練習台のドブネズミ

なすみそ

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8 side レオンハルト

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*5年後*


久々届いたエドワルドからの定期的な手紙は特に面白い内容では無かった。

アーヴェントとミオが魔界に行った後、しばらくしてエドワルドは隣国に嫁ぎ、前国王が亡くなりレオンハルトは若くして国王になった。

エドワルド派、第二王子派の貴族達は何故か相次いで体調を悪くしたり、不幸が続き一線を退いた。

彼がレオンハルトの仕事を評価したのだろうか。

レオンハルトとしてはエドワルドがいようといまいと別にどちらでもよかったが、エドワルドはミオとの思い出が詰まったこの城にいるのは辛いようだった。


「残念だったな、エドワルド」

レオンハルトはクスッと笑いながら暖炉の火へ手紙を投げ入れた。
今でも可笑しくて可笑しくてたまらない。

レオンハルトの母、ロミリアはこの国の男爵令嬢であった。対してエドワルドの母親は大国の姫。

姫の性格は傲慢で、苛烈なものであった。レオンハルトは親子共々、何度命を狙われたかわからない。

父はレオンハルトの命を守ろうと、エドワルドを次の国王にしようとした程だ。

レオンハルトとエドワルドは仲が悪いわけではない。

エドワルドは母親に似ず、明朗闊達な性格で、自分は貴族社会に向かないからとあくまでも王の盾となるつもりなようだった。

どう動くべきか、レオンハルトは日々悩んでいた。

そんな時だった。ロミリアが意気揚々としてレオンハルトに告げたのは、

「喜べレオンハルトよ!ついに魔族と契約出来そうじゃぞ。しかも魔侯貴族じゃ」

魔族にもランクがあるようで、最上位の魔族が釣れた事にロミリアは歓喜していた。

この頃のロミリアは毎日北の塔に籠もっては、召喚術の研究をしていた。

ロミリアが男爵令嬢という身分でありながら、王族に迎えられたのは、彼女が祈祷やまじないに長けていたからである。

最初は王都に結界を張ったり、日照りが続く地域があれば祈祷をしたりと懸命に働いてきたロミリアだったが
度重なるエドワルドの母からの嫌がらせ、さらに国王が平民との間に子をもうけていた事が判明、さらに息子のレオンハルトは冷遇されている。

ロミリアの中で何かが崩れてしまったようだ。

魔術研究と称しては魔族召喚の魔法陣を描き、悪魔が好みそうな美男美女や高い魔力を有した者等の髪を供えた。

塔の中には天人族のような美しい魔族がいた。

「彼は本当に魔族なのですか?」

そう言ってみて、彼の真紅の双眸に気づき背をゾクリとさせた。

「あの高貴な方に選ばれた生け贄には誰じゃと思うか?」

ロミリアは嬉しそうに聞いてきた。

「まさか、エドワルドですか?」

「ふふ、近いかな。エドワルドの従者、ミオじゃ」

エドワルドが大切にしている従者のミオ。ぴょこぴょことエドワルドについて回る可愛らしい少年を思い出す。

「ふふふ。アーヴェント様は自分の子供を産ませる為に人間を飼う事にしたらしいのじゃ、魔族には子供が出来やすい相性という者がわかるらしい」

「ミオは男ですが…」

「身体を作り替えるらしい、ちょっと楽しみじゃの。なんでも人間の繁殖力は魔界でも話題なんだと!
ふふふ、ちなみにうっかりアーヴェント様の真名を呼んではいけないからね?」

母はとても楽しそうにはしゃいでいる。

「では、アーヴェント様のために、ミオちゃんを堕とす作戦開始じゃ!」

まずはエドワルドに警戒されないように近づく。

魔族はすぐさま城中に、アーヴェントは公爵家の次男でエドワルドの幼馴染という記憶を城内の者に植え付け、ミオに近づいた。

ところがアーヴェントがあの美貌でどんなに甘く接しても、ミオは靡く様子を見せなかった。

一年経っても大好きなエドワルドのお友達だから好き!という位の友人としての好意しか得る事が出来なかったのだ。

いらだつ様子のアーヴェントに慌てた親子は、エドワルドとミオを物理的に引き離す事にした。

魔力の低い国王陛下とエドワルドの母親は王家の加護があるにも拘わらず、すぐに傀儡となったので、隣国との婚約を進めるのは容易かった。

エドワルドの婚約が進むにつれ、寂しそうな様子を見せる事が増えたミオは、城中の者の加虐心を一身に煽った。

「最近余計な虫ばかり寄ってきて、全部殺してもいいか?」

わざわざ確認せずとも魔族が人知れず始末している人間がいる事をレオンハルトは知っていた。

「ふぅ、貴方も我々に頼りきりにならずに自分で考えて下さいよ。
隣国の姫に自殺未遂させるとか出来ないのですか?
流石に国家間の問題になりそうであればエドワルドもこの国を離れざるをえません」

アーヴェントはちょくちょくレオンハルトの部屋を訪れては、ミオのどこが可愛い、あの仕草が可愛いと惚けまくり、恋愛相談のような事をされる。

恋愛などする暇など無かったレオンハルトやロミリアにわかるわけがなく、2人は恋愛小説などを頼りに魔族にアドバイスした。

「なるほど」

今まで一方的に崇拝されるばかりであったのだろう、魔族はミオを振り向かせる行動が皆目わからないようだった。
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