おさななゆうしゃ

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アンダンテ

1人よりは2人

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俺、フィン・ダ・カートには、唯一幼馴染が居る。幼馴染は“星の勇者エトワール”に選ばれたアステル・ワーデンだ。

5つくらいの時だったと思う。

俺はどっかから拾われてきた。
どこかは知らない。
でも肌の色が周りより濃く、特徴的な銀髪だった。見事に村の同世代から爪弾きにされた。
そっちが爪弾きにするならと俺もひとりを選んでいた。

アステルに出会ったのは村に来てから2年が経った頃だったと思う。

俺が商人にねだりまくって貰った魔法書を村はずれの木の下で読んでた時に、アステルは隣に座ってきた。
それが始まりで、定期的にアステルは俺のそばで座って静かにしてた。

特に会話もなくただアステルは俺のそばにいた。

それからアステルと過ごすうちに警戒心を解き、すっかり慣れてしまった頃に俺がアステルをサボりに連れ出したり、危険だから入ってはダメと言われてた森を探検に連れて行ったりしてた。

そんな日常、あれは本当に突然だった。
眉間の少し上に光り輝く星のマークが現れた。
俺はその日を鮮明にでは無いけど覚えている。

一緒に親や村の人に内緒で魔法の練習していたら、突然光出したからだ。昼間でもわかる光量に目がやられた。
そしてこっそり村仕事をサボって魔法の練習してたこと、勝手に森に入ってたことを叱られた。



それからあいつは大人に混じって警備団の訓練に行って遊ばなくなり、俺も俺で魔法の才能に目覚め、王都で試験を受けて合格し、最年少で“黒の魔法使いブラックカラー”という魔法使いの仲間入りを果たし、装備一式を授かった。
正装まで貰えるなんて太っ腹だな。

ブラックカラーは大きな括りでこれから魔法の個性を成長させると改めて名を貰える。
まだ見習いみたいなもん。

村に帰ると村の人たちが泣いて喜んでくれてた。
口を揃えてよかったな、がんばったな、安泰だと話していた。
爪弾きにしていたくせに、調子がいいもんだ。

王都から戻った日の夜、久々にアステルの姿を見た。

そう、見ただけ。
子供の頃と違うあいつの姿は、俺が魔法使いになるまでにかかった時間の経過を感じさせる。

あいつは俺に興味ない。
俺もあいつには興味がない。

ただ村の同世代に馴染めなかった2人ってだけ。


多分10年くらいまともに会話してないし、子供の頃も会話した記憶は欠片ほどしかない。

あいつは明日、村を発つらしい。
母親が俺と一緒に王都に戻る時に言ってた。


この世界の魔王とやらを倒しに行くらしい。

俺の村は魔王とか魔族とかの影響をほとんど受けてないからパッとしない。
出立の前夜だから、村も盛り上がっていた。

その盛り上がりがむしろあいつの姿を寂しく見せているような気がした。

ーーー
ーー

翌朝



「フィン!起きな!アステルが村を出発する…って、……フィン?」

母親がけたたましくフィンの部屋の扉を開けてもフィンの姿はどこにもなかった。


ただ置き手紙だけ残して。

ーー



アステルはお下がりの寄せ集めの装備を付けて、村を発った。
村人総出の見送りを背に。



村が遠く見えなくなった頃に


「おせぇよ。」


アステルは知ってる声に顔をハッとさせる。

「村のハズレもの同士、仲良く行こうぜ。」


昔からよく知ってる意地の悪い笑みを浮かべる彼の姿に、アステルも口角を上げた。














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