が面倒見る』
会うのは怒涛の卒業旅行ぶり。
他愛ないメールよりも先に電話が来るなんて。
しかもお出かけのお誘い。
『俺がきちんと管理してあげる……』
ほ、ほんとにおれのこと管理するつもりなのかな。
『いずれコッチの処女も俺に奪わせて……』
いや、それはほんと困る、いくら比良くんだからって、そこまで奪われる筋合いない……。
「柚木?」
「えっ?」
不埒な回想に意識を乗っ取られかけていた柚木は慌てて頭上を見上げた。
「なに食べたい?」
……うわぁ、やっぱり男前……。
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