正義の美形ヒーローは悪のマッドサイエンティストにイタズラしたい

石月煤子

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俺様、七狗(なないぬ)は何を隠そうマッドサイエンティストだ。
世界征服を第一目標に掲げる悪の組織「コクローチ」でこつこつ禁断の実験を繰り返してはどぎついクリーチャーなんぞを生みこしらえている。
俺様、すごいんだぞ、頭いいんだぞ!

「市民に危害をくわえるなど言語道断、許さないぞ、コクローチ」

ああ、また来やがった、正義のヒーロー戦隊リーダー・赤紫(あかむらさき)だ。

「きゃー! 赤紫様よ!」
「こっち向いてぇ!」

ああ、まじむかつく、顔よくてスタイルよくて髪はサラサラ、老若男女人気ナンバーワンの美形ヒーロー。
俺様、こういうタイプまじでダメ、だいっきれぇ。

「コクローチ」でも浮くくらい根暗の口下手でちゃんと八時間睡眠とってんのにいつも目の下クマびっしり、友達は餌付けしてるカラスだけ。
そんな俺様は爽やかイケメンヒーロー赤紫のプライドをとことん挫くような毒薬作りに成功した。
ザマァミロ、これで貴様もこっぱずかしい思いしやがれ、赤紫め。
だが、しかし、俺様ってとことん神様に嫌われてるのか。
軟弱な俺様、毒薬入り瓶を大きく振りかぶって投げるつもりが、慣れない動作に手元が狂って自分自身に瓶を落っことしてしまい。

びしゃあ!

もろに毒薬をかぶってしまった、ガーン。


***


僕、赤紫は悪の組織「コクローチ」から市民を守るヒーロー戦隊リーダーだ。
いきなり告白するが僕には好きな人がいる。

「てめっまた邪魔しやがって……おおっ覚えてやがれ……!」

決して目を合わせない、ネクタイの結び目位置ばかり見ている、挙動不審で、ファンタジーな生き物を模した愛らしい動物もどきを連れている、悪の組織「コクローチ」お抱えのマッドサイエンティスト、七狗。

抱き枕にしてしまいたい。
いろいろイタズラしたい。
しかも、小ガラスのような外見でただでさえかわいい七狗が、僕の目の前で。

「ああああ~~……しまったぁ……」

どろどろの液体をかぶったかと思うと、たちまち、幼児化した。
陰日向の似合う青年だった姿がランドセルを背負う年頃の男子児童となり、白衣はぶかぶか、ズボンはウェストが足らないためにすとんと足元に落ち、まさかの生足披露。

どくっどくっどくっどくっ

僕の心臓は死ぬのではないかというくらい鼓動した。

「ど、どうしよぉ……まだ解毒剤もつくってないのにぃ……ふえ……っ……ふえええ~」

まずい、勃起した。
仲間にばれないようにしなくては。

「赤紫、どうする、本部に連行するか?」
「なんか益々可哀想になっちゃったな」
「見ろよ、あんなにカラスに心配されて」
「……母性本能くすぐられちゃう」

まずい、青はともかく緑と黄色とpinkが七狗の魅力に気づき始めているじゃないか。

「僕が始末する」
「「「え、なに、急に?」」」
「あんな赤ちゃんカラスのような姿になろうと彼はコクローチの一員、僕が責任もって始末しよう。とりあえず自宅に連れ帰ってシャワーを浴びさせて一息つかせたら有名パティシエの夕方には完売必須のスイーツをご馳走する」

勃起がばれないよう、少々ぱにくっていた僕は余計なオプションまでぽろりとこぼしつつも、首を傾げている仲間を残し、泣きじゃくる七狗の手を引いてその場を後にした。


***


俺様、だいっきれぇな赤紫自宅の高級マンションに連れてこられた。
ぼろぼろ流れていた涙が引っ込むほどの室内の凄まじい散らかりように絶句した。
とりあえずシャワーを浴びて、用意されていたぶかぶかのシャツを着て出てみれば、赤紫は部屋からいなくなっていた。

あいつ、案外いい奴なのかも。

他の奴らは「始末しよう」って言ってたらしいが、リーダーの赤紫がみんなを説得し、一先ず自宅保護で様子見、ってことにしてくれたんだと。
礼の一つとして掃除でもしてやっか。

俺様、頭を巣の代用にしているカラスを乗っけたまま、とっ散らかった部屋の掃除を始めた。
間もなくして赤紫が帰ってきた。
片手に小さな箱、片手にビニール袋と鳥篭を提げている。

「七狗……君、掃除してくれているのか?」
「ば……! ううっうるせ……っべべ別に……お掃除なんか……ひっ暇だったからだ! 別に……助けてもらったお礼とかじゃねぇぞ……! でででも……ん……ありがとな……」

どさっ

赤紫は荷物をその場に落としてしまった。
な、なんだ?



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