妻×恋

かのん

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愛されたい③

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「私が雅人を好きな気持ちと、雅人の私への好きな気持ちは違うの」


「愛莉、離婚……しないの?」


「雅人も言っていたけど……一緒に暮らすのは楽しい。幸せだなって思う。ただ、セックスが問題なの……だから、私が我慢すればそれでいいかなって……やっぱまだ雅人のことが好きなんだよね、私」


「愛莉……飲もう、今日は飲もう!」


「明日もまた仕事だよ、幸……子供も旦那さんも幸のこと待っているよ。話、聞いてくれてありがとう」


「いや、でも……あっ……」


「旦那さんからなんじゃない?」


「……子供がママじゃなきゃ寝ないって……ごめん、愛莉」


「大丈夫だよ、話聞いてくれてありがとう。本当に、ありがとう」


「愛莉……私は愛莉の味方だから」


ギュッと抱きしめてくれた幸からは
良い香りと
人の温かさを感じた。



幸と別れてから
目の前にあるビールの気泡を眺めていた。
下から上へと静かにあがっていく
ゆっくりと……
私も今は下にいるけど上に行ける。
そう決意して残りのビールを一気に飲み干した。


「亮二、なんだか場所借りちゃってごめんね、開店前なのに」


「……帰るの?」


「え……うん。家に帰るよ」


「……一緒に帰る?」




「え?」


「たまには実家に帰ってあげなよ」


亮二とうちはお向かいで、亮二の両親はアメリカに行っていて1人でそこで暮らしている。
私は、結婚した当初は実家に顔を出していたけど
今は一年に一回顔を出せばいいほうだ。


「明日も仕事だし……」


「今の家からも実家からも会社へは同じぐらいだろ」


「……着替えとかないし」


「……おばちゃん心配してたよ」


「私の心配じゃなくて、孫の心配でしょ」


実家に帰らなくなったのは
孫の催促が始まったから。
孫を催促されたって……
できないんだよ。


「もう暗いんだから、気を付けて帰れよ」


「ありがとう、これお代ね……またね、亮二」


「愛莉!」


「び、びっくりした……大きな声でどうしたの?」


「無理するなよ、あんまり」


「あ……うん。ありがとう」


亮二から見て、私の顔はすごい顔しているのだろうか。
心配されるぐらい……
こんな顔で雅人に会うのは嫌だけど
雅人も心配してくれるのだろうか。


「ただいま……」


もしかしたら雅人は家に帰って来ていないかもしれない。
そう思いながら家に帰ってきたけど
玄関には靴があって、少しほっとした。


まだ少し……私にもチャンスはあるのだろうか。


「雅人……?」


ドアを開けると雅人はソファに横たわって寝ていた。
私たち夫婦は、セックスレスでもベッドでは
いつも一緒に寝ていた。
だけど……今日は、雅人は毛布をソファにもってきていた。
それは、きっともう一緒にベッドでは寝ないというサイン。
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