2 / 5
ラルゴ
どこ吹く風
しおりを挟む
真っ直ぐ道なりに進むだけの単調な旅の始まり。
はぁ、これがずっと続くのかと考えると頭も気分も疲れてしまうため、持っていた歩く時にいい感じの杖を肩に乗せ、荷物をかける。
両手が空いたので歩きながら魔導書に目を通す。
魔導書と言っても魔法は個人によって全くと言っていいほど違うため、参考程度にしかならない。
魔法は個性みたいなもので、詠唱のやり方も違うしそもそも詠唱が必要かどうかまで違う。
魔法の使い方っていうより、魔法の発現、発想、連想のきっかけだったりが書かれている。
構造は全くと言っていいほどわかってない。
黒の魔法使いって括りはあっても魔法の唱え方や使う魔法など全て違う。
ま、みんな違うんだから分かるわけないよな。
だから片っ端から試すしかない。
魔力についても生命力を削って、だの、精神力がどうのだとか。
なんもわかっちゃいないから、とりあえず初めて読んだ魔法書に魔法エネルギーとやらを貯めておくのに必要だと書かれてた髪だけは伸ばしてる。
邪魔だからひとつに括って後ろにほっといてるけど。
チラリと横目でアステルを見れば、前だけ見て歩いてる。
お前には暇だとか退屈とかそういう概念はないのか。
「アステル、お前ただ歩くだけって暇じゃねぇの?」
思わず聞いてしまった。
「…フィンがいるから楽しいよ?」
「え、会話もなく歩いてるだけだぞ?」
「うん?」
ダメだこいつの言ってる事が全く理解できん。
太陽に反射してアステルの金髪が神々しく光ってる。
眩しい。
「まぁいい。このまま進んで最初に着くのが、カルテンか…歩いて3日ってとこだな。」
「うん。」
「カルテンは王都からの帰りの馬車で俺も通った。一昨日くらいに。」
「うん。」
じっとアステルの顔を見る。
「え、なに?」
「お前の語録には うん しか存在しないのか?」
キョトンとするアステル。
はぁ、…先は長いぜ。
ーーー
日が暮れてきて魔法書の文字が見えずらくなってきた。
そろそろ野営か。
魔法書を閉じて周辺を見渡す。
総じて森。草原。
「アステル、道逸れるぞ。」
「うん。」
草原で馬鹿らしく襲って下さいと言わんばかりに野営はしない。
森に逸れて夜と森の闇に身を隠しながら野営するのが一般的。
そう、一般的にはな。
「…アステル、眩しい。」
ぺかーっと篝火のように自発光するこいつにどう一般論を当てはめようか。
まぁいいか、光源確保っと。
道無き森を歩く時はもっと苦労するんだけどな。
見えない恐怖と戦いながら歩くはずなんだけどな。
いやぁこれは楽ちん。
光があるだけで人はこんなにも安心できるとは。
「あ、こっちだ。アステル行くぞ、水の音がする。」
音のなる方へ歩くと、なんとまぁちょうどいい水源もとい小さな池。
ないよりマシ。
「すごいねフィンは。」
「まぁ、たまたまだな。」
ただの偶然
「今夜はここで夜を明かすとして、もうかなり暗いから焚き火で、暖と灯りを…」
ここで俺は気づいた。
光はあるな。
このぺかーっとアホみたいに光ってるこいつ。
「…フィン?」
「焚き火いるか…?」
割と本気で悩んで、薪を集めに向かう俺。
なんで光ってるこいつに行かせないかって?
暗闇で光って小さくてもわかりやすいんだよな。
まぁご想像の通りに多少離れても光は漏れて見えるので迷子にならず合流しやすい。
近場で木を集めて戻る。
薪をいい感じに積んで、っと。
「魂火」
青白く光る手のひらサイズの火を薪に放り投げる。
俺って優秀~。割となんでもできちゃうわ~。はい拍手~。
「…飯にするか。」
干し肉ともはや保存が目的になっているだろう硬すぎるパンを自分の荷物から取り出す。
アステルも同じものを取り出してた。
ーー
「かっっっったすぎるだろこのパン!なんだこれ!」
という俺の横でバリっボリっとパンらしからぬ音を奏でながらアステルは平然と食べていく。
勇者ってみんなこうなの?
フィジカルバカになっちゃうの?
まじで???
アステルに引きながら諦めて干し肉を貪り、地面に横になる。
「アステル、寝ていいぞ。」
「あ、うん。」
夜は俺の時間ってか~。
なんか俺の魔法って黒の魔法使いの括りから若干外れてる気がするんだよな~。
はぁ、これがずっと続くのかと考えると頭も気分も疲れてしまうため、持っていた歩く時にいい感じの杖を肩に乗せ、荷物をかける。
両手が空いたので歩きながら魔導書に目を通す。
魔導書と言っても魔法は個人によって全くと言っていいほど違うため、参考程度にしかならない。
魔法は個性みたいなもので、詠唱のやり方も違うしそもそも詠唱が必要かどうかまで違う。
魔法の使い方っていうより、魔法の発現、発想、連想のきっかけだったりが書かれている。
構造は全くと言っていいほどわかってない。
黒の魔法使いって括りはあっても魔法の唱え方や使う魔法など全て違う。
ま、みんな違うんだから分かるわけないよな。
だから片っ端から試すしかない。
魔力についても生命力を削って、だの、精神力がどうのだとか。
なんもわかっちゃいないから、とりあえず初めて読んだ魔法書に魔法エネルギーとやらを貯めておくのに必要だと書かれてた髪だけは伸ばしてる。
邪魔だからひとつに括って後ろにほっといてるけど。
チラリと横目でアステルを見れば、前だけ見て歩いてる。
お前には暇だとか退屈とかそういう概念はないのか。
「アステル、お前ただ歩くだけって暇じゃねぇの?」
思わず聞いてしまった。
「…フィンがいるから楽しいよ?」
「え、会話もなく歩いてるだけだぞ?」
「うん?」
ダメだこいつの言ってる事が全く理解できん。
太陽に反射してアステルの金髪が神々しく光ってる。
眩しい。
「まぁいい。このまま進んで最初に着くのが、カルテンか…歩いて3日ってとこだな。」
「うん。」
「カルテンは王都からの帰りの馬車で俺も通った。一昨日くらいに。」
「うん。」
じっとアステルの顔を見る。
「え、なに?」
「お前の語録には うん しか存在しないのか?」
キョトンとするアステル。
はぁ、…先は長いぜ。
ーーー
日が暮れてきて魔法書の文字が見えずらくなってきた。
そろそろ野営か。
魔法書を閉じて周辺を見渡す。
総じて森。草原。
「アステル、道逸れるぞ。」
「うん。」
草原で馬鹿らしく襲って下さいと言わんばかりに野営はしない。
森に逸れて夜と森の闇に身を隠しながら野営するのが一般的。
そう、一般的にはな。
「…アステル、眩しい。」
ぺかーっと篝火のように自発光するこいつにどう一般論を当てはめようか。
まぁいいか、光源確保っと。
道無き森を歩く時はもっと苦労するんだけどな。
見えない恐怖と戦いながら歩くはずなんだけどな。
いやぁこれは楽ちん。
光があるだけで人はこんなにも安心できるとは。
「あ、こっちだ。アステル行くぞ、水の音がする。」
音のなる方へ歩くと、なんとまぁちょうどいい水源もとい小さな池。
ないよりマシ。
「すごいねフィンは。」
「まぁ、たまたまだな。」
ただの偶然
「今夜はここで夜を明かすとして、もうかなり暗いから焚き火で、暖と灯りを…」
ここで俺は気づいた。
光はあるな。
このぺかーっとアホみたいに光ってるこいつ。
「…フィン?」
「焚き火いるか…?」
割と本気で悩んで、薪を集めに向かう俺。
なんで光ってるこいつに行かせないかって?
暗闇で光って小さくてもわかりやすいんだよな。
まぁご想像の通りに多少離れても光は漏れて見えるので迷子にならず合流しやすい。
近場で木を集めて戻る。
薪をいい感じに積んで、っと。
「魂火」
青白く光る手のひらサイズの火を薪に放り投げる。
俺って優秀~。割となんでもできちゃうわ~。はい拍手~。
「…飯にするか。」
干し肉ともはや保存が目的になっているだろう硬すぎるパンを自分の荷物から取り出す。
アステルも同じものを取り出してた。
ーー
「かっっっったすぎるだろこのパン!なんだこれ!」
という俺の横でバリっボリっとパンらしからぬ音を奏でながらアステルは平然と食べていく。
勇者ってみんなこうなの?
フィジカルバカになっちゃうの?
まじで???
アステルに引きながら諦めて干し肉を貪り、地面に横になる。
「アステル、寝ていいぞ。」
「あ、うん。」
夜は俺の時間ってか~。
なんか俺の魔法って黒の魔法使いの括りから若干外れてる気がするんだよな~。
0
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
奥様は聖女♡
喜楽直人
ファンタジー
聖女を裏切った国は崩壊した。そうして国は魔獣が跋扈する魔境と化したのだ。
ある地方都市を襲ったスタンピードから人々を救ったのは一人の冒険者だった。彼女は夫婦者の冒険者であるが、戦うのはいつも彼女だけ。周囲は揶揄い夫を嘲るが、それを追い払うのは妻の役目だった。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる