目には目をアルファにはアルファを

石月煤子

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「だから、ここに留まるのは俺だけでいい。あの子は関係ない。今すぐ帰してくれ」

下校途中で伊吹生はガラの悪い男二人に呼び止められた。

今の心春の姿を携帯で見せられ、一も二もなく案内されるがままここへやってきた。

「随分と後輩思いなんだねぇ」

首謀者がこのアルファだとわかったとき、凌貴に付き纏われている自分はともかく、まさか心春まで巻き込んでしまうとは……と自責の念に駆られた。

「うーん。確かにこのベータは伊吹生くんを大人しくしてスムーズに招く要員だったわけで、もう用済みではあるかな」

声に掠れがあるのは喉を潰された後遺症なのかもしれない。

ハイネックを着たアルファのリーダー格はわざとらしく腕組みし、やや離れた位置にいる伊吹生と心春を見比べた。

「使い道は山ほどありそうじゃね?」

横にいたベータの男に頭を撫でられて、中学三年生の心春はビクリと肩を震わせる。

「触るな!」

伊吹生は叫んだ。

次の瞬間、目の前にいたアルファのリーダー格から思いきり平手打ちされた。

「びっくりした~、いきなり大声出すとかマナーがなってなくない? 駄犬じゃないんだからさ? アルファとしての自覚、ちゃんと持とう?」

打たれた頬が熱を帯びてジンジンとしてくる。
唇の端を切ってしまい、口の中に血の味が広がった。

「……凌貴を陥れたいのなら協力する、何でもやる。だから心春は帰してください。お願いします」

日焼けに疎い色白の頬を赤くさせた伊吹生は彼等に頭を下げた。

(明日、心春は卒業式だ)

最初に声をかけてきた半グレから、警察や通行人に助けを求めれば即座に心春を……と脅され、移動の間は何もアクションを起こせなかった。

全開のブレザーに緩めたネクタイというダークカラーの制服姿で後ろ手に拘束されており、なおかつ多勢に無勢でどうすることもできない。

心春が無事でいられるよう、今はただ懇願するしか……。

「う」

心春が呻吟した。

バーのオーナー兼半グレ組織のボスらしき、首にびっしりとタトゥーをいれた男が猿ぐつわを外してやれば数回咳き込み、声を絞り出す。

「カノジョなわけない」

心春を逃がしたい一心だった伊吹生は瞠目した。

「イブキ先輩は被害者。最低最悪の暴君に振り回されてるだけ。みんな誰だか知らないけど、噂だけで適当に判断して能天気もいいとこ――」
「心春、やめるんだ」

危うい発言を咄嗟に遮れば、目隠しされたままの心春はぎこちなく伊吹生の方へ顔を傾けた。

「真っ向から暴君に挑めないアルファも、ジメジメした地下で群れてるような奴等も、怖くない」
「心春」
「凌貴だって怖くない。だからイブキ先輩は気にしないで逃げて。ここから……アイツの元から……お願い」

震えながらも必死になって言葉を繋いだ後輩の少女に伊吹生は眉根を寄せた。

(俺は凌貴に逆らえない)

先月、教室で凌貴にキスされてゴシップはあっという間に学園内に広がった。

伊吹生は否定も肯定もしなかった。

兄の件で凌貴を警戒していた心春からも真偽を問いただされ、はぐらかしたが、常に引っ掛かっている様子だった。

(心春は気づいたのかもしれない、俺にとって大切な存在が凌貴の人質にされていること……)

――キィ……――

伊吹生はハッとした。

店の出入り口である、やたらと重たいスチール扉がゆっくりと開かれていく。

「凌貴」

この場にはひどく不似合いな、制服を規則正しく着用した彼の来店に伊吹生の心臓は戦慄いた。




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