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先生ver.
罠。②
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「北海道に来たのは最近なんです…せっかく新しい先生きたのに辞めてほしくないのに……」
「…勇気をだして電話をしてくれてありがとう。このことはちゃんと対処するから。安心して。」
「本当ですか!?ありがとうございます。よろしくお願いします!」
電話を終えて急いで北海道の塾の講師の資料を探した。
今まで奈々の履歴書を探してもなかったはずだ…父親に携帯の番号が書いているから抜き取られてとばかり思っていた。
だけど本当は転勤していたなんて――
「この塾長…」
塾の報告書をみてもこの塾長は女性にはセクハラぎみとのことで要注意人物になっていて、講師は男性のみにして様子をみようと記載されていた。
それなのにあえて奈々を派遣させるなんて――
とにかく今すぐ奈々のところへ行かないと――
なんだか嫌な予感しかしない
「健!?どこに行くんだ!」
「…北海道。」
北海道としか言っていないのに父親の眉毛がピクリと動いて眉間にしわがよる。
「北海道に行って何をするんだ…」
「さっき本社に電話があったんです。塾長が講師にセクハラをしていると…」
「ハッ…子供じゃないんだからセクハラされたってかわせばいい。もし嫌なら塾を辞めればいい。ただそれだけだ。」
「辞めればいいって…本気で言っているんですか?」
「そうだ…俺は本気だ。安奈さんと話し合って決めたんだ。」
「どうしてそこまで…」
「それはこっちの台詞だ。どうしてそこまでお前たちは惹かれあう!?」
どうして…言葉で説明ができたらいいのに――
あえていうならこの気持ちは『言葉』で説明できない
『カラダ』で表現してしまう
どんなに会えなくても声が聞けなくても
日常が忙しくても
眠りにつくときに目を閉じれば
『ねぇ、先生。』
呼びかけてくれる愛しき人の声が聞こえる
そんな人に出会えただけで十分幸せな人生だってことを俺は知った――
「絶対戻ってくる…戻ってくるから。」
「健!健!!」
父親が呼ぶ声を無視して健は財布と携帯に奈々の履歴書を握り締めて走り去ってしまった
「…あ、安奈さん!?健が北海道に行ってしまう!」
父親は携帯で安奈に電話をかけ今の状況を話す
「え…健さんが!??もしかして奈々のところへ?」
「塾長からのセクハラを助けに行くって…」
「そんな…どうしてッ……引き離してもどうしてッ……」
北海道に向かう間、どうしてもっと早くこうしなかったんだろうとずっと自分に責めていた。
安奈も父親も塾も立場とかそういうの全部捨てて
奈々を選んでどこか遠くへ――
『…君のお母さんはいつも君の幸せを願っていたよ。』
医師から聞いた母親の本音
そうだ…自分の幸せは奈々がいればどこでだってやっていける
奈々だってきっと俺についてきてくれる
だけど奈々には…わかっていたんだよな
本当はこの選択が俺の幸せじゃないって…
色んなものを捨ててまで一緒になったって俺たちは幸せになれないってこと――
「ここか……」
やっと塾に着いたときはもう夜で北海道ということもあって辺りは真っ暗で、塾に誰もいないとなるとどこに行けばいいのかわからなかった
奈々の携帯に電話してもつながらない、履歴書には奈々の新しい家の住所までは書いていない…
「よかった肉まんあって~」
「塾のあとに食べるコンビニの肉まんって最高だよね。」
自転車を押している中学生ぐらいの女子生徒二人が後ろを通りかかり声をかけてみた。
「あの…ここの塾の子?」
「あ…はい。そうですけど…」
不審者を見るかのように俺から一歩ずつ後ろに女子生徒たちは下がっていく。
「急に声をかけてごめん。ここの塾の早瀬奈々先生の知り合いで会いたくて…」
「早瀬先生…?」
知っている人の名前を聞いて安心したのか後ずさりするのをやめて足を止めてくれた。
「どこに住んでいるか知ってる?」
「知らないです…あ、でも今日先生たちみんなあの居酒屋にいったよね?」
「うん、そうそう。いつもの居酒屋…だから今日授業終わったらすぐ塾終わったよね?」
「そこ…そこの居酒屋教えてもらってもいい?」
女子生徒に居酒屋の名前や道順を聞いて一生懸命それをメモしていると一人の女子生徒が俺が持っているペンをじっと見つめているのに気づいた。
「そのペン…」
「え…あ、これは教師をしていた高校のペンで…」
高校教師をした高校が創立記念ということでペンを全校生徒と教師に配っていたのを俺はまだ持っていた、奈々と出会った高校だから――
「もしかして…早瀬先生の好きな人ですか?」
「え…?」
「あ…本当だ。このペン早瀬先生も持っているもんね。」
「早瀬先生、いつも塾長に嫌がらせさせられていて…生徒たちでほかの先生にいっても何もしてくれなくて。だから早瀬先生に塾を辞めないんですか?って言ったんです。」
「高校の先生のことが好きで憧れていて…一緒になることはできないけど、どんなに離れていても教師をやっていれば繋がっていられる気がするからって。」
「…勇気をだして電話をしてくれてありがとう。このことはちゃんと対処するから。安心して。」
「本当ですか!?ありがとうございます。よろしくお願いします!」
電話を終えて急いで北海道の塾の講師の資料を探した。
今まで奈々の履歴書を探してもなかったはずだ…父親に携帯の番号が書いているから抜き取られてとばかり思っていた。
だけど本当は転勤していたなんて――
「この塾長…」
塾の報告書をみてもこの塾長は女性にはセクハラぎみとのことで要注意人物になっていて、講師は男性のみにして様子をみようと記載されていた。
それなのにあえて奈々を派遣させるなんて――
とにかく今すぐ奈々のところへ行かないと――
なんだか嫌な予感しかしない
「健!?どこに行くんだ!」
「…北海道。」
北海道としか言っていないのに父親の眉毛がピクリと動いて眉間にしわがよる。
「北海道に行って何をするんだ…」
「さっき本社に電話があったんです。塾長が講師にセクハラをしていると…」
「ハッ…子供じゃないんだからセクハラされたってかわせばいい。もし嫌なら塾を辞めればいい。ただそれだけだ。」
「辞めればいいって…本気で言っているんですか?」
「そうだ…俺は本気だ。安奈さんと話し合って決めたんだ。」
「どうしてそこまで…」
「それはこっちの台詞だ。どうしてそこまでお前たちは惹かれあう!?」
どうして…言葉で説明ができたらいいのに――
あえていうならこの気持ちは『言葉』で説明できない
『カラダ』で表現してしまう
どんなに会えなくても声が聞けなくても
日常が忙しくても
眠りにつくときに目を閉じれば
『ねぇ、先生。』
呼びかけてくれる愛しき人の声が聞こえる
そんな人に出会えただけで十分幸せな人生だってことを俺は知った――
「絶対戻ってくる…戻ってくるから。」
「健!健!!」
父親が呼ぶ声を無視して健は財布と携帯に奈々の履歴書を握り締めて走り去ってしまった
「…あ、安奈さん!?健が北海道に行ってしまう!」
父親は携帯で安奈に電話をかけ今の状況を話す
「え…健さんが!??もしかして奈々のところへ?」
「塾長からのセクハラを助けに行くって…」
「そんな…どうしてッ……引き離してもどうしてッ……」
北海道に向かう間、どうしてもっと早くこうしなかったんだろうとずっと自分に責めていた。
安奈も父親も塾も立場とかそういうの全部捨てて
奈々を選んでどこか遠くへ――
『…君のお母さんはいつも君の幸せを願っていたよ。』
医師から聞いた母親の本音
そうだ…自分の幸せは奈々がいればどこでだってやっていける
奈々だってきっと俺についてきてくれる
だけど奈々には…わかっていたんだよな
本当はこの選択が俺の幸せじゃないって…
色んなものを捨ててまで一緒になったって俺たちは幸せになれないってこと――
「ここか……」
やっと塾に着いたときはもう夜で北海道ということもあって辺りは真っ暗で、塾に誰もいないとなるとどこに行けばいいのかわからなかった
奈々の携帯に電話してもつながらない、履歴書には奈々の新しい家の住所までは書いていない…
「よかった肉まんあって~」
「塾のあとに食べるコンビニの肉まんって最高だよね。」
自転車を押している中学生ぐらいの女子生徒二人が後ろを通りかかり声をかけてみた。
「あの…ここの塾の子?」
「あ…はい。そうですけど…」
不審者を見るかのように俺から一歩ずつ後ろに女子生徒たちは下がっていく。
「急に声をかけてごめん。ここの塾の早瀬奈々先生の知り合いで会いたくて…」
「早瀬先生…?」
知っている人の名前を聞いて安心したのか後ずさりするのをやめて足を止めてくれた。
「どこに住んでいるか知ってる?」
「知らないです…あ、でも今日先生たちみんなあの居酒屋にいったよね?」
「うん、そうそう。いつもの居酒屋…だから今日授業終わったらすぐ塾終わったよね?」
「そこ…そこの居酒屋教えてもらってもいい?」
女子生徒に居酒屋の名前や道順を聞いて一生懸命それをメモしていると一人の女子生徒が俺が持っているペンをじっと見つめているのに気づいた。
「そのペン…」
「え…あ、これは教師をしていた高校のペンで…」
高校教師をした高校が創立記念ということでペンを全校生徒と教師に配っていたのを俺はまだ持っていた、奈々と出会った高校だから――
「もしかして…早瀬先生の好きな人ですか?」
「え…?」
「あ…本当だ。このペン早瀬先生も持っているもんね。」
「早瀬先生、いつも塾長に嫌がらせさせられていて…生徒たちでほかの先生にいっても何もしてくれなくて。だから早瀬先生に塾を辞めないんですか?って言ったんです。」
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