最後の恋人。

かのん

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蘇る過去。。。

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「俺、飲み物買ってくるわ。」



「うん……」



今まで流れなかった空気が流れてギクシャクしてしまっていた。



「私も顔赤い…」



体も火照って…こんなにも熱くなった身体が一気に冷たくなるなんて…



こんなことってあるのだろうか?








「美咲……?」







……聞き覚えのある声



大好きだったその声




ずっと…ずっと聞きたいって思っていた……



聞き間違いだ、きっと。



だってさっきまで智樹と一緒にいたから



きっと間違えちゃったんだ。



そう、きっと、そう――



何度も、夢に出てきては名前を呼ばれてた



だからこれも夢なのかもしれない



「美咲…だよな?」



「…ッ……」



怖くて振り向けない。



ううん、怖いのもあるけど体が固くなって動けない。



本当…なの?



「ゆ…うや?」



振り向かずに名前をつぶやいた



それが今の私の精一杯で…



名前をつぶやいたらジャリッて後ろから音が聞こえてこちらに歩いてくるのがわかった。



遊園地で周りは楽しそうにしている人たちの声で溢れていたのに



今は、後ろから近づくその足音しか



私の耳には入らなかった――







久しぶりに会った裕也は



おじさんになっているかなとか



髭伸びてるかもとか



色々想像していたけど。。。



わたしの想像を超えていたーー





「裕也……」



「やっぱり美咲じゃん。元気だった?」



顔、忘れていたはずなのに……



太陽の下では綺麗な栗色だった髪の毛



シュッとまっすぐな眉毛に細長い目



女性のように綺麗なきめ細かい白い肌



ただ1つ違うのはもうタバコの香りがしないことーー



違う、一つじゃなくて2つ……だった。



「どうして…ここに?」



「聞いてないの智樹から?」



もしかしてさっき智樹が言いかけた事?



その左手の薬指に光るもの――?



「結婚したんだよ、俺。お前の母親にも何度か会ったけど美咲には会わなかったな。」



「え……?いつ?いつお母さんに会ったの?」



「いつって……ちょくちょくこっちに帰ってくるたびに…」



お母さんも、智樹も、そんなこと一言も教えてくれなかった。。。



どうして…言いにくかったとか…?



「あまり咲子さんに心配かけんなよ。俺がいなくなってからお前がフラフラしてるって心配してたぞ。」



頭の上に乗せられた左手が重くて、痛い――



結婚したことも



地元に頻繁に帰ってきていたことも



何もかも私は知らなかったの…?




“ガシャンッ……”



後ろから物音が聞こえて振り返ると女性が手に持っていたジュースを落としている。



「百合、美咲だよ。お前たちも久しぶりだろ?」



「え…百合?」



百合は小学校からずっと一緒で、女友達では一番仲が良かった。



だけど裕也がいなくなった日



百合も一緒にいなくなった。



……百合の左手薬指には裕也と同じ指輪が光っている。



「…美咲……?」



百合は大人しい子で髪の毛も染めたことがなく、成績も優秀で生徒会もやっていた。



だけど今は、髪の毛は明るめの茶髪に露出の高い服、派手なネイル……裕也に百合だと教えてもらわなければわからないぐらい変わってた。



「一人なら一緒に…」



裕也が美咲を誘おうした瞬間百合が裕也の胸に飛びついた。



「男と……来てるんでしょ?どうせ…」



軽蔑した目ーー



セフレを作っていくたびに減った女友達たちと同じ目をしてる



自分がしてきたことだから、仕方ないーー



「待たせてるから、行くね。」



もうこの場から、早くいなくなりたい……



「美咲!」



名前を呼ばれて、体が勝手に反応して動いていた足が止まってしまう……



「明日から俺たち転勤で香港に行くんだ…だから会えてよかったよ。」



……私は会いたくなかった。



自分は結婚して、幸せそうに笑って、私とのことはなかったかのように海外へ行くんだ。



「何で、あんな男のことずっと追いかけていたんだろう…」



もっと自分を大事にして、裕也みたいに恋をしておけばよかった



前もこんなことあった



ここから抜け出したくなって……



あの時はどうしたんだっけ……?



「あ……」



そうだ、こんな風に手を差し伸べてくれて連れ出してくれる人がいたんだった



何も言わず、何も聞かず、物語の王子様のようにピンチの時は必ず助けてくれるーー













「葵君……」




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