おれがアレを授かりまして

石月煤子

文字の大きさ
49 / 89
平凡DKのおれがアレを授かりまして

8-1-ハネムーンごっこ前半

しおりを挟む




「えぇ……? ほんとにココなの、比良くん?」
「そうだよ」
「これって別荘? コテージってやつ?」
「ここはレンタルハウスなんだ」
「れんたるはうす……」


広い砂浜に穏やかに鳴り渡る潮騒。
晴れ渡る青空の下で煌めく大海原。


夏になれば多くの観光客で賑わう国内ビーチリゾート、緑豊かな海岸線沿いにそのレンタルハウスは建っていた。


デザイン性に富んだモダンな白亜の外観。
こぢんまりした別荘の雰囲気が漂っている。


鍵の受け渡しは近くにある運営会社の案内所でスムーズに行われた。


「すごい」


二階のベッドルーム、ラウンジスタイルのリビングダイニング、どちらも開口部を大きく開放的にとっており、贅沢な眺望をダイナミックに楽しめる構造になっていた。


「すぐ近くに海があるみたい、すごい」


壁一面の窓にぺったり張りついて柚木は感嘆する。


……あれ?
……あんなところにお風呂がある?


中庭のウッドデッキテラスに設置された、日の光に照らされて白く輝く露天ジャグジーを発見し、目を疑った。


「比良くん、あんなところにお風呂あるよ、外から見えちゃうじゃん」
「こっち側は海に面してるから大丈夫。あの岩場で釣りをする人がいたら見えるだろうけど」


電車とバスを乗り継いでやってきた海辺の街。

遠くの水平線に夢中になっている柚木に比良は微笑む。


「あ、比良くん……」


ゆったりめオーバーサイズのシャツ、足首の見えるクロップドパンツを履いた比良にバックハグされて。

相変わらず全身ファストファッション地味色コーデの柚木はカチンコチンになった。


「み、見られるよ、外から」


ビンテージ感のある古木調の床、寛ぎ放題な大きめソファ、無駄に多いクッション。

普段と一味違う時間を過ごせるよう、非日常でいて快適な空間を彩るインテリアの数々。


「今、釣りをしてる人もいないし、誰にも見られない」


真っ昼間から溺愛スキンシップに至った比良に照れまくり、むず痒さがどんどん溢れてきて、柚木は縮こまる。


「に、二階も見たい、二階行きたい、おれ」
「柚木、もう二階に行きたい気分なのか?」
「へ……?」


自分よりも逞しい腕の中でもぞもぞ動き、真後ろに迫る比良を怖々と仰ぎ見れば。


「もうベッドに行きたいの?」


くすぐったそうに笑う男前彼氏からおでこにキスされた。


「ひッ」


柚木はガチめの悲鳴を上げる。


前髪が目元にかかりそうになっている、いつになく頬が緩みがちな、平凡男子を溺愛したい欲がこれでもかと高まっている比良の熱い眼差しに心臓が溶けそうになった。


「比良くん、おれのことそんな見ないで、あっち向いて」
「そんなの無理だ」


即、拒まれて、さらに顔を近づけられて。
柚木は酸欠の金魚みたいに口をパクパクさせた。


「それ、俺に甘えてる?」
「違うっ……比良くん、なんか……いつも以上に……積極的……ですよね……?」
「だって柚木と別々のクラスになったから」


まだクラス替えのこと引き摺ってるんですか、このパーフェクト男前氏。


「今までと比べて一緒にいる時間が明らかに減った」


あちこちへ視線を泳がせている柚木の挙動不審ぶりを一切気にせず、比良は、正直に告げる。


「教室に柚木がいないと淋しい」


ヒィィ……おれの心臓、お願いだから溶けないで、カタチ保って……。


「いないってわかっていても、時々、授業中に柚木のこと探してるんだ」
「さ、探してもいませんから、いたらドッペルゲンガーだから、それ」
「だから」


今度はほっぺたにキスされて。
柚木の心臓はグツグツ沸騰しそうになった。


「せめてこの三日間だけは俺の視界にずっといてほしい」


あ。
キャパオーバーだ、これ。
この三日間で、おれの心臓、跡形もなく溶けてなくなっちゃうかもしれない。




しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

バスケ部のイケメン先輩に誘惑されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 他にも書きたいのがいっぱいある。

趣味で乳首開発をしたらなぜか同僚(男)が近づいてきました

ねこみ
BL
タイトルそのまんまです。

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

あの頃の僕らは、

のあ
BL
親友から逃げるように上京した健人は、幼馴染と親友が結婚したことを知り、大学時代の歪な関係に向き合う決意をするー。

振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話

雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。  諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。  実は翔には諒平に隠している事実があり——。 諒平(20)攻め。大学生。 翔(20) 受け。大学生。 慶介(21)翔と同じサークルの友人。

冴えないおじさんが雌になっちゃうお話。

丸井まー(旧:まー)
BL
馴染みの居酒屋で冴えないおじさんが雌オチしちゃうお話。 イケメン青年×オッサン。 リクエストをくださった棗様に捧げます! 【リクエスト】冴えないおじさんリーマンの雌オチ。 楽しいリクエストをありがとうございました! ※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。

寝てる間に××されてる!?

しづ未
BL
どこでも寝てしまう男子高校生が寝てる間に色々な被害に遭う話です。

処理中です...