美人なのに不人気?逆モテ異世界の真実

かのん

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牙を剥く執着牙を③

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カイルの店での修行が始まって一週間。私の体は悲鳴を上げていた。
朝四時の起床、重い石臼での粉挽き、熱気に包まれる窯の前での作業。
前世の私が一度も経験したことのない重労働。
けれど、鏡を見る暇もないほど泥と粉にまみれる時間は、不思議と私の心を研ぎ澄ませていた。

しかし、ガロンの執着は、暴力よりも陰湿な形で私たちを追い詰め始めた。

「……またか」

カイルの苦々しい声が響く。市場から戻った彼の荷車は、ほとんど空だった。

 「どこの問屋も、俺には麦を売らないと言いやがる。『ガロン様に睨まれた奴に卸す粉はない』だとさ」

ガロンは、力で店を壊すのではなく、店を「干し上げた」のだ。
パン屋にとって、粉が手に入らないことは死を意味する。
市場の流通を握るガロンにとって、小規模なパン屋一つを経済的に孤立させることなど、
赤子の手をひねるより容易いことだった。

「ごめんなさい、カイルさん。やっぱり、私がここにいるせいで……」

 「馬鹿を言うな。あいつのやり方が気に入らないのは、あんたが来る前からの話だ」 

カイルは私を庇うが、棚に並ぶパンの数は日に日に減っていった。
常連客も、ガロンの息のかかった男たちの視線を恐れて、店を避けるようになっている。

その夜、最後の薪をくべ終えた静寂の中で、カイルは不意に口を開いた。

 「リナ。あんたは、この世界がおかしいと思ったことはないか?」

私は手を止めた。

 「……毎日、思っています。でも、それは私が別の場所から来たせいかと……」

カイルは、使い古された地図をテーブルに広げた。
そこには、この貧民街を囲うように描かれた巨大な「壁」があった。 

「俺は昔、壁の向こう側……『聖域(サンクチュアリ)』の守護騎士の端くれだった」

 驚きで息が止まる。騎士。この泥にまみれたパン屋の主が?

「あそこでは、愛も平和も、美しい容姿も、すべてが管理されている。
……だが、その美しさを維持するために、この『泥の揺りかご』にすべてのゴミと、
管理しきれない『不適合者』を投げ捨てているんだ。ガロンのような強欲も、
あんたのように『枠』からはみ出した存在もな」

カイルの瞳に、深い憎しみが宿る。 

「この世界は、誰かを『劣等種』として見下すことで、自分たちの清廉さを保っている。
……ガロンが女を管理したがるのも、聖域の連中がこの街を管理したがるのも、
根っこは同じだ。誰かを所有することでしか、自分の位置を確認できない臆病者の集まりなんだよ」

その言葉は、前世で「格付け」に明け暮れていた私の胸に、鋭い楔となって打ち込まれた。
この世界そのものが、私の傲慢さを具現化したような構造をしていたのだ。

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