26 / 27
覚えている快感④
しおりを挟む
「愛莉……今まで辛かったな」
頭を撫でられるのは
何年振りだろう。
優しく頭をなでて、おでこにキスをしてくる。
この人はいつもそう。
いつも優しくて、欲しい言葉もくれて、大事にしてくれる。
だけど――
“ピリリリリッ”
「……はい。あ、うん……え?今から?」
そうだ、別れた理由を思い出した。
春樹は私にすごく優しくて彼氏としては申し分なかった。
だけど、誰にでも優しかった。
今の電話だって女の子が泣いて電話してきている。
きっと、この娘も春樹のことが好きなんだ。
春樹が電話をしている間に起き上がって
身支度を整えて、バッグを手に取った。
「愛莉?」
「春樹……ごめんね、今日は迷惑をかけて。私帰るね」
「ちょっと待って!」
「春樹…今から電話してきた子のところに行くんでしょ?」
「そうだけど……」
「春樹のそういうところが好きで、大好きで……大嫌いだった」
「愛莉!」と名前を呼んでいる声が聞こえたけど
振り返らずに部屋から出た。
私、何しているんだろう。
セックスレスだからって、元カレに言い寄られて
フラフラと……こんな自分が嫌になる。
街には色んな人がいる。
お酒を飲みすぎて私みたいに歩けなくてうずくまっている人。
友達と一緒にワイワイ言いながら楽しそうに歩いている人。
泣きながら歩いている人。
あきらかに不倫だとわかるカップル
今日の私は、元カレをホテルに行ってキスをして……
私も不倫と思われても仕方ない行為をしてしまった。
離婚もしてくれない
でもセックスもしてくれない。
春樹の言う通り、紙切れ一枚のせいで
男の人と抱き合う喜びを知ることができなくなる。
誰かに必要とされることも
もう、ないのかな……
「ん……」
「やっと起きた」
「亮二……痛っ」
「ほら、水」
「ありがと……え?何で、お店?」
誰もお客のいないバーカウンターでうつ伏せで寝ていたらしく、顔をあげると身体のあちこちが痛い。
頭もガンガンに痛いけど……
「覚えていないだろうな……閉店後、愛莉が自分でこの店に来たんだよ」
「え!?今何時!?」
「7時だよ」
携帯を見ると7時過ぎていて……だけど悲しいのは妻が朝帰りだというのに夫からの着信もラインも何もないことだ。
「朝ごはん食う?」
「ううん……亮二、ごめんね迷惑かけて」
「お前はさ……」
「え?」
「いっつも謝ってばっかだな」
「だって、実際迷惑かけているし……」
「俺は、嬉しかったよ」
「え?」
「高校の時から、ずっと好きだった、愛莉のこと」
「でも、私と雅人のことを……」
「そうだよ、ずっと応援してきた。愛莉が幸せなら……雅人ならきっと愛莉を幸せにできるからって、自分に言い聞かせてきた」
「亮二……」
「だけど、もう我慢しない。俺は絶対愛莉を幸せにするから」
「でも、私……」
「すぐに離婚できないんだろ?俺は待っているから。だから、考えてほしい。今度2人で出かけよう」
「2人でって……私まだ雅人と……」
「身体の関係を持つわけじゃない。ただ、俺のことを男として意識してこれからを考えてほしいんだ」
「でも、そんなの、亮二にも雅人にも悪いよ」
「プラトニックな恋でもダメ?」
離婚もできない、セックスもできない。
でも、プラトニックな恋なら……?
このまま寂しい人生を送るなんて悲しすぎる。
亮二の言う通り、せめて誰かに愛されて、必要とされたい。
恋ぐらい、したい。
一般的にはダメかもしれないけど
今の私は、すがりたいの。
頭を撫でられるのは
何年振りだろう。
優しく頭をなでて、おでこにキスをしてくる。
この人はいつもそう。
いつも優しくて、欲しい言葉もくれて、大事にしてくれる。
だけど――
“ピリリリリッ”
「……はい。あ、うん……え?今から?」
そうだ、別れた理由を思い出した。
春樹は私にすごく優しくて彼氏としては申し分なかった。
だけど、誰にでも優しかった。
今の電話だって女の子が泣いて電話してきている。
きっと、この娘も春樹のことが好きなんだ。
春樹が電話をしている間に起き上がって
身支度を整えて、バッグを手に取った。
「愛莉?」
「春樹……ごめんね、今日は迷惑をかけて。私帰るね」
「ちょっと待って!」
「春樹…今から電話してきた子のところに行くんでしょ?」
「そうだけど……」
「春樹のそういうところが好きで、大好きで……大嫌いだった」
「愛莉!」と名前を呼んでいる声が聞こえたけど
振り返らずに部屋から出た。
私、何しているんだろう。
セックスレスだからって、元カレに言い寄られて
フラフラと……こんな自分が嫌になる。
街には色んな人がいる。
お酒を飲みすぎて私みたいに歩けなくてうずくまっている人。
友達と一緒にワイワイ言いながら楽しそうに歩いている人。
泣きながら歩いている人。
あきらかに不倫だとわかるカップル
今日の私は、元カレをホテルに行ってキスをして……
私も不倫と思われても仕方ない行為をしてしまった。
離婚もしてくれない
でもセックスもしてくれない。
春樹の言う通り、紙切れ一枚のせいで
男の人と抱き合う喜びを知ることができなくなる。
誰かに必要とされることも
もう、ないのかな……
「ん……」
「やっと起きた」
「亮二……痛っ」
「ほら、水」
「ありがと……え?何で、お店?」
誰もお客のいないバーカウンターでうつ伏せで寝ていたらしく、顔をあげると身体のあちこちが痛い。
頭もガンガンに痛いけど……
「覚えていないだろうな……閉店後、愛莉が自分でこの店に来たんだよ」
「え!?今何時!?」
「7時だよ」
携帯を見ると7時過ぎていて……だけど悲しいのは妻が朝帰りだというのに夫からの着信もラインも何もないことだ。
「朝ごはん食う?」
「ううん……亮二、ごめんね迷惑かけて」
「お前はさ……」
「え?」
「いっつも謝ってばっかだな」
「だって、実際迷惑かけているし……」
「俺は、嬉しかったよ」
「え?」
「高校の時から、ずっと好きだった、愛莉のこと」
「でも、私と雅人のことを……」
「そうだよ、ずっと応援してきた。愛莉が幸せなら……雅人ならきっと愛莉を幸せにできるからって、自分に言い聞かせてきた」
「亮二……」
「だけど、もう我慢しない。俺は絶対愛莉を幸せにするから」
「でも、私……」
「すぐに離婚できないんだろ?俺は待っているから。だから、考えてほしい。今度2人で出かけよう」
「2人でって……私まだ雅人と……」
「身体の関係を持つわけじゃない。ただ、俺のことを男として意識してこれからを考えてほしいんだ」
「でも、そんなの、亮二にも雅人にも悪いよ」
「プラトニックな恋でもダメ?」
離婚もできない、セックスもできない。
でも、プラトニックな恋なら……?
このまま寂しい人生を送るなんて悲しすぎる。
亮二の言う通り、せめて誰かに愛されて、必要とされたい。
恋ぐらい、したい。
一般的にはダメかもしれないけど
今の私は、すがりたいの。
0
あなたにおすすめの小説
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる