10年前に戻れたら…

かのん

文字の大きさ
33 / 46

敦子サイド

しおりを挟む
「ハナさんと色々あったんだね…」



恭平からハナとの話を全部聞いた。



「でも二年前はきたんだよね…?何かこれない理由がずっとあったのかもしれない…」



「…何だっていい…ただ一度話をして終わりにしたいんだ。」



“ピリリリリッ…”



敦子の携帯が急になった。



「はい…はい、そうですけど…え!?お母さんが!?」



敦子は手が震えだし携帯を落とす。




恭平が電話を拾い、代わりに答えた。



「すいません、動揺しているみたいなのでお電話代わりました…あ、はい…はい、すぐ行きます。」



恭平は敦子の腕を握り、立ち上がらせる。



「大丈夫だよ、大丈夫だから。」



きっとほかにも色んなことを言ってくれたと思うけど、その言葉が一番嬉しくて、心強くて嬉しかった。



敦子と恭平は桜病院へと急いだ。



「他に大人の方はいらっしゃいますか?」



「お母さん、そんなに悪いんですか!?」



敦子の目には涙であふれ出ていた。



「…お母さん、もう少しで目が覚めると思うから、お母さんから聞いたほうがいいと思う。ごめんね。病室はこっちだから。お母さんしばらく入院することになると思う。」



敦子は病室に入り母親の顔を見たが、まだ眠っていた。



「あっちゃん…」



恭平は病室には入らず廊下で待っていた。














「恭ちゃん…私今のうちに入院グッズとってくる…目が覚めたらお母さんの話キチンと聞きたい…お母さんを頼んでもいい?」



「うん…いいよ。」



「ごめんね…」



「でも一人で大丈夫?」



「…一人にもなりたい。」



「わかった。じゃあ目が覚めたら連絡するから。」



「ありがとう…」



敦子は恭平に頭を下げて病室を出て行った。




“ガラガラガラッ…”



病室のドアを開け中に入ると個室の中はカーテンが半分閉まっていた。



“シャッ…”



カーテンを開け、ベッドの近くで椅子に座ろうと、椅子を片手に敦子の母親の枕元付近に立った――



“カンッ…カンッ”



恭平は手から椅子を落としてしまった。














「ハナ…さん……?」













恭ちゃんの時計は動き出したのに――



やっと動き出したのに




時計回りじゃなくて




反時計回りに動き出した








「えっと、パジャマと歯磨きセットと…ってパジャマってどこなんだろう?」



敦子は母親のクローゼットでパジャマを探していた。



“ドサドサドサッ…”



「いったい…」



上に置いてあった段ボールが落ち、たくさんのノートが床にちらばった。



「何のノートだろ?」





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

戦場から帰らぬ夫は、隣国の姫君に恋文を送っていました

Mag_Mel
恋愛
しばらく床に臥せていたエルマが久方ぶりに参加した祝宴で、隣国の姫君ルーシアは戦地にいるはずの夫ジェイミーの名を口にした。 「彼から恋文をもらっていますの」。 二年もの間、自分には便りひとつ届かなかったのに? 真実を確かめるため、エルマは姫君の茶会へと足を運ぶ。 そこで待っていたのは「身を引いて欲しい」と別れを迫る、ルーシアの取り巻きたちだった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

初恋にケリをつけたい

志熊みゅう
恋愛
「初恋にケリをつけたかっただけなんだ」  そう言って、夫・クライブは、初恋だという未亡人と不倫した。そして彼女はクライブの子を身ごもったという。私グレースとクライブの結婚は確かに政略結婚だった。そこに燃えるような恋や愛はなくとも、20年の信頼と情はあると信じていた。だがそれは一瞬で崩れ去った。 「分かりました。私たち離婚しましょう、クライブ」  初恋とケリをつけたい男女の話。 ☆小説家になろうの日間異世界(恋愛)ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/18) ☆小説家になろうの日間総合ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/18) ☆小説家になろうの週間総合ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/22)

行ってらっしゃい旦那様、たくさんの幸せをもらった私は今度はあなたの幸せを願います

木蓮
恋愛
サティアは夫ルースと家族として穏やかに愛を育んでいたが彼は事故にあい行方不明になる。半年後帰って来たルースはすべての記憶を失っていた。 サティアは新しい記憶を得て変わったルースに愛する家族がいることを知り、愛しい夫との大切な思い出を抱えて彼を送り出す。 記憶を失くしたことで生きる道が変わった夫婦の別れと旅立ちのお話。

理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら

赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。 問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。 もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?

余命わずかな私は、好きな人に愛を伝えて素っ気なくあしらわれる日々を楽しんでいる

ラム猫
恋愛
 王城の図書室で働くルーナは、見た目には全く分からない特殊な病により、余命わずかであった。悲観はせず、彼女はかねてより憧れていた冷徹な第一騎士団長アシェンに毎日愛を告白し、彼の困惑した反応を見ることを最後の人生の楽しみとする。アシェンは一貫してそっけない態度を取り続けるが、ルーナのひたむきな告白は、彼の無関心だった心に少しずつ波紋を広げていった。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも同じ作品を投稿しています ※全十七話で完結の予定でしたが、勝手ながら二話ほど追加させていただきます。公開は同時に行うので、完結予定日は変わりません。本編は十五話まで、その後は番外編になります。

死に役はごめんなので好きにさせてもらいます

橋本彩里(Ayari)
恋愛
【書籍化決定】 フェリシアは幼馴染で婚約者のデュークのことが好きで健気に尽くしてきた。 前世の記憶が蘇り、物語冒頭で死ぬ役目の主人公たちのただの盛り上げ要員であると知ったフェリシアは、死んでたまるかと物語のヒーロー枠であるデュークへの恋心を捨てることを決意する。 愛を返されない、いつか違う人とくっつく予定の婚約者なんてごめんだ。しかも自分は死に役。 フェリシアはデューク中心の生活をやめ、なんなら婚約破棄を目指して自分のために好きなことをしようと決める。 どうせ何をしていても気にしないだろうとデュークと距離を置こうとするが…… たくさんのいいね、エール、感想、誤字報告をありがとうございます! ※書籍化決定しております! 皆様に温かく見守っていただいたおかげです。ありがとうございます(*・ω・)*_ _)ペコリ 詳細は追々ご報告いたします。 アルファさんでは書籍情報解禁のち発売となった際にはサイトの規定でいずれ作品取り下げとなりますが、 今作の初投稿はアルファさんでその時にたくさん応援いただいたため、もう少し時間ありますので皆様に読んでいただけたらと第二部更新いたします。 第二部に合わせて、『これからの私たち』以降修正しております。 転生関係の謎にも触れてますので、ぜひぜひ更新の際はお付き合いいただけたら幸いです。 2025.9.9追記

愛してしまって、ごめんなさい

oro
恋愛
「貴様とは白い結婚を貫く。必要が無い限り、私の前に姿を現すな。」 初夜に言われたその言葉を、私は忠実に守っていました。 けれど私は赦されない人間です。 最期に貴方の視界に写ってしまうなんて。 ※全9話。 毎朝7時に更新致します。

妹と王子殿下は両想いのようなので、私は身を引かせてもらいます。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラナシアは、第三王子との婚約を喜んでいた。 民を重んじるというラナシアの考えに彼は同調しており、良き夫婦になれると彼女は考えていたのだ。 しかしその期待は、呆気なく裏切られることになった。 第三王子は心の中では民を見下しており、ラナシアの妹と結託して侯爵家を手に入れようとしていたのである。 婚約者の本性を知ったラナシアは、二人の計画を止めるべく行動を開始した。 そこで彼女は、公爵と平民との間にできた妾の子の公爵令息ジオルトと出会う。 その出自故に第三王子と対立している彼は、ラナシアに協力を申し出てきた。 半ば強引なその申し出をラナシアが受け入れたことで、二人は協力関係となる。 二人は王家や公爵家、侯爵家の協力を取り付けながら、着々と準備を進めた。 その結果、妹と第三王子が計画を実行するよりも前に、ラナシアとジオルトの作戦が始まったのだった。

処理中です...