Ti amo

かのん

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涙のワケ

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「専務…専務……坊ちゃん!」



「あぁ……何?」



「何?じゃないですよ。目の前の書類に目を通してください。手が止まってますよ。」



「うん……」



「雪乃さんのことが気になるんですか?」



「な、泣いていたら誰だって気になるだろ!」



結局そのあと雪乃は謝って持ち場に戻っていった。



俺は寝不足で1人で立ち上がれなくて



若松に手伝ってもらって立ち上がった。



いや、寝不足が原因というより



雪乃の涙にショックで起き上がれなかった



「坊ちゃん……だいたい坊ちゃん今自分がおいくつだと思っているんですか?」



「30だけど…俺はまだボケていないぞ。」



「雪乃さんも30歳なんです。世間ではその年齢だと色んな恋愛をしていると思いますが……」



「恋愛……?あいつ好きな奴がいるのか!?」



「結婚していなかっただけでもラッキーですよ。」



「……そうだよな。よく考えたら雪乃も30歳…相手はどんな奴なんだ!?若松なら知っているんだろう?」



「……この会社にいます。」



「今すぐここに呼び出せ!」



「いやしかし……」



「挨拶だ挨拶。同級生がお世話になっているって……」



「……かしこまりました。ではお呼びいたします。」



うぉぉぉ!どんな奴なんだ!?



俺よりイケメンか!?俺より身長高いのか!?



好きな奴がいるとか想像していなかった……



くそぅ……どんな奴なんだ一体……雪乃が選んだ男だからいい男なんだろうな……



だけどあの雪乃の悲しそうな涙が頭から離れないーー



「専務、お呼び…ぶっ……」



イスの上に体育すわりしている俺をみて若松は吹き出した。



俺は昔からそうだ。



体は大きくなっても悩むと体育すわりをする傾向がある。



「若松笑うな!ううん!いいぞ。」



「失礼いたします。」



声は低いけど女子には色っぽいとか言われそうな声の持ち主だ。



雪乃と再会する時ぐらい心臓がばくばくする…



お、男前だ……



俺には及ばないけど俺とは違ったタイプだけど…



俺はどっちかというと自分でいうのもなんだけど王子系で



コイツは体育会系だ



スーツ着ていても胸板や背筋がうっすらとわかるし、短髪の黒髪で肌も黒い。



黒いんだけど――



「あの…ご用件は?」



「あ、あぁ…」



「葛木部長です。」



若松がそっと耳打ちで名前を教えてくれる。



若松は親父が選んだだけいい仕事をしてくれる…たまに苛めてくるところがムカつくけど。



「葛木部長…その、ゆ……新藤さんの仕事ぶりはどうかなと…」



「新藤ですか?入社してから私はずっと彼女の上司ですがよくやってくれていると思います。女性らしく気がききますし、こちらが指導する前に動いてくれます。」



「そうですか……え~あ、葛木部長は何歳ですか?」



「…42ですが……」



一回り年が離れているおっさんが彼氏かよ!



「ん?」



「こ、これは……」



左手の薬指にシルバーの指輪…



「既婚者…?」



「はい…昨日入籍したばっかりですが…専務?顔色が…」



「大丈夫です。私がおりますので…葛木部長ありがとうございました。仕事に戻っていただいても大丈夫です。」



俺の顔をチラチラと見ながら葛木部長は部屋から出て行った。



「結婚ってまさか雪乃と…?」



「違います。」



「違うって…あの男と付き合っているんじゃないのか!?」



「……付き合ってはいますよ。」



「はぁ!?若松、お前それじゃあ雪乃は…」



「そうです。雪乃さんは二番目の女だったんです。今朝専務がこちらに来る前に結婚したことを職場で発表があったんでしょうね。だから泣いていたんですよ、彼女は…」



「二股かけていたってことか!?」



「まぁそうですね。お相手の方は社長が紹介したA商社のご長女で出世間違いナシですね。」



「雪乃より出世をとったってことか…ますます許せん。あ!でも結婚すればさすがに雪乃も諦めるだろう!な!?若松!不倫女にはなるわけないよな~」



「……そうでしょうか?」



「は?」



「ほら…あそこ。」



若松に言われてブラインドの隙間から覗いてみるとさっきの野郎…違った葛木部長と雪乃が話をしていた。



「同じ部署なら話だってするだろ。」



「そうではなくて…よく雪乃さんの表情を見てください。」



「ん?」



下を向きながらも頬を赤く染めて嬉しそうに話している雪乃がいる。



「可愛い…」



「はぁ…ダメだこれは。」



「お前だって可愛いって思うだろ!この表情で可愛いって思わない奴はいないって!」



「坊ちゃん!坊ちゃんが可愛いっていう表情は坊ちゃんに向けられたものではありません!いいですか?あの葛木部長に向けられたものなんです!」



「た、確かに…」



「結婚していてもまだ葛木部長のことが好きってことですよ。」



「結婚していても…いやいやそれは不倫になるからダメだ。ていうか付き合っている時もダメだったけど不倫はもっとダメだ!」









「……助けてあげたらどうですか?」








「失恋には新しい恋をっていうじゃないですか。」



「新しい恋…そうか、俺が雪乃の恋人になってあげればいいんだな!」



「……本当はなりたいくせに。」



「若松、お前ちょこちょこ本音吐くタイプだな。 別に俺は雪乃がどうなったって……」



「あ、雪乃さんが……」



「何!?どうした!?」



「自分の気持ちに正直になればいいのに……」



「若松しつこい。とにかく人助けのために雪乃とつきあってやる。」



「ではとりあえずーー」



「何!?何すればいい?俺はモテてきたけど恋愛経験だけはゼロなんだ。だから、若松お前だけが頼りなんだ~」



「専務……」



「はい。」



資料が山積みになっているテーブルに勢いよく手をつき、バンっていう音が部屋に響くーー



「まずは仕事してください。」



「……はい。」
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