天使に恋をした。

かのん

文字の大きさ
14 / 17

二人の夢④

しおりを挟む
「ここ、まっすぐ行ったところにベッドがあるよ。」







雅の部屋は意外にもワンルームの部屋だった。






№1といえば家賃が高い部屋に住んでいるイメージが強いが、雅は広い部屋があまり好きじゃないしお金を貯めたかった。






「雅君の部屋、あまり荷物がない?歩きやすくていい。」




「そうかも。帰って寝るだけだから、ほとんど生活していないような感じだよ。」






「そっか。あ、キッチン借りてもいい?」






「調理器具なべしかないんだけど…それでもよかったら。」






「大丈夫だよ。じゃあ借りるね。」



真莉亜がキッチンにたち料理を始めた。






(好きな人がキッチンに立って料理作ってくれるっていいな…)






雅はそう思いながらウトウト寝てしまった。






「…?」






額がひんやりと冷たい気がして目が覚めた。




目を開くと真莉亜が横で座って、雅の額に手を当てていた。






「真莉亜?」






「起こしちゃった?」






「ごめん、俺寝てた?」



「気持ち良さそうに寝てたよ。熱下がってきたみたい。」






「うん、なんか体が大分軽い。」






「おかゆ作ったんだけど食べる?」







「食べる!お腹空いたんだ…」




「うん…美味しい!体にすっといきわたって生き返る感じ!」






雅はガツガツと食べだした。






「おかわりあるから言ってね。」






「おかわり!」






「ふふ、いっぱいあるからゆっくり食べて。」



“ピロリロリン…”






「あ…」






真莉亜が自分の携帯を探し始めた。






「電話でていい?」






「うん、いいよ。」



「もしもし…あ、健ちゃん?」





雅はその名前を聞いて体がピクッと反応した。







「うん。うん。あ、ごめん、今お家にいないの。今お友達が熱出しちゃって看病しているの…え?うん、そう、この間会った人。大丈夫だよ。ちゃんと帰れるよ。でも何時になるかわからないから今日はごめんね。」






真莉亜は携帯を切ってかばんの中にしまう。






「…どうしたの?」




「健ちゃんからで家の近くにいるから会えないかって。」






「しょっちゅうこんな遅い時間に遊びにくるの?」







「仕事終わってからだから、夜結構遅いかも。」






「ふ~ん…」






「あ、おかわりだったね。」




真莉亜が立とうとした瞬間雅が真莉亜の手首をつかみ、ベッドに押し倒す。






「キャッ…」






「真莉亜はさ…なんで俺の部屋にきたの?」






「え…だって友達が風邪で熱だしたら看病するのが当たり前でしょ。」






「友達か…」



「雅君?」






「真莉亜が友達だと思っていても、俺だって男なんだよ…こんな時間に男の家にあがるなんて危ないんだよ。こういうことをしたっていいって思われるんだよ。」






「雅君…」






「健二だって、そんな時間に真莉亜が部屋にあげていたら、いつこういうことするかわかんないよ。」



「健ちゃんは…こんな強引なことはしないよ!」





真莉亜は覆いかぶさる雅をどけて荷物をまとめる。






「お大事に!」






真莉亜は怒りながら雅の部屋を出た。






「はぁ~」



「何で俺こんなこと言っちゃったんだろう…」






ただの嫉妬だった。






せっかり真莉亜が看病しにきてくれたのに…最悪な形で真莉亜を家から出させてしまった。



あれから一週間、体調はすぐよくなって店にも復帰はしたものの、真莉亜に電話してもメールしても返信はなかった。





「雅、元気だせよ。」





剛が話しかけてきた。






「このまま終わるのかな…なんか一言でいいから謝りたいな…」





「雅、指名~よろしく~」



雅がテーブルにいくといつもの常連客だった。





「雅~会いたかったよ!こっちきてきて!一緒にやけ酒飲もう!」






「なっちゃん、今日どうしたの?」







「私さ~お店に来るお客さんにマジで惚れてたの!なのに結婚するって今日ワイドショーで言っててさ~」



「有名人なの?」






「えっとね、この人。」






なっちゃんがスマホの写真を見せてきた。






「これ…」






「知ってる?M社の次期社長!格好いいでしょ!お店の子みんな狙ってたんだから!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷たかった夫が別人のように豹変した

京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。 ざまぁ。ゆるゆる設定

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんとの親子丼をちょっと書きたくなっただけです。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!

翠月るるな
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。 侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。 そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。 私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。 この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。 それでは次の結婚は望めない。 その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。

処理中です...